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今年の東京大学合格者数ランキングで5位に付けるなど、難関大学への進学実績を急速に伸ばしている千葉市の渋谷教育学園幕張高校(渋幕)。昨年7月、日本マイクロソフトの社長に就任した平野拓也氏(46)は、同校の卒業生だ。だが、千葉市内の公立中学を卒業した平野少年が渋幕に進んだのは、一流大学を目指したからではなかった。その意外な理由とは。

(下)社会にインパクト! めざして「渋幕」から米国に挑戦 >>

平野少年が入学した時の渋幕は、開校して数年しかたっていない若い学校だった。

私の母は米国人なので、日本の学校制度や教育事情にそんなに詳しくはありませんでした。友達が塾に通っていても、「塾なんか行く必要ないでしょ。自分を信じなさい」みたいなことを言う、典型的な米国人。ですから高校は自分で探しました。

渋幕を選んだ決め手は、校風です。創設者でもある田村哲夫校長の意向も強く働いていたと思いますが、オープンな雰囲気があり、開校当初から積極的に帰国子女や交換留学生を受け入れるなど、常に外を向いていました。この学校は面白そうだなと。あとは、ちゃんと入れるよう、受験勉強し、無事合格となったわけです。

入ってみると、思い描いた通りの自由でオープンな雰囲気でした。

例えば、当時、ダンスの映画が流行っていたのですが、学校でダンスパーティーをやったら面白いのではないかと思い付き、先生に提案。すると、学校側は、開催を認めてくれただけでなく、パーティーを開くための費用まで出してくれました。生徒会の提案ならまだしも、一人の生徒の提案など、普通の学校だったら、おそらく聞いてもらえなかったでしょう。そんな自由な環境が自分にはぴったりでした。

また、ほとんどの生徒は、一生懸命勉強して、いい大学に入る目的で渋幕に入ってくるので、互いに価値観が近く、話も合う。そのあたりも、楽しさを感じた理由かもしれません。

「渋幕の自由でオープンな雰囲気で、周りに溶け込め切れない違和感のようなものがスーッと消えた」と話す

「渋幕の自由でオープンな雰囲気で、周りに溶け込め切れない違和感のようなものがスーッと消えた」と話す

留学生との交流も貴重な経験になった。

私自身は日本生まれの日本育ちで、大学に入るまで、海外に住んだ経験はありません。海外経験と言えば、せいぜい、米国の母の実家を何度か訪ねたぐらいです。そういった意味で、渋幕の交換留学生との交流は、私にとって海外を知る貴重な経験となりました。

経緯は覚えていませんが、わが家に渋幕の留学生をホームステイさせていました。

そのうちの一人は、トーマス・ローダーデールという名前の私と同い年の米国人。ちょっと変な性格の持ち主でしたが、ピアノは半端なくうまかった。彼からはすごくいい刺激をもらいました。

彼はその後、米国に帰国し、一時は政治家を目指していましたが、結局、ピアノの才能を生かしてバンドを結成。あっという間にメジャーになりました。それが今や米国でも指折りのジャズアンサンブル「ピンク・マルティーニ」です。由紀さおりさんとコラボで曲を出すなど日本との縁も続いており、私も今でも交流があります。

自分らしさが出せたのが、一番の思い出だった。

日本の社会は、ソーシャルプレッシャー(社会的圧力)が高い社会です。常に、こうあるべき、こう振る舞うべきだという暗黙のルールがあり、周りに合わせなくてはなりません。例えば、別の高校に入った私の姉は、髪の色が少し明るいというだけで、学校から、それが自然の色であることを証明しろと言われ、つらい思いをしました。

そんな社会に、ちょっと何か違うんじゃないかという違和感のようなものを、小さいころからいつも抱いていました。

また、私は外見が日本人っぽくないので、小さいころから、どうしても見た目で判断されることがあり、学校でも周りに溶け込め切れない、なじめないと感じることもよくありました。

渋幕に入ったら、そうした違和感のようなものが、スーッと消えました。やはり、学校の雰囲気が自由でオープンだったり、留学生や帰国子女がいたりで、今で言うダイバーシティー(多様性)に富んだ環境だったからだと思います。

渋幕での高校生活は、自分の価値観に合ったからこそ楽しめましたし、勉強にも集中することができたと思います。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

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「リーダーの母校