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男女不平等国ニッポン 働き方も生活も改革を!

日経BPヒット総研所長 麓幸子

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NIKKEI STYLE

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を斬るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、日本は女性にとっての「発展途上国」だということです。この状況から浮上するためには働き方だけでなく生活も改革が必要です。

2016年、女性たちの共感を集めたヒットCM

「この国は、女性にとって発展途上国だ」

何ともセンセーショナルなCMが、2016年夏、女性たちに大きな反響を呼んだ。これは、「ビューティーディレクター」(旧ポーラレディ)を募集するためのポーラのリクルート広告。7月21日から8月3日の2週間の放映だったが、ツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディアで数多くシェアされて拡散した。30秒と1分バージョンを合わせる併せるとYouTubeでの視聴回数は40万回近くになっている。冒頭のフレーズに続き、「限られたチャンス。立ちはだかるアンフェア」と続く。ソーシャルメディアでは、「ハッとした」「グッときた」とのコメントや「ポーラの化粧品を買いたくなった」「使ってみよう」という声もあった。

同CMには、「『CMを通じてすべての女性を鼓舞する』『ジェンダーイクオリティー(男女平等) 』の視点から、ポーラという企業を提示する」というねらいがあったという(『販促会議』2016年10月号)。女性対象のCMが、セクハラや女性差別ではないかとの批判を受けて中止する案件が続いた中で、女性たちの共感を広く呼んだヒットCMの事例といえよう。

さて、このCMの「発展途上国」というフレーズの発想のもとになったのは、世界経済フォーラムの15年版「ジェンダーギャップ指数」で、日本が調査対象145カ国中101位だというデータだという(同)。

しかし、さらに16年版では順位を10落として調査対象144カ国中111位となってしまったことをご存じだろうか。同指数は、各国内の男女間の格差を数値化しランク付けしたもので、経済、教育、政治、健康の4つの分野のデータから算出する。16年は、4月に女性活躍推進法が施行、政府もさまざまな取り組みをしており、順位を上げるかとも思われたが、まさかの111位、しかも過去最低という。「男女の所得格差」の比較方法を変えたため、経済分野が118位と12も下げたことが足を引っ張った。ちなみに1位はアイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーと上位は欧州諸国が並ぶ。日本は110位のネパールと112位のカンボジアにはさまれている。これを見ると、世界経済大国3位の国でありながら、男女平等という点ではいかに「女性にとっての発展途上国」かがわかるだろう。

「働き方改革」と同時に「生活改革」を進める

では、その「発展途上国」から脱して女性の活躍を促進する方法はあるのか? その解を考える上で、「働き方改革」そして「生活改革」というキーワードが浮かび上がってくる。

この稿でも何度か触れたが、「男性が仕事、女性が家庭」という性別役割分業に基づいた「働き方」「働かせ方」をしている限りは、女性にとって発展途上国のままだろう。

これまでの日本は、専業主婦に家事・育児・介護など私的領域をすべて任せて、男性は無制約、無制限に働いてきた。残業はいくらでもOKだった。転勤もしてきた。突発的なことにも対応できた。しかし、時間の制約や制限なく働けることを前提にしては、女性が活躍するのは難しい。いや女性だけなく共働きの若年層男性、介護問題を抱える中高年男性も活躍できないだろう(2025年に高齢化率30%超となる我が国では、今後仕事と介護の両立が大きな問題となる)。

日経BP社が16年9月16日に開催した「ダイバーシティトップセミナー」に登壇した中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)の佐藤博樹教授は、「今後、多様な人材を生かすには、時間制約のない『ワーク・ワーク社員』だけではなく、時間制約のある『ワーク・ライフ社員』を想定にした働き方に転換すべき。安易な残業依存体質を改め、限られた時間の中で生産性の高い働き方を目指していくのが真の働き方改革だ」と述べた。

それとともに佐藤教授が指摘したのが「生活改革」だ。

「企業による働き方改革を進めると同時に、そこで働く人が、仕事だけでなはく、それ以外の生活も大事にするという『生活改革』を同時に進めることが大切だ。それは子育てだけでなく、ビジネススクールへの通学、社会貢献活動、趣味など様々な生活の形がある。生活改革を進めるためには、企業が望ましい社員像を転換する必要がある。その企業にとって、仕事以外にも生活を大切にする社員が望ましいというメッセージを発進していくということだ」

家事育児に参画する男性が日本一多い会社を目指す日産自動車

日産自動車は、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」に選出、「なでしこ銘柄」にも4年連続で選定されている女性活躍の先進企業だ。2016年4月時点の女性管理職比率は業界平均を大きく上回る9.1%。開発や製造を含む全部門で女性管理職が活躍している。日産自動車副会長の志賀俊之氏は、同セミナーの講演の中で、ダイバーシティー推進のステージは4つに分かれると話した。

