社会にインパクト! めざして「渋幕」から米国に挑戦平野拓也・日本マイクロソフト社長が語る(下)

日本マイクロソフトの平野拓也社長(46)が語る「リーダーの母校」。日本有数の進学校である渋谷教育学園幕張高校(渋幕、千葉市)に入った平野少年は、自由でオープンな雰囲気のおかげで、高校生活を満喫し、勉強でも成果を上げた。だが、日本の大学に進学する考えはなかった。それはやはり、自分の価値観を大切にした結果だった。

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2年生になったら、進学クラスに編入させられた。

いろいろなことをやって楽しかった1年生の時とは打って変わり、2年生になったら、一気に勉強モードに入りました。

ただ、そのころはすでに、大学は米国の大学に行こうと決めていたので、中間テストや期末テストの勉強は一生懸命しましたが、日本の大学を受験するための勉強は一切しませんでした。

米国の大学に行こうと思ったのは、家庭環境のせいもあったと思いますが、自分が海外に出てどれだけできるのか試してみたいという気持ちが強かったからです。

「世の中にインパクトを与えるようなことをしたい」。そんなことを考えていた高校時代だったという。

将来はどんな仕事に就こうかといったキャリアの青写真はまったくありませんでしたが、その代わり、自分にとって大切なことは何かといった価値観についてや、自分のミッションは何だろうかということに関しては、日々、真剣に考えていました。

高校生ながらに、世界をよくしなくてはならない、社会を変えなくてはいけない、そのために自分は何をすべきなのかと自問自答したり、一回きりの人生だから世の中にインパクトを与えるようなことをしたいと思ったり、とにかく高校時代はいろいろと考えていたことを覚えています。

将来は、何らかの形でリーダー的な役割を果たしたいという思いもありました。学校では、192センチという身長を除いては目立たない生徒でしたが、通っていた教会の活動ではリーダー的な仕事を買って出たり、奉仕活動に力を入れたりするなど、常にリーダーシップを持とうという意識はどこかにあったと思います。

高校卒業後は米国の大学を経て、米国で就職。ソフトウェア会社の社長を経て2005年、マイクロソフトに入社した。

マイクロソフトに入ったのも、この会社なら世の中を変えることができる、社会にインパクトを与えることができると考えたからです。

前職からの転職を考えた際に、いろいろな会社の役員と面接しましたが、マイクロソフトだけが、トップを含めた役員の誰もが、「わが社に入れば、社会をこう変えることができる、こんなインパクトを与えることができる」と本気で語っていました。他の会社と比べてオファー内容は最も低いものでしたが、自分の価値観に合うと思い、入社を決めました。会社というのは、価値観が合えば、一生懸命働こうという気になるし、結果も出ると、私は確信しています。

今年2月、渋幕で講演する機会がありました。その時も、自分の価値観を認識する大切さについて話をしました。自分にとって何が大切かを認識している人は、たとえ環境が変わっても、ぶれずに目標に向かって進むことができる。若い後輩たちに、そう語りかけました。

昨年7月、社長に就任。よりよい会社を目指し、社員の働き方の改革を進める。

日本の企業は労働時間が非常に長く生産性が非常に低い。こうした状況は会社のためにも社員のためにも変えていかなければなりません。そのために、テレワーク(在宅勤務)の拡大やコアタイムの廃止など、様々な試みを導入し、推進しています。

よりよい会社にするためには、ダイバーシティー(多様性)も必要です。問題なのは、社員が自分の「コンフォートゾーン」(居心地のよい空間)にいつまでも閉じこもっていようとすること。閉じこもったままでは、人間も組織も化石化してしまいます。コンフォートゾーンを自分で意図的に破壊するか、あるいは会社が破壊しなければ、個人も組織も成長しません。

そのコンフォートゾーンを壊すカギが、ダイバーシティーなのです。年齢も属性も近い人間ばかりが集まっていたら、自然とコンフォートゾーンができてしまいます。そこに、女性や違う年代、外国人など多様な人材を入れれば、コンフォートゾーンは破壊できます。そして、そうした多様な人材が活躍できるようにするには、働き方の改革が大切になってくるのです。

今はタイバーシティーという言葉が盛んに使われていますが、日本は、その言葉をわざわざ使わなくて済むような会社や社会に一日でも早く変わっていく必要があるのではないかと思っています。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

前回掲載「自由で開放的、ダンパに費用までくれた『渋幕』」では、自由でオープンな雰囲気のなかですごした学園生活を振り返ってもらいました。

「リーダーの母校」は原則、月曜日に掲載します。

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