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陶芸の里 笠間・益子でココロを癒やす

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仕事のアイデアがなかなか出てこない。ちょっとしたミスが続いた……。それはココロが疲れているからかもしれない。週末、あるいは1日だけ休みを取ってふらっと旅に出てはいかがだろうか。そんなときに思い出してほしいキーワードがある。「かさましこ」。 茨城県笠間市と県境を挟んで隣接する栃木県益子町への旅をお薦めしたい。観光客でごった返すことは少なく、交通の便も悪くない。心洗われる手軽な小旅行が楽しめるはずだ。

町中に窯が並ぶ

東京・秋葉原から笠間を経由して益子へ通じる高速バス「関東やきものライナー」が、平日5便、土日祝日6便運行されている。都心から2時間ほど、のんびりバスに揺られれば、全国でも有数の陶芸の里、笠間・益子に着く。

バスの名前にもあるように、笠間・益子は町中にやきものの窯がならび、作品を展示販売するギャラリーが軒を連ねる。

笠間焼の歴史は江戸中期に始まる。飢饉(ききん)に苦しむ笠間の地に、信楽から陶器作りが持ち込まれた。水がめなど生活に欠かせない陶器を江戸に供給することで、笠間は発展していく。

益子も笠間に習い、やきもの作りがスタート、定着する。しかし、水道の発達とともに水がめの需要が激減、生活に根ざした陶器作りから陶芸へと移り変わっていく。

やきもの通りでお気に入りのひと皿を探す

バスで笠間の「やきもの通り」に降り立つ。国道から笠間芸術の森公園へと通じる道筋に、ずらりとギャラリーが並ぶ。お気に入りのやきものを探しながら、一軒一軒のんびりと回る。「回廊ギャラリー門」は、その中でも人気のお店だ。店内に中庭があり、両側に作品が並ぶ。今の時期なら、紅葉とやきものの鮮やかなコントラストが楽しめる。

いちばん奥は企画展示室になっていて、取材時は地元作家・桑原典子さんの作品展だった。笠間焼は「自由焼」といわれ、材質や焼き方にこだわらないのも特徴。陶器がメーンの笠間焼にあって、この日目にとまったのは磁器だった。磁器ながら表面をつや消しに仕上げ、柔らかな風合いを出す。これもまた笠間焼きなのだ。

11月19日(土)から12月1日(金)までは、橋口信弘さんの作陶展が開催されている。

カジュアルなムードが漂うのは「きらら館」。店頭には芝生の庭が広がり、店の奥ではお茶も飲める。オーナーでもある岡部登志子さんの「Toshiko Brand」の白いやきものは、見た目だけでなく、使い勝手もいい。猫を模したシリーズは、かわいさと実用性を兼ね備える。筆者が気に入ったのは広田芳樹さんのやきもの。ちょっとアバンギャルドな作風が特徴だ。

アトリエで作陶見学も

上級者なら、アトリエを訪問するのもいいだろう。取材時には、国内外で人気の高い陶芸家・額賀章夫さんのアトリエを訪問させてもらった。額賀さんはプリーツワーク(土の表面を削って模様付けする作風)で知られる。まっすぐに細く細かく、鎬(しのぎ)を削る作業は息をのむ。

作家のアトリエは、個人宅に併設していることが多く、一般には非公開だが、中には、アトリエをカフェにして公開しているところもある。

「花カフェ」はそんな人気スポットのひとつ。自慢の庭をめでながら、笠間の味を堪能できる。この日のランチのメーンは栗ご飯。笠間は、全国でも有数の栗の産地。地物の栗のやさしい甘さを味わえる。

「花カフェ」がある南吉原地区は、陶芸家のアトリエが多く、また陶芸に限らず染色・手織りなどクラフトワークの工房も点在する。特産の栗を使った「栗染め」もある。個人宅のアトリエ訪問はハードルが高いが、春の「笠間の陶炎祭(ひまつり)」、秋の「笠間浪漫」など、陶芸祭で工芸品を目にすることもできる。そうした機会もぜひ利用したい。

注目のこだわり豆腐

そして、笠間で今、最も注目したいのが豆腐だ。「佐白山のとうふ屋」は、笠間芸術の森公園そばの佐白山のふもとにある、こだわりの豆腐屋だ。

2代目店主の河原井信之さんは、天然にがりを使い、茨城県の在来種・たのくろ豆など厳選の国産大豆で豆腐を作る。もともとは建築関係の仕事をしていて、きれいなお店も、実は河原井さんが手がけた。

お父さんが会社を辞めて始めた豆腐屋が人気を呼び、河原井さんも店に入り、豆腐作りに携わるようになる。当初こそネットを活用した情報発信に力を入れたが、次第に材料を厳選する「ほんものの豆腐作り」に傾倒していく。

様々な大豆で試行錯誤を繰り返し、ベストの品種・たのくろ豆を発掘。地元産にこだわった「カサマメ☆プロジェクト」を立ち上げ、大豆専門家、農家、市役所の協力のもと、市内の畑で土を作り、種をまき、栽培から収穫まで一貫した豆作りを確立。笠間、佐白山ならではの豆腐を作り上げた。人気の青ごぜんは、甘く、大豆の味が濃い豆腐だ。その甘さを味わうため、塩だけで食べるといい。豆乳ドーナツやソフトクリームも人気で、今や観光客がひっきりなしに訪れる、笠間随一の人気スポットだ。

