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深川麻衣 乃木坂46、卒業後「演技の道」選んだワケ

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NIKKEI STYLE

2011年8月、20歳で乃木坂46の1期生として活動をスタートした深川麻衣。3枚目のシングルで選抜入りを果たして以降、その慈悲深い性格からジワジワと人気を上昇させ、フロントメンバーに選ばれるなど、乃木坂46の"顔"の1人として活躍した。そんな彼女が、グループから卒業したのは2016年6月のこと。その際、明確な進路を公言していなかったが、9月に入り、田中麗奈や井浦新、高良健吾といった演技派の女優・俳優を抱える芸能事務所、テンカラットへの所属を発表した。

歌やダンスだけでなく、バラエティやナレーションなど幅広く経験することができた乃木坂46での活動。そのなかで「演技の仕事をずっとやっていきたい」と思うようになったという。そこに至る過程を本人に聞いた。

「一般的にアイドルを始める年齢が中高生だとすると、20歳からスタートした私は遅いほうだったと思うんです。しかもグループで最年長だったので(12年11月以降)、頭のどこかに将来への焦りや不安はありました。

自分のなかで将来への展望が明確になったのが、24歳を目前に控えたバースデーライブ(15年2月22日)。年齢で区切るのはおかしいかもしれないけど、20歳と30歳のちょうど真ん中の25歳というタイミングで『卒業はここしかない!』と思ったんです。乃木坂46の居心地の良さに甘えずに新しいチャレンジをしたいという気持ちもありました。

演技の道を選んだのは、女優は年齢を重ねることでも良さを出せたり、普段の経験の苦楽が生かせる仕事だと思ったからです。

乃木坂46は、演技の経験をさせていただく機会にも恵まれていました。『16人のプリンシパル』は公演ごとに様々な役に立候補できるミュージカルで、選ばれなかった時のツラさもありましたが、演技初心者の私にとっていい勉強になったと思います。他にも乃木坂46メンバーが総出演したドラマ『初森べマーズ』があり、西野七瀬ちゃん(乃木坂46)がヒロインの『49』や足立梨花さんが主演の『福岡恋愛白書10』といった作品にも呼んでもらいました」

理想の女優像に近づきたい

「ただ、卒業後の進路を"女優"と公言しませんでした。女優の道に進めるあてはまったくなかったですし、どうすれば良いかも分からなくて。乃木坂46という大きなグループから1人で外に出た時の不安、卒業後の目標を女優に定めるアイドルの方も多いので、私は埋もれてしまうかもしれないという不安。それに『女優になる』と公言して、結局なれなかったら、応援していただいたファンの方を失望させてしまうかもしれないと思ったんです」

今年1月7日のブログで卒業を発表。最後のシングル『ハルジオンが咲く頃』ではセンターを務めた。だが、6月16日に卒業ライブを行った時点でも所属事務所は決まっていなかったという。

「たくさんの方々のご協力もあり、テンカラットの社長と会う機会をいただきました。事務所の方針などいろんな話をお聞きして、『年を重ねるごとに味が出るような女優』という自分の理想に近づけるんじゃないかと思ったんです。所属されている田中麗奈さんや香里奈さんの出演作も見ていて、透明感があるんだけど個性のある女優さんが所属されているという印象でした。私も先輩方に近づけるようにコツコツ頑張っていきたいと思ってます。

事務所に入ってからはワークショップにも通わせていただいて、イチから演技の勉強をしているんです。短い台本のセリフを変えながら毎日演じていくなかで、どうすればリアルな感情が湧いてくるのか試行錯誤しています。

ドラマ出演も決まりました。放送中の『プリンセスメゾン』(NHK BSプレミアム)に沼越えつこ役で出演させていただいています。えつこは私の出身地である静岡に住んでいる設定なんですけど、監督も静岡出身の方ですぐに打ち解けて。主演の森川葵さんも話しかけてくれて、緊張もだいぶほぐれて楽しみながら演じることができました。

乃木坂46の時はメンバーと一緒にいる環境で安心感がありましたが、これからは1人で向き合う現場ばかりになるんでしょうね。きっと緊張の連続になると思いますが、人と関わることは大好きなので楽しみです。

作品を見てくださった方が『パッと見で華があるわけじゃないけど、この子の演技は引きつけられる』と思ってもらえるような役者になれたらいいなと思います」

最後に意地悪な質問をブツけてみた。「『元・乃木坂46』というイメージが、今後の仕事において足を引っ張ることもあるのではないですか」。深川は聖母のような微笑みで、言葉を返してくれた。

「卒業したばかりで演技経験の少ない私が女優と呼ばれるのは、どこかムズムズしてしまいますね。今は『乃木坂46の深川麻衣』として知ってくださっている方がほとんどだと思いますが、いつかは『この子、アイドルグループにいたんだ』と、そんな風に思ってもらいたいです。乃木坂46で私のことを好きになってくださった方たちに恩返しをしたいですし、今の私を知らない人にも好きになってもらうことが目標になってくると思います。

生半可な気持ちで女優の道を選んだわけじゃないことが伝わるように、地に足を着け、これまで以上にいただいたお仕事と真摯に向き合い、危機感を持ってお仕事に取り組んでいきたいです」

(ライター 大貫真之介)

[日経エンタテインメント! 2016年12月号の記事を再構成]

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