長く履けて足に馴染む 失敗しない定番ワークブーツ
特集 この冬に買いたい最新ブーツ選び(2)
朝晩の冷え込みが厳しくなってきた今日この頃。本格アウターの用意も必要だが、もうひとつ冬のファッションに欠かせないのがブーツではないだろうか。ブーツを履くと足元にボリュームが出るため、アウターを着用した際に見た目のバランスがよくなるのだ。もちろん寒さ対策としても効果的。そこで今回は、タイプ別に注目すべきブーツを紹介する。第2回は定番のワークブーツにフォーカスした。
長年履けるタフさと色あせないデザインが魅力
ブーツの代表格といえば、やはりワークブーツだろう。
ワークブーツとは、その名の通り労働者が作業用に履くブーツのこと。ソールが分厚く、アッパーがレザー製でくるぶし丈、編み上げでシューレースホールにハトメが付いているものが一般的だ。悪路をものともしないタフな作りと重厚な見た目は、われわれがブーツに持つイメージそのもの。
現在はファッションとして取り入れられる場合が多く、武骨なデザインのため足元のアクセントに最適。幅広いコーディネートにフィットし、履くだけで冬のコーディネートが引き締まる。
大手シューズショップのABCマートでは、「ブーツ全体の売り上げは好調に推移しています。なかでもワークブーツは定番商品を中心に売れている」(エービーシー・マート 営業部 石川貴洋氏)という。
毎年新作も発売されているが、なぜ定番モデルのほうが人気なのだろうか?
「定番といわれるモデルは、各ブランドの持つDNAをまとっている商品が多いからではないでしょうか」(石川氏)
ワークブーツは丈夫なため長く履くことができ、革の経年変化まで楽しめる。長く履くことで自分の足に馴染んでいくため、オンリーワンのブーツを手に入れる(育てる)ことができるのも魅力。このように自分の相棒となるようなブーツには、品質の高さと色あせないデザイン性が求められる。定番と呼ばれるモデルはブランドの顔であり、その総力を結集して作られているため支持されているのだろう。
流行に左右されない定番モデルは、ブーツ好きはもちろんだがブーツ初心者にこそおすすめだ。ブーツは欲しいけど、どれを買えばいいのかわからない・迷っているという人こそ、はじめの一足は定番ワークブーツを履いてほしい。
そこで今回は、ワークブーツ界きっての王道ブランドの定番モデルを紹介しよう。長い歴史を持つブランドならではの質実剛健な作りは必見。細部を見ていくことで、ワークブーツの魅力がわかるはずだ。
ダナー/世界で初めてゴアテックスをシューズに採用
1932年創業のダナーは、米国のオレゴン州に本拠を置き、今もなおポートランドの工場でハンドメードにこだわる名ブランド。この1980年に登場した「ダナーライト」は、防水透湿素材ゴアテックスを初めて採用したブーツとして知られている。
オイルを染み込ませたフルグレインレザーとコーデュラナイロンのコンビアッパー、ソックス状のゴアテックスをブーツに組み込むことで完全防水を実現。もともとアウトドア用として作られたため、従来のワークブーツよりも軽いのも人気に拍車をかけた。
アウトソールには、高機能なビブラム社のクレッターリフトソールを使用。グリップ性に優れるだけでなく、土踏まず部分にラグを設けて悪路でもグリップ力が落ちないように設計されている。また、独自のステッチダウン製法により、ブーツにたまった水をはき出して、蒸れを軽減している点も見逃せない。
「昔からブランドを知っているコアユーザーの方々はもちろん、最近は20代のファッション好きな顧客層にも受け入れられ、アメカジだけではなく幅広いスタイルの足元に取り入れられているように感じます」(石川氏)
ダナーライトの売り上げが好調なことから、ABCマートではダナーの定番商品のコレクションを重点的に展開しているそうだ。
レッド・ウィング/90年代アメカジブームから変わらぬ人気
