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30過ぎたら見直す食習慣 ファイトケミカルが体を守る 東海大・川田医師が提案する30~40代で身に付けたい健康習慣(1)

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2016/12/2

野菜や果物が体によいとのは、ほとんどの人が知っているに違いないが、どのくらい食べると、どのような効果があるのか。サプリメントで代用できないのか(c)serezniy-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 30代は健康の曲がり角だ。徐々に代謝が下がり、20代と同じ生活を続けていてもなぜか太りやすくなったりする。また、今後の人生のためにも30代での生活習慣は大切である。よい習慣をつけておけば、50代、60代になってから病気になるリスクを確実に減らすことができる。とはいえ、世の中には健康情報があふれており、何を信用すればよいのかわからないという人も多いだろう。そこで、最新の研究成果を踏まえ、エビデンス(科学的根拠)に裏打ちされた確実な健康法を、東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学の川田浩志教授にうかがった。食事、運動、メンタルヘルスという3つの視点から、数回に分けて紹介していこう。

■地中海風の食事スタイルを取り入れる

 今回は、食事の健康習慣について考えていきたい。健康雑誌やネットの健康記事を調べると、○○食事法、××健康食といった食事法は山ほど出てくるが、その多くは科学的根拠がなかったり、長期的な安全性が確認されていなかったりする。はたして、何を信用すればよいのだろうか。

 「現在、病気を予防して死亡リスクを低下させる科学的エビデンスが最も多くあり、世界中でその効果が認識されているのは、地中海風の食事スタイルです」と東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学の川田浩志教授は語る。

食事は、魚・野菜・フルーツ、穀類、オリーブオイル、豆・ナッツ類などの食品を主体とする地中海風か、日本の伝統的な食事がおすすめ(c)Olena Mykhaylova -123rf

 地中海風の食事スタイルとは、イタリア、スペイン、ギリシャなどの南ヨーロッパを中心にした地中海沿岸に住んでいる人びとの伝統的な食事スタイルのことだ。その特徴は、野菜・フルーツ、穀類、オリーブオイル、豆・ナッツ類、魚などの食品を主体としていること。それに、適量のワインが加わる。

 これまで、数々の調査・研究によってその有効性が認められてきた。

 「例えば、1995~2008年に実施された12個の調査研究(延べ157万人が対象)をイタリアの研究者らがまとめて分析した結果によると、なるべく地中海風食生活を心がけるようにすると、生活習慣病を含めたさまざまな病気にかかって死亡するリスクが明らかに減ることがわかったのです。たとえば、心血管疾患による死亡リスクは9%低下し、がんの罹患率と死亡率は6%低下することがわかりました[注1]」と川田教授。

 40代以上における健康の最大のリスクは、なんといっても肥満。内臓脂肪がたまることで自覚症状がないままにメタボリックシンドロームの状態となり、糖尿病や脂質異常症などのさまざまな生活習慣病を発症させ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすという恐ろしい「病気のドミノ現象」を招くことはご存じだろう。最近では、メタボがあるとがんになりやすいともいわれている。

 だが、地中海風の食事スタイルは、高血圧、高血糖、脂質異常を起こしにくいために、メタボになりにくく死亡率が低く抑えられるというわけだ。

 「地中海風食事スタイルといっても難しいことはありません。日本の伝統的な食事スタイルは野菜や豆、魚中心で地中海風に近いものといえます。それに加えて、自分なりにアレンジするのがいいでしょう」(川田教授)

 川田教授は、食生活にぜひ加えてほしいという食品を3つ挙げてくれた。それが、「野菜とフルーツ」「ナッツ」「ヨーグルト」だ。それぞれの食品の健康効果を取り上げながら、どのようにとればよいのかを紹介していこう。

[注1]Sofi.F.ほか Adherence to Mediterranean diet and health status: meta-analysis. BMJ. 2008年337巻a1344

■野菜は食べる量が増えるほど死亡リスクが減る

 野菜やフルーツが体によいというのは、ほとんどの人が常識として持っているに違いない。だが、どのくらい食べると、どのような効果があるのか。具体的な数字を知っている人は少ないだろう。

