北斎ゆかりの東京・墨田に美術館オープン
江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の作品を収蔵する美術館「すみだ北斎美術館」が22日、北斎の生誕の地である東京都墨田区にオープンした。90年にわたる生涯の大半を現在の墨田区で過ごした地元の芸術家・北斎の画業を国内外にアピールして観光客を呼び込む考えだ。
墨田区が約34億円かけて新設した。北斎の作品は、海外でも評価が高かったこともあり、代表作「冨嶽三十六景」をはじめ、国内外に散らばっていた。まとまった数の代表作を一度に鑑賞できるのは同館が初めて。墨田区が15年以上にわたって収集してきた作品を中心に約1500点あまりを収蔵する。順次、展示作品を入れ替えていく方針だ。
美術館の常設展示室には、海外からの観光客の来場も見込み、作品解説用のタッチパネル12台を設けた。作品の図柄に触れると、作品ごとに解説が表示される。日本語以外に英語、中国語、韓国語に対応した。墨田区の山本亨区長は、「郷土の芸術家・北斎の魅力を知ってもらうとともに、美術館を文化や観光の拠点にしたい」と話している。
■100年ぶり公開の絵巻も
開館を記念した展覧会「北斎の帰還―幻の絵巻と名品コレクション―」(22日~2017年1月15日)では、約120点を展示する。中でも目玉は、幻の絵巻と言われた「隅田川両岸景色図巻」だ。1902年のパリで開かれたオークションに出品されたという記録以降、行方が分からなくなっていたが、15年に墨田区が取得。今回、約100年ぶりに一般公開される。
絵巻は、両国橋から隅田川をさかのぼって、吉原遊郭につながる水路「山谷堀」まで、当時の吉原遊びの定番ルートを西洋の陰影技法を用いて上品な筆致で描いている。絵巻には、両国橋のほか浅草寺など隅田川沿いのおなじみの名所も描かれている。北斎の見た江戸時代の隅田川両岸の景色を味わった後は、実際に現在の隅田川沿いを歩いて景色の違いを楽しむこともできそうだ。
(映像報道部 鎌田倫子)
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