益子焼の伝統に触れる

笠間から益子までは、県境の峠を越えて40分ほど。夜は、益子館里山リゾートホテルで温泉と豪華な食事を堪能する。

翌朝、まず浜田庄司記念益子参考館を訪れる。浜田庄司は近現代の日本を代表する陶芸家の一人。富本憲吉らとともに初めて人間国宝に認定された。陶芸家として3人目となる文化勲章も受けている。瀬戸焼を模した水がめなど、くらしに特化したやきものだった益子焼に新しい息吹を吹き込み、全国に知られる陶芸に高めたのが浜田庄司なのだ。

1894年に東京で生まれ、大正半ばにバーナード・リーチとともに渡英、帰国後は、益子に移住した。柳宗悦や河井寛次郎らと始めた民芸運動は、名もなき職人の手による日常の生活道具を「民芸(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがある、美は生活の中にあると唱えた。

それまでの陶芸が、茶わんに代表される華美な装飾を施した観賞用だったのに対し、日常使いの中から生まれる「用の美」に焦点が当たるようになる。

参考館には、自身の作風に影響を与えた膨大なコレクションが収蔵されている。磁器にとって代わられたイギリスの陶器・スリップウエア、沖縄の骨つぼ・厨子甕(ずしがめ)などを展示する。

目を引いたのは、盟友バーナード・リーチの作品。沖縄で焼かれたものには明確に壺屋焼の影響が見て取れ、九谷で焼いたものは、見るからに九谷焼だ。各地の様々な作風を取り入れては消化し、自身の作風を築き上げていったことが分かる。

浜田庄司のアトリエも現存する。愛用の手回しのろくろも健在だ。現在は庄司の孫・浜田友緒さんが浜田窯を継ぎ、益子参考館館長職を兼ねながら作陶を続ける。

この日は特別に、友緒さんのアトリエも案内していただいた。職人たちがろくろに向かう張り詰めた雰囲気は、前日の額賀章夫さんのアトリエ同様、えも言われぬ緊張感がある。

感動するのは、登り窯。

笠間や益子など北関東も、東日本大震災で大きな被害を被った。レンガを積み上げ、粘土で固めた登り窯は、各地で多くが崩落してしまった。ガス窯などに切り替える工房が多い中、浜田窯では、いちはやく登り窯を再建した。なだらかな傾斜。釉薬(ゆうやく)が溶けた焼成室の中は、独特の美しさがある。「美を生み出す」道具は、そのものにも独特の美がある。

城内坂通りは小さな美術館

益子最大の観光スポットは、城内坂通り。なだらかな坂道の両側に、やきもののギャラリーや飲食店などが並ぶ。

アトリエのカフェは、益子にもある。「陶知庵」は、明治創業・井上窯のギャラリー。増改築を経て、現在は土日祝日限定でカフェを営業する。サトイモのコロッケやごぼうご飯など、田舎料理で散策の観光客をもてなす。

やきもののお店は、益子焼の歴史を反映するかのように、生活に密着した手ごろなものを扱う店と、店内調度にもこだわった、小さな美術館のようなギャラリーとに大別される。

人気店の「陶庫」は店内に多くの階段があり、その構造を生かして、様々なタイプの違う作品を集めて展示する。作風にバリエーションがあり、クラフトなどやきもの以外のものも多い。何も買わなくても、店内を巡るだけで楽しくなる。

城内坂の上の方にある「G+00(ジープラスツーノウツ)」は、広さこそ「陶庫」ほどではないが、バリエーション豊かでセンスのいいやきものを取りそろえる。益子参考館で見かけたスリップウエアも、ここで手に入れることができる。

器の表面に、水と粘土を混ぜたスリップ(化粧土)で模様を描くのが特徴。化粧土が生乾きの状態で、流したり引っかいたりすることで、繊細な模様を描き出す。独特の細かい模様が目を引く。

陶芸家が集まる笠間、益子には、陶芸以外のクリエーターも集まるようだ。笠間のクラフトワーク同様、益子の城内坂通り入り口には藍染め工房がある。

城内坂の散策で歩き疲れたら、最後はやはりアトリエのカフェへ。「カフェーネ」は、陶芸家の店主が、料理好きが高じてオープンしたカフェだ。

作家のアトリエだけに、店内調度もアート感にあふれる。上品な甘さのスイーツとお茶で疲れを癒やしたら、秋葉原行きの「関東やきものライナー」最終便は、16時に益子駅発だ。

バスが便利な「かさましこ」だが、クルマなら、さらに多くのスポットをより効率的に回れるはず。群馬から栃木・茨城各県を横断する北関東自動車道を使えば、限られた日程で、宇都宮から水戸、大洗・那珂湊あたりまで、効率よく動き回ることができる。

「かさましこ」を軸に、アグレッシブに両県を堪能するのもいいし、やきものを突き詰めに「小砂焼」のある北の栃木県那珂川町まで行く手もある。

日帰りも可能なエリアだけに、まずはふらっと、無目的に。それでもきっと満足できるのが「かさましこ」だ。

(渡辺智哉)

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