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大嶺未来さん ラフマニノフのピアノ全曲弾く

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NIKKEI STYLE

日本でも人気の高い作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(ロシア→米国、1873~1943年)。沖縄県出身のピアニスト、大嶺未来さんは2013年から連続公演「ラフマニノフ全曲演奏シリーズ」を始め、12月2日の第6回でこの作曲家のピアノ独奏曲をすべて弾き終える。自身も世界一のピアニストだったラフマニノフの難曲をどう演奏し、壮大なロマンや叙情性、音の幻想風景を聴衆に伝えるか。大嶺さんに聞いた。

東京都内の自宅で大嶺さんがラフマニノフの「練習曲集《音の絵》」(作品39)を弾き始めた。超絶技巧の難曲「第6番イ短調」では、鍵盤上を長い指先が所狭しと高速で駆け巡る。

「巨人の手」が書いた難曲

「大きい手の方が確かに有利な面はあります」と彼女は遠慮がちに言う。ラフマニノフは巨人の手を持っていた。彼のスケールの大きな作品を弾くための資質として「まずは体力と技術」を挙げる。容易に指が届かない音符もあり、距離の離れたキーによる和音を時差でずらして鳴らす苦肉の策を取るピアニストさえいる。こうした体力・物理的な限界もあることが、ラフマニノフの作品を全曲演奏するピアニストが意外に少ない理由なのかもしれない。

「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」や「パガニーニの主題による狂詩曲」などのロマンチックな作品で知られるラフマニノフは、一般には後期ロマン派の作曲家と見なされている。前衛・実験音楽が台頭する20世紀に入ってもショパンやチャイコフスキーの伝統をくむロマン派音楽を書き続けた保守的な作曲家、という見方が多い。愁いを帯びた甘美なメロディーを持つ音楽はフィギュアスケートの定番曲となっている。しかし大嶺さんは「ラフマニノフが後期ロマン派だとはあまり思わない。むしろ近現代の作曲家だと考えている」と話す。

奇抜で怪物的な現代の音楽

彼女がこの日弾いた「音の絵」の「第5番」や「第6番」を聴くと、確かにショパンやチャイコフスキーにはない、不協和音や半音階を多用した現代風の奇抜さ、怪物的な迫力を感じる。19世紀ロマン派の作曲家よりも20世紀のストラヴィンスキーやバルトークに通じる型破りの前衛作品と言うべきかもしれない。「彼の初期の作品はすごくロマンチック」と指摘しつつも、その後は「情景的な曲や、デモーニッシュ(悪魔的)で皮肉な音楽も入ってくる」と説明する。特にこうした後期の作品は「ロマン派の概念で弾くと、(曲が)柔らかくなり、私の想像する音楽とは違ってしまう」と言う。

ロマンや叙情だけではないラフマニノフ作品の全体像を捉えようという試みが、2013年から始めた「ラフマニノフ全曲演奏シリーズ」(全6回)。ラフマニノフの自作すべてと他作のピアノ編曲も含め30作品以上を弾く連続公演だ。ヤマハ銀座コンサートサロン(東京・中央)で12月2日に開く第6回「アメリカにて」では、米ロサンゼルス郡ビバリーヒルズで生涯を閉じたこの作曲家の後期作品を取り上げ、シリーズを完結させる。

10月には同作曲家のピアノ独奏曲を集めたデビューCD「ラフマニノフ ピアノ・ソナタ第2番/練習曲集『音の絵』作品39」(コジマ録音/ALM RECORDS)もリリースした。高度な演奏技術に裏付けられた繊細かつ壮大な音絵巻だ。精密な超絶技巧と果てしない叙情の世界が新たな作曲家像を提示し、クラシック専門誌「レコード芸術」の特選盤にも選ばれた。「デビューCDでは、最も思い入れのあるラフマニノフの作品を録音したいと思っていた。中でも長年弾いてきた『ソナタ第2番』と、ベルリンでロシア人の先生と一緒に勉強した『音の絵』を録音できたのがうれしかった」と話す。

ラフマニノフの作品の多くは憂愁の暗い情熱をたたえる短調で書かれている。太陽の光がさんさんと降り注ぐ沖縄に生まれ育った大嶺さんが、厳寒の北国ロシアの作曲家の音楽を好きになったのはなぜか。「母が北海道出身で、小さい頃から里帰りで札幌によく行った。その時に見た雪景色に感動した。沖縄とは正反対の世界だが、冬への憧れが募った」。そして中学生の時に、米国で初めてラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」のコンサートを聴いた。「素晴らしい作曲家だと思い、いろんなCDを買ってもらって聴くようになった。切ない音楽なのに壮大な世界が広がっている。深い悲しみが心にしみた」。幼少時に見た北海道の雪景色とロシアの音楽が重なった。

灰色の世界から生まれる甘美な旋律

そもそもピアノを始めたきっかけは、幼少時に水泳を習っていた頃、医師から高音を聞き取りにくいとの診断を受け、ピアノで聴覚を鍛える訓練をしたことだった。「ピアノを弾けば、沖縄から世界中どこにでも飛び出せるとも思った」。東京芸術大学付属音楽高校から東京芸大に進学し、在学中に渡欧。ポーランドのワルシャワ・ショパン音楽院を首席で卒業後、ベルリン芸術大学のディプロマコースを最優秀成績で卒業した。帰国して日本で演奏活動を始めたのは2010年からだ。

ラフマニノフを演奏する上で重要な資質のもう一つは「ロシアや東欧の文化、風土を肌身で知っていることだ」と指摘する。「ロシア人の先生からは、ラフマニノフを弾くならばドストエフスキーの文学を絶対に読まなければならないと教えられた」と言う。「欧州に留学して実感したのは、ラフマニノフの生きた時代と違うとはいえ、いまだにロシアやポーランドが灰色の世界だということ。グレーの空に、色合いのない建物。人々も無表情で、寒さが厳しい。そうした自然や社会の環境が音楽に色濃く反映している」

厳寒と曇天の白い大地から甘美な旋律が立ち現れてくる奇跡。遠い春への憧れが果てしないロマンとして表れる音楽。「ラフマニノフの弾き方を教わりたいと言って訪ねてくる人もいる。ラフマニノフを弾くピアニストとして知られつつあると実感できてうれしい」。連続公演を終える今、CD録音でも全曲演奏を目指す。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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