柴田阿弥 SKE48卒業後、アナウンサーへ異色の転身
「鮮やかに進路を決めた」。元・SKE48の柴田阿弥には、そんな言葉がしっくりくる。2016年9月、皆藤愛子や長野美郷ら人気フリーアナウンサーを抱える芸能事務所、セント・フォースへの所属を発表。アイドルからフリーアナウンサーという異色の転身を遂げたのだ。
2010年9月、4期生としてSKE48に加入した柴田は、「4期としても個人としても、推された時期がない(笑)」と冗談っぽく口にするように不遇の時代が続いた。SKE48のシングルメンバーに選ばれたのは、13年11月リリースの『賛成カワイイ!』が初。実に3年以上もかかっている。
そんな彼女が、いかにしてフリーアナウンサーへとたどり着いたのか。柴田は綿密な計画を立て、努力を重ねてきたという。
「加入してしばらくは、主な仕事が公演と握手会とブログの更新しかなかったので、平等に与えられたチャンスを人よりもやるしかなかったんです。若かったので、ギラギラしていましたね(笑)」
広く注目されるきっかけは、13年6月に行われたAKB48総選挙。SKE48でもシングルメンバーに選ばれたことのない彼女が、前年の圏外から突如17位にランクインしたのだ。これは、「神対応」と評判を呼んだ握手会などを通じて徐々にファンを獲得した結果。翌14年の総選挙では15位となり、AKB48のシングル選抜に入った。このシンデレラストーリーの真っ只中ともいえる時期に、柴田は卒業を考え始めたという。
「卒業は14年冬くらいに考えました。もちろんやるからには『センターになりたい』と思っていましたが、違う道もあるのかなと思い始めて。そうして考えた結果、ここで上を目指すよりも人生のなかで通算して他のメンバーに負けないようにしようと思いを変えて、卒業をしようと。
おしゃべりの仕事をしたいと思うようになったのは、AKB48のシングル選抜に入ってからなんです。ラジオ番組のレギュラーなどをさせていただく機会ができて、『話す仕事が好きなんだ』と気づけました」
卒業に向けて計画を立てる
ここから柴田は、卒業に向けての準備を始めた。
「最初はぼんやり卒業と思っていたんですけど、真剣に考えた時、準備が必要だと気づいたんです。
1つは、『もう1度AKB48総選挙で選抜メンバーに入ること』。1回だけだとまぐれっぽいですが、2回入ると本物かなと。『SKE48のおしゃべりの仕事をかっさらうこと』も目標に立てましたね(笑)。SKE48にいるうちにできる限り場数を踏み、失敗もしておきたいと思ったんです」
その言葉通り柴田は、15年以降、様々なトークの仕事を経験する。『乃木坂46 SHOW!』(NHK BSプレミアム)では乃木坂46コンサートの潜入レポーター、15年5月からニコニコ生放送でスタートしたSKE48の冠番組ではMCを担当した。
そして15年のAKB48総選挙。柴田は15位となり、再びAKB48のシングル選抜に入った。
「『達成した!』と思いましたね(笑)。SKE48を卒業した後は『東京に出る』と決めていたのですが、名古屋の大学に通っていたので卒業しないといけなくて。そこで、AKB48の選抜のお仕事をさせていただいたあとは、単位を取るために学校へ通えるよう、スケジュールを調整していただきました」
大学卒業の見込みが立ち、柴田は2016年6月に「8月いっぱいでSKE48を卒業する」と発表。だが、この時点で卒業後の事務所は決まっていなかった。セント・フォース所属が決定したのは、卒業間近の16年8月に入ってからだ。
「卒業の1年くらい前から、他社さんとも徐々にお話をさせていただき、お誘いもいただいたんですが、悩んでいたんです。卒業を考え始めたときは話す仕事をしたいと漠然と思っていたのですが、どうすればいいか具体的なアイデアがあったわけではなかったので。そんな時、お世話になった方に『私も伝える側になりたいんです』と相談したところ、『セント・フォースさんはアナウンサーが在籍している事務所だから話を聞きに行ったらどう?』とアドバイスをいただき、私からお願いして8月に入った頃にお時間をいただきました。履歴書も書きましたね(笑)」
10月、MBSラジオ『ザ・ヒットスタジオ』とAbemaTV『柴田阿弥の金曜The NIGHT』という2つのレギュラー番組がスタート。順調な滑り出しだが、本人は「ゼロからの気持ちで勉強しています」と気を引き締める。
「SKE48でMCや場を回す役割をやらせていただきましたが、芸能界では通用しないことは分かっていました。自信がないわけではないんですけど、盲目的に自分を信じているわけでもないというか。今の自分のレベルを分かっているつもりです。滑舌やイントネーションはもちろん、知らなかった技術もあります。一日も早くスキルを身につけたいなと勉強しています。
東京オリンピックもありますし、4年後には売れっ子になっているといいんですけどね(笑)。ただ、アナウンサーにはセンターポジションがあるわけではないですし、売れているって分かりにくいですよね。タレントパワーランキングで上位に食い込むような人になれたらいいなと思います」
(日経エンタテインメント! 羽田健治)
[日経エンタテインメント! 2016年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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