東大一直線「女子」は増えるのか?東大が女子学生対象に家賃補助を導入

学園祭に沸く東京大学。11月25日から主に1~2年生が通う駒場キャンパス(東京・目黒)で「駒場祭」が始まったが、いま学内外で話題になっているのが来年4月に導入される家賃補助制度だ。対象は主に地方出身の女子学生だ。約20%にとどまる女子比率を高めるのが狙いだが、「東大一直線」女子は増えるのか。

家賃補助は「男子」差別

「男子に対する『差別』という意見は少なくないですね。まあ個人的には理系の女子はすごく少ないので増えて欲しいですが」。25日、駒場祭に来た理科一類2年生の男子学生に聞くと、こう答えた。他の男子学生からは「国立大学として適正な措置なのか」と懸念する声も上がった。

関西の東大合格トップ校、灘高校(神戸市)の和田孫博校長も「本校にも苦学生はいる。女子に限定するのはどうかと思う、東大はダイバーシティー(多様性)を求めているんでしょうが」とちょっと残念な様子だ。

家賃補助の対象は、自宅から駒場キャンパスまでの通学時間が90分以上の女子学生。駒場周辺に、保護者も宿泊でき、安全性や耐震性が高いマンションなどを約100室用意。家賃を月額3万円、最長で2年間支給する。保護者の所得制限もつけない。東大の学部には現在、約2600人の女子学生がいる。このうち約4割が自宅以外から通っているという。

まずトイレを増設してほしい

「駒場祭」が25日スタートした東大駒場キャンパス(東京・目黒)

それでは地方出身の女子東大生はどのように受け止めているのか。

トヨタ自動車の城下町、愛知県岡崎市にある名門校、県立岡崎高校出身で文科二類1年生の野中光さんは、「地方出身の私たちには3万円は大きな額ですが、女子のみというのは、ちょっとやりすぎな感じもします」と話す。むしろ、「男子に比べると、親は自分の近くにおいておきたいと考えますし、一人暮らしも少し不安のようです」と、地方女子の東大進学のハードルとなる別の要因を指摘した。大学当局に対しては「家賃補助よりもトイレの増設・改修とか、施設の改善をもっと進めてほしいですね」と求めた。

ミス東大候補5人は首都圏の進学校出身

開催中の駒場祭の目玉はミス東大コンテスト。インターネット投票と27日の会場投票でグランプリを決める。実はこのミス候補5人、堀菜保子さん(教育学部4年生)、篠原梨菜さん(文科三類2年生)、皆本萌さん(教養学部3年生)、南雲穂波さん(工学部4年生)、小田恵さん(文科一類1年生)はいずれも首都圏の有名進学校の出身だ。しかし1人だけ地方出身者がいた。徳島県出身の堀さんだ。

堀さんに家賃補助制度について聞くと、「いい措置だと思いますが、女子だけを優遇する点に関しては違和感を感じます」という。やはり男女で差をつけることには否定的だが、首都圏と地方の教育環境の格差は痛感してきたという。

堀さんは「高1まで四国にいたので、周りの環境を見ていて、地方から東大へのハードルの高さは身をもって感じます。高2で千葉市の進学校(渋谷教育学園幕張高校)へ転校して、塾にも通い、『こんなに優れた教育を受けられるのなら東大に入れる人も多いわけだ』と納得してしまうほど、違いがありました」と指摘する。

皆本さんも「(地方は)受験情報が少なくなりがち、という観点と、『下宿してまで東大に行く?』という気持ちが少しでも周囲にあるとそれはバリアになると思います」という。進学校も予備校も少ない地方圏から東大に進学するのは至難の業だ。

京大などの医学部志望の女子学生を確保するのが東大の狙いか?(写真は京都大学)

現実的に東大は、ライバルの京都大学や他の国立大学の医学部志望の女子学生を確保するのが狙いとの声もある。16年に京大に62人、東大に7人の合格者を出した大阪府立北野高校(大阪市)。向畦地昭雄校長は「まだ女子生徒の反応は分かりません。もともとうちは京大志望者が多かったんですが、最近は東大も徐々に増えている。確かに昔は、女子生徒の親は地元志向が強かったが、今はあんまり関係ないのでは」と話す。

20年までに女子比率3割に

東大は20年までに女子学生比率を3割まで引き上げる目標を掲げていた。15年まで東大理事を務めた江川雅子・一橋大学大学院教授は、「女子が2割以下という現状は偏りが大きく学習環境としても問題が大きい。交換留学の相手校の海外の大学から『そんなおかしな大学へ娘を留学させたくない』と心配する親がいるという話を聞いた。この施策により女子比率が高まり多様性が実現すれば、男子学生にもバランスのとれた学習環境というメリットが及ぶと思う」と話す。確かにハーバード大学など米国の有力大学の男女比はおおむね半々といわれている。

今回の女子学生に対する家賃補助策について東大側は「安全な女子寮の必要性が問われていたが、東京での生活に不安を持つ女子学生に対する支援策として有効だと考えている」という。

少子化のなか、医学部志向も強まっており、東大の学力低下を危惧する声も上がっている。グローバル化を進める東大。大学院にはアジアからの留学生が増えているが、学部にはまだ少ない。世界大学ランキングでは伸び悩んでいる。将来的にミス東大には地方出身の女性候補が増え、外国人も登場するようなダイバーシティーなコンテストになるのだろうか。来春の入試では1つの答えが見えるかもしれない。

(代慶達也)

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