「最初のステージは、トップの号令で、やる気も気力もある女性が引き上げられる。これまで昇進の機会が与えられずに埋もれてきた女性が引き上げられればよいため、このステージをクリアするのは簡単だ。しかし、第2のステージでは、第1ステージで主だった女性は引き上げられ、パイプラインが細る。ここでは、実力はあるものの上昇志向の弱い女性の背中を押し、同時に若手の育成を行い、パイプラインの強化を図る。第3ステージでは、育成した女性を活躍してもらうため、ワークライフバランスを強化する。ここでは、男性の家事・育児参画を奨励することが重要である。そして最終の第4ステージとして、新しい働き方が定着し、男性も女性も生き生きと働く職場が形成される」

日産自動車は現在この第3ステージにあたるという。2015年より、新しい働き方改革を導入し、1日8時間勤務を意識して働き方を見直す「働き方改革"Happy8"」プロジェクトを展開中だ。ひとりひとりの意欲と時間を大事にして働き方を見直し、時間の質を向上させるのが目的だ。また、フレキシブルな働き方ができるように、全従業員に対し月40時間という在宅勤務も認めている。前日に申請が可能という柔軟な制度だ。この在宅勤務は女性ではなく男性社員に積極的に利用してもらいたいと志賀副会長。男性が在宅勤務をして家族と一緒に過ごすことで家事や育児にかかわる機会が増えるという狙いがあるという。

「家事育児に参画している男性が日本一多い会社を目指したい」と志賀副会長は言葉に力を込めた。

日産自動者のケースは、佐藤教授が指摘する「働き方改革」「生活改革」が同時に進んでおり、なおかつ企業にとっての望ましい社員像を新たに明示した好例であろう。

育休延長よりも保育所の整備が必要

発展途上国から抜け出すポイントは、「働き方改革」「生活改革」を同時に進め、男性も女性も働き、共に家事育児をする社会にすることではないかと筆者は思う。

その意味で、今、気になる動きがある。労働政策審議会雇用均等分科会で議論が始まった「育児休業の延長」である。「育休は原則1年で、保育所に入れない等の事情があれば半年延長可能」という現行の制度にさらに6カ月延長として最長2年にすることを検討している。待機児童数が減少しない中、育休期間延長により子育て世帯を支援するというもの。確かに、働き続けたくても保育所に入所できず退職していたケースを救う可能性もある。しかし、育休2年は、「男性は仕事、女性は家庭(そして仕事も)」という性別役割を固定することにならないだろうか。待機児童解消は自治体の役割のはず。それを企業に押し付けていないか。育休延長のかわりに期間の一部を男性に割り当てて男性の育休取得を促す仕組みを、との意見もあったがその実現はなさそうだという。

分科会委員の武石恵美子法政大学教授は、「保育所に入れないやむを得ない場合に延長という法改正になったとしても、『やむを得ない場合』を厳密に考慮する必要がある。保育所の整備が進まないことへの代替措置であり、保育所が整備されれば育休延長が必要ないというのが本筋のはず。女性活躍が進んできているのにそれに逆行するような動きだ。男性への割り当てができなかったことは残念だが、男性の育休取得が促進されるような施策を検討してほしい」と指摘する。待機児童の解消には保育所の整備で当たるべきであり、さらに復帰後には短時間勤務制度など手厚い両立支援制度がなくても、普通に働き続けられるような職場が用意されることが必要だ。

女性活躍企業では「働き方改革」「生活改革」が進んでいる。女性社員を育成し管理職に登用する、そしてその一方で男性社員の家事参画を進める。発展途上国を脱するためのベクトルはこちらだろう。

冒頭にCMを紹介したポーラも女性管理職比率26.5%、女性役員比率12.5%という女性活躍企業である。さらに20年までにどちらの数値も35%に引き上げることを目標にしている。そのポーラでは16年4月から育児休業期間を最長3年から2年に短縮した。早めに復帰してキャリアの断絶を防ぎたいという声が多かったためという。さらに早期復帰した人に最大月5万円の職場復帰サポ―ト手当制度をスタートさせた。手当は復帰が早いほど高くなる。「早く復帰して貢献してほしい」という母親社員に対する期待を込めた経営のメッセージだろう。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BP社執行役員。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。2006年日経ウーマン編集長、2012年同発行人。2016年より現職。2014年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師。内閣府調査研究企画委員、林野庁有識者委員、経団連21世紀政策研究所研究委員などを歴任。2児の母。編著書に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(いずれも日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
日経BPヒット総合研究所

日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

女性活躍の教科書

著者 : 麓幸子、日経BPヒット総合研究所
出版 : 日経BP社
価格 : 1,728円 (税込み)

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