1990年代のアメカジブームを経験した30~40代の男性にとって、ワークブーツと聞いて真っ先に思い浮かべるのが、このレッド・ウィングの「#875」ではないだろうか。オレンジがかった薄茶色のレザーアッパーは、エイジングにより犬種のアイリッシュセッターの毛色を思わせる色味に変化していくことから「アイリッシュセッター」とも呼ばれる。
アッパーの風合いもさることながら、このブーツの魅力はソールにこそある。
6インチ丈モデルが発売される2年前、1952年に登場した8インチ丈の「#877」がアメリカのブーツ市場を席巻。当初はハンティングブーツとして開発されたこのブーツは、厚くクッション性に富む平らな白いソール(今日のトラクショントレッドソール)を男性用の靴に初めて使った点が画期的だった。
このソールはハンティングの際、靴底に泥がへばりつくのを防ぎ、獲物に気付かれないよう静かに歩くためのものだったが、建築現場の高所でかかとを引っ掛ける心配がなく、快適で足が疲れないという理由からたちまちワーカーの間で評判になったという。
「#875は1954年の登場以来、途切れることなく販売されている、ブランドを代表する超ロングセラー商品です。年間のスタイル別売り上げでも常に上位にランクインしています」(レッド・ウィング・ジャパン マーケティング部 利国雄基氏)
アメカジブームを経て、現在はファッションアイテムとして有名なブーツだが、「頑丈で耐水性にもたけているため、ファッションとしてのみならず、建築関係の方やシェフなど実際のワークの現場で履く方も多数います」(利国氏)とのこと。
ホワイツブーツ/150年以上の歴史を持つキング・オブ・ブーツ
1860年代の米南北戦争以前から、現在まで続くブーツブランド。もともとロガー(木こり)のためにブーツを製作し始めたのがルーツで、職人のハンドメードによるブーツ作りが当時から変わらず続いている。
ブランドの代表モデル「スモークジャンパー」は、山火事が起きた際にヘリコプターから煙の中へ飛び込む消防隊員が履いていたことから名付けられた名品。
最大の特徴は、アッパーとインソールの縫製を手縫いで行うハンドソーンウェルト製法。アイリッシュ・リネンと呼ばれる極太の糸を使ったハンドソーンにより、機械ではマネできない柔軟性を実現するとともに、水の浸透や型くずれも防ぐ。
また、土踏まずからかかとにかけて施された"アーチイーズ"にも注目したい。土踏まず部分を盛り上げ、ブーツを履いたときに指先がフリーになる形状に仕立てている。足がリラックスした状態をキープできるため、長時間歩いても疲れにくいのだ。
この快適な履き心地を持つタフなワークブーツは"キング・オブ・ブーツ"と称され、世界中のラインマンやファイヤーマンからも愛されている。カスタムオーダーも可能で、多彩な素材・デザインから好みのパーツや仕様を選び、自分だけの一足を作ることができる。愛着を持って長く履ける、まさに一生モノのワークブーツを手に入れることが可能だ。
定番だからこそ幅広いスタイル&シーンに大活躍
以上、王道ブランドの定番ワークブーツを3つ紹介した。いずれもタフなうえに歩きやすく、ワークブーツのお手本といえるものばかり。いや、むしろこれらがワークブーツの原型ではないだろうか。そして今回紹介したブランドは、実はすべて米国のブランド。そのため品質の高さに加えて、メード・イン・USAならではの武骨なルックスも魅力的だったはず。
長い歴史を持ち、今も継続して販売されている人気の定番モデル。流行に左右されないので、ずっと履けてさまざまなコーディネートに合う。休日のタウンユースはもちろん、キャンプなどのアウトドアやDIYの作業時にも大活躍。ブーツ好きもブーツ初心者も、定番ワークブーツを押さえておけば間違いない。
(ライター 津田昌宏)
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