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定説崩れる!? 実は高成績だった日本株アクティブ投信

2016/11/26

 投資信託の運用成績を長期でみると、コスト高の積極運用型(アクティブ型)は必ず指数(インデックス)連動型を下回る――。投信市場の定説だが、こと日本株投信に限ると少し様子が違っている。アクティブ型、インデックス型の上手な使い分けも考えたい。

 「いつも通りに買い注文を入れていた。おかげで通常の3倍買えた」。大和住銀投信投資顧問の苦瓜達郎シニア・ファンドマネージャーはそう話す。

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した9日。日経平均株価は一時、1000円を超えて急落。しかし苦瓜氏は「日本株に大きな影響はない」と判断して買い向かった。

 苦瓜氏が運用するJ―Stockアクティブ・オープンは、過去10年の年率リターンが日本株投信の中で唯一、10%を超える(表A)。「世の中が気づいていない企業の本質的な価値を発見するのが仕事」と、割安な中小型株を発掘してきた。ちなみに東証株価指数(TOPIX)連動型投信の同リターンは平均でマイナス0.6%だ。

■高勝率が43本

 アクティブ型投信の信託報酬は平均するとインデックス型の2.5倍程度で、そのコストが運用の重荷になる。一人の運用担当者が相場に勝ち続けるのも難しく、「アクティブ型のリターンは運用期間が長くなるほど、インデックス型に割り負ける」といわれる。

 では、J―Stockアクティブのようなファンドは偶然の産物なのか。運用会社によるインデックス型投信の安売り競争が激化するなか、実績のあるアクティブ型も埋没しがちだ。

 そこで運用実績が10年超の日本株投信を対象に、アクティブ型とインデックス型の運用成績を比べ、「インデックス型優位」の定説を検証してみた。

 グラフBは、アクティブ型の中で年間リターンがTOPIX連動型投信の平均を上回ったファンドの比率だ。今年は9月までの実績で240本中、138本がTOPIX型の平均リターンを上回った。過去11年でアクティブ型の勝率が5割を超えた年は6回と、そこそこ健闘していた。

 ただし、これは1年間ごとの成績で、長期的に相場全体に勝ち続けているファンドがあるかはわからない。そこで240本のアクティブ型について、それぞれが過去11年に何回TOPIX型の平均リターンに勝ったかを調べた(B)。

 結果はTOPIX型を上回った年が8回以上という、高勝率のファンドが43本(全体の18%)あった。半面、勝ち星が4回(45本)や3回以下(22本)という、高い信託報酬を払う価値がなさそうなファンドも多かった。アクティブ型はまさに玉石混交だ。

 それでもアクティブ型全体で10年リターン(年率)はプラスを維持していたのに対し、TOPIX型はマイナス(表C)。「長期的にアクティブ型はインデックス型に負ける」という定説は、単純には日本株投信に当てはまらない。

 世界の主要市場を対象にアクティブ型と主要指数のリターンを比較しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、アクティブ型投信が継続的に指数を上回る成績を上げる市場は「日本以外に見当たらない」という。

 なぜ日本市場だけなのか。定かではないが、いくつかの仮説はある。

 一つは市場の効率性の問題だ。株価を動かす情報が瞬時に広がる効率的市場では、銘柄発掘などでファンドマネジャーの手腕は発揮しにくい。一方、非効率的な市場では、「皆が知らないいい会社」が市場に埋もれている可能性が高まる。

 同じアクティブ型でも、知名度の高い大型株を買う投信より中小型株ファンドが常にリターンが高いのは、その傍証かもしれない。

 もう一つの仮説は指数の問題。東証1部上場の全社を対象とするTOPIXには資本生産性の低い銘柄が多く、しかも新陳代謝が乏しいために投資リターンも低くなる、という見方だ。世界の主要なベンチマーク(運用目標とする指数)の中で、全上場企業を組み入れた指数はまれだ。

 もっとも、単純にアクティブ型とインデックス型のどちらが優れているかを論じるのは不毛だ。独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏は「投資する資産の特性を考えて選ぶのが望ましい」という。

■目利き力を発揮

 例えば日本の中小型株や海外の低格付け債(ハイイールド債)に投資するなら、ファンドマネジャーの目利きが生きるアクティブ型が効率はよさそうだ。

 日本の中小型株ファンドの10年リターン(年率)は平均2.4%で、過去10年保有した場合、購入時に販売手数料を払っても、手数料なしのインデックス型を買うより有利だった。ハイイールド債投信も、アクティブ型の方が投資先企業のデフォルト(債務不履行)率は低いといわれる。

 一方、海外の株式や高格付け債券に投資するなら、インデックス型の方がファンド選びの手間がかからず、信託報酬などのコスト面でも有利だ。新興国債券投信も、「インデックス型の方が銘柄を分散できている」(吉井氏)という。

 投信を買う際に肝心なのは、自分が納得できるファンドを選ぶこと。勧められるままに高コストのアクティブ型を買うのも、ただ安いからとインデックス型を買うのも得策ではない。

(QUICK資産運用研究所長 北沢千秋)

[日本経済新聞朝刊2016年11月23日付]

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