 「野菜・フルーツの摂取量と死亡リスクとの関連性を調べた16個の報告(調査対象者合計約83万人)をもとに解析した研究から、野菜やフルーツの1日の摂取量が増えるほど死亡リスクが低下していくことがわかりました」と川田教授は語る。

 次のグラフでわかるように、野菜とフルーツを合わせて1日に5皿(野菜では77g、フルーツでは80gを1皿と換算)食べる習慣のある人は、ほとんど食べる習慣のない人にくらべて生活習慣病にかかりにくく、死亡リスクが26%も低下したというのだから驚く。

グラフは、野菜やフルーツをほとんど食べない人の死亡リスクを1としたときに、摂取量ごとの相対的な死亡リスクを示している。1皿の量は、野菜は77g、果物は80gで換算されている。5皿までは、摂取量が増えるほど死亡リスクが低くなっていくことがわかる。5皿を摂取する人の死亡リスクは0.74となり、ほとんど食べない人にくらべて26%も死亡リスクが低下している。(Wang Xほか. BMJ 2014年のデータをもとにグラフを作成)資料提供:川田浩志氏

 では、野菜やフルーツのどんな成分が、体によい影響をもたらしているのだろうか。ビタミンやミネラルならば、サプリメントで代用できるのではないか?

■サプリメントは野菜の代わりにならない

 「残念ながら、ビタミンやミネラルを補給するサプリメントでは、野菜やフルーツの摂取で得られる健康増進効果はあまり得られませんでした。そこで脚光を浴びてきたのが、野菜やフルーツに含まれているファイトケミカルです」(川田教授)

 「ファイトケミカル」とは、植物の(phyto)化学物質(chemical)のこと。強い紫外線や害虫などの“外敵”に対して、移動して逃げるすべを持たない植物が、それらに対抗して生き抜くために自らつくり出している物質である。

 たとえば、トマトの赤色成分であるリコピン、ブドウ皮の赤紫色成分であるレスベラトロールなどは、強い抗酸化作用(酸化しないようにする働き)を持って、自らを酸化ストレスから守っている。

 人間が、そうした物質を含むファイトケミカルをとると、人体でも抗酸化作用が発揮されて、さまざまな恩恵にあずかれるといわれる。

 「ファイトケミカルは数万種類もあり、免疫力増強効果や抗がん効果が認められたものもあります。ただし、その効果の多くは、実験室で高濃度で用いられたときに認められるものなので、人体でそのまま効果が得られるとは限りません。また、ファイトケミカルを含むサプリメントも登場していますが、ファイトケミカルも化学物質ですから、特定の物質ばかり大量にとり続けると、副作用が起きる可能性もあります。それよりも、野菜やフルーツをたっぷり食べて、それらに含まれているさまざまなファイトケミカルの『総合力』に期待したほうが安全ですし、効果も確実です」と川田教授はアドバイスをする。

 先ほどの実験結果でもわかるように、1日3皿でも十分に効果はある。まずは1食1皿、つまり1日3皿を目指そう。それに慣れたら、1日5皿を目標に(1日の野菜摂取のコツについては「1食に小鉢いくつ? 野菜不足にならない外食の法則」の記事もご覧ください)。新鮮な野菜やフルーツを多くとると食費がかさむかもしれないが、これは自己投資だ。50歳、60歳になったときに後悔しないように、今から食生活を見直してほしい。

 次回はナッツとヨーグルトについて解説する(次回記事はこちらをご覧ください)。

(ライター 二村高史)

■この人に聞きました

川田浩志(かわだ・ひろし)さん
 東海大学医学部内科教授(血液腫瘍内科)、医学博士。最先端の血液内科診療に日々従事しつつ、アンチエイジング・ドックの面談医も務めるなどアンチエイジング医学の普及にも力を入れている。自らがアンチエイジング実践派で、人生を楽しみ、健康的に生きることを信条としている。その生活指導には定評があり、講演依頼やTV・ラジオ・雑誌の取材も多い。受賞歴:東海大学総長賞(松前重義賞学術部門)など。著書:「医学データが教える 人生を楽しんでいる人は歳をとらない」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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