六本木で注目『経営とデザインの幸せな関係』青山ブックセンター六本木店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している書店を離れて六本木を訪れた。六本木交差点から六本木ヒルズへと向かう途中の路面に立地する青山ブックセンター六本木店だ。ここでも秋の強力本が強くランキング上位を占めているが、その中で1冊、経営とデザインを扱った本が割って入っていて、六本木らしさを体現していた。

中川政七商店の社長による経営書

その本は中川淳『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP社)。ものづくりとブランディング、デザインをどのようにつなげて成功に導くか、その方法論を論じた1冊だ。著者の中川氏は中川政七商店の13代目。「工芸のSPA(製造小売り)」というビジネスモデルを打ち出し業績を拡大している老舗企業のトップだ。ecute(エキュート)といった駅ナカや表参道ヒルズのようなファッションビルで、「中川政七商店」「遊 中川」といった名前のしゃれた和雑貨店に目を留めたことのある人も多いだろう。そのビジネスの論理が整然と書かれている。

本書冒頭で著者は「工芸の世界でもこの30年、行政支援の下、多くのデザイナーと企業が協働し、ものづくりに取り組んできた」が、その多くは結果を出せぬまま消えていったと指摘する。その原因を経営者に「クリエイティブリテラシー」がなく、デザイナーに「経営リテラシー」がないからだと著者はみる。その両者をつなぐには共通言語が必要で、デザイナーと協働した自らの経営体験を通じてそこをつくり上げてきたという。その共通言語を使って経営フェーズから始まってブランドづくり、商品づくり、コミュニケーションの設計までを語りつくした教科書が本書だ。

体験に裏打ちされた実例が説得力

教科書と呼んでいるとおり、記述はいくぶん素っ気ない。だが、自らの成功体験に加え、他のものづくり企業の再生コンサルティングも手がけ成功させているだけに、力強い実例が書き込まれ、戦略の理解を助けてくれる。ものづくり企業がどう生き残っていくのか、そのために何をしなければならないのか、示唆に富む中身だ。

「六本木ヒルズの入居企業をはじめ、IT(情報技術)系や企画系、デザイン系の会社が周辺に多いので、当店らしい売れ筋」と店長の山崎加奈さんは語る。

ホリエモン本もランクイン

それでは、同店の先週のベスト5を見ていこう。

(1)「言葉にできる」は武器になる。梅田悟司著(日本経済新聞出版社)
(2)経営とデザインの幸せな関係 中川淳著(日経BP社)
(3)なんでお店が儲からないのかを僕が解決する堀江貴文著(ぴあ)
(4)LIFE SHIFTリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)
(5)USJを劇的に変えた、たった1つの考え方森岡毅著(KADOKAWA)
(5)住友銀行秘史国重敦史著(講談社)
(5)バブル 日本迷走の原点永野健二著(新潮社)

(青山ブックセンター六本木店、2016年11月14日~11月20日)

1位は9月のリブロ汐留シオサイト店の売れ筋として紹介した1冊。その後もたいがいの書店で上位にランクインし続けているこの秋の強力本の一つだ。『経営とデザインの幸せな関係』は2位にランクイン。11月初めの発売で、「初速がよくてそのまま持続している」というのが山崎さんの実感だ。3位に10月刊行のホリエモン本。「今年は次々に新刊が出て、たいがいよく売れている」そうだ。六本木ヒルズが近いことに加え、この本は飲食ビジネスがテーマになっており、一大飲食街でもある六本木の読者の関心を呼んでいるとみられる。

『LIFE SHIFT』『住友銀行秘史』の秋の強力本2冊が4位、5位に並び、立地の差を超えたベストセラーぶりを誇る。同率5位のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のマーケティング本は4月の発売だが、「ネットの記事がきっかけになって10月下旬から人気が再燃している」という。元日本経済新聞社記者によるバブル経済の検証本も同率5位に入った。

(水柿武志)

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