赤ちゃんワニのミイラ47匹 意外な場所で発見
古代エジプトのミイラを包む布をほどき、来館者が自在に「バーチャル調査」できる。…そんな新しい展示の準備を進めていたオランダの博物館で、驚きの発見があった。2匹のワニのミイラがくるまれていると考えられていた包みの中に実は、全部で50匹近いワニが"同居"していたのだ。
布で包まれたミイラは全長3メートル近くある。1990年代に行われたCTスキャンによる調査で、中身は1匹の大きなワニではないことが判明し、小さめの若いワニ2匹の姿が確認されていた。しかし当時の画像の精度では、そこまでしかわからなかった。
赤ちゃんワニ47匹を発見
新たな展示の準備にあたり、博物館の学芸員たちはこの包みを最新の装置でスキャンして3Dデジタル画像を作成した。すると驚いたことに、さらに47匹の赤ちゃんワニが新たに見つかったのだ。赤ちゃんワニはすべて、2匹の大きなワニと同様に、個別に布に包まれてミイラ化されていた。(参考記事:「エジプトの猫ミイラ、新X線技術で撮影に成功」)
CTスキャンを利用すれば、ミイラを傷つけることなく、「内部がどうなっているのかを非常に詳細に観察できる」と、博物館の保存技術者アリソン・ルイス氏は言う。
オランダのライデンにある国立古代博物館では、1828年からこのワニのミイラを所蔵してきた。同館の学芸員ラウラ・バイス氏によると、約2500年前に作られたこのミイラは、おそらくワニの神セベクにささげられたものだという。
古代エジプト人は死後の生を信じていた。赤ん坊と若いワニの両方をミイラにして神にささげたのは、そのためかもしれないと、バイス氏は述べている。
神への供物として複数のワニをミイラ化する事例は、これ以外にも見つかっている。ロンドンの大英博物館では2015年、生前は(生け贄にするために飼われていたのではなく)セベク神の化身としてあがめられていたと思われる1匹のワニが、その死後、ふ化したばかりの赤ちゃんワニ20匹と一緒にミイラ化されたものが展示された。米国カリフォルニア州のハースト人類学博物館でも、2例が確認されている。
ライデンの博物館で近く公開される展示は、バーチャル技術を駆使したものになる予定だ。来場者はコンピューター上で、ワニのミイラを幾重にも包んでいる布などを1枚ずつはがしていき、中にいる49匹のワニを観察することができる。また同様に、古代エジプトの神官のミイラの布を解いて、その装飾をじっくりと眺められる企画も用意されている。
(文 Delaney Chambers、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年11月22日付]
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