和風なのに漂うエスプリ ル・クルーゼが限定商品続々
赤やオレンジなどのカラフルなデザインや機能性の高さなどで人気の仏ル・クルーゼのキッチン用品。日本法人であるル・クルーゼ ジャポンが、日本の紅葉をあしらった「MOMIJI(モミジ)」シリーズを今年の9月下旬~11月末までの期間限定で販売している。これは2016年秋冬コレクション「JAPONESQUE(ジャポネスク)」の第2弾にあたる。第1弾は8月下旬に発売した「チャワン」や「サカナプレート」「ヤクミプレート」など日本の伝統的な食器シリーズ。こちらは2017年2月14日まで販売する。
また2016年春にも、桜をイメージした春夏コレクション「フラワーコレクション」をやはり期間限定で発売。同社では、日本の伝統的な柄や色彩、デザインのコレクションの発表が続いている。
純然たる和のデザインとは異なる
ル・クルーゼ ジャポンは毎年2回、大きなコレクションを発表してきているが、2016年が同社の創立25周年に当たるため、これを記念して日本をイメージしたコレクションを展開した。いずれもデザインは日本法人のデザイナーが担当し、本国フランスで製造している。
MOMIJIシリーズはココット、ドンブリ、チョップスティックレスト(箸置き)、ケトル、アイスクーラースリーブ(ワイン保冷用スリーブ)の5商品。しかし、どれを見ても純然たる和の柄、色使い、デザインではないように思える。鍋など調理器具のデザインを担当する岡本大輔商品開発マネージャーは、その点について次のように語る。
「日本の伝統的なモチーフを100%そのまま取り込んだだけでは、ル・クルーゼらしさがなくなってしまう。そこにフランスのエスプリ(精神)、遊び心、さらにル・クルーゼならではの肌触りを加えて初めて当社のコレクションになる」
例えば紅葉の絵柄は古風なデザインにはせず、現代的な切り絵風に仕上げた。色使いも赤だけでなく、白や金色をあしらった。これによって、いかにもル・クルーゼらしい味付けが感じられ、しかもこれまで日本にありそうでなかった、新しい"和モダン"なデザインに仕上がっている。
オリジナル商品作りが活発な日本
日本法人に限らず、世界各国のル・クルーゼでは、各国の食文化に基づいたオリジナル商品を作っている。それらは基本的には国内市場でのみ販売する商品群だ。「世界中のル・クルーゼでオリジナル商品作りが最も活発なのが日本」と語るのは食器のデザインを担当する小林ケイコ商品開発マネージャーだ。
「日本のコレクションのファンは海外、特に食文化が近い香港、台湾、中国、韓国などのアジアに大勢いる。今回に限らず、いつもワクワクしながらお待ちいただいている」(小林氏)
今春発売したフラワーコレクションは、アジアを中心とした訪日外国人客が土産として大量に買い求めるケースが多く、何と全売り上げの約半分を占めた。
各国が作るオリジナルコレクションは、各国のマーケティング担当者が集まるプレゼンテーション会議で発売前に発表する。
プレゼンテーション会議はフランスなどで開かれるが、毎回、日本のオリジナルコレクションが人気の的だ。今回のジャポネスクコレクションは第1弾、第2弾とも、多くの出席者がこれまでにない反応を見せたという。
「ふた付きの『ドンブリ』は、『何で食器にふたがあるの?』『シリアルを食べるのにちょうどいい形とサイズをしている』『ふたも器として使えて機能的だ』といった声が上がり、みんな興奮していた。特に欧米の担当者はほぼ全員が『欲しい』と言っていた」(小林氏)
サカナプレートやヤクミプレートには大根おろしや、薬味を分けて入れるため、皿の中に仕切りが付いている。海外の担当者は、「なんでそんなものが必要なのか」と言いながら、やはり興味津々だったという。世界的に日本食ブームが巻き起こっている昨今、日本的な食器にも関心が集まっているようだ。
「日本で定番商品として企画・開発したチョップスティックレストは、欧米でも箸が浸透してきたため、国内販売だけでなくすでにアメリカなどからもオーダーがあって販売している」(岡本氏)
MOMIJIシリーズは国内販売のほか、ドイツ、香港、台湾、アメリカでも販売を予定している。JAPONESQUEコレクションは第3弾まで続き、「WASABI(ワサビ)」シリーズが10月26日に、期間限定で発売された。これも海外での販売が期待されている。
(ライター 原武雄)
[日経デザイン2016年9月号の記事を再構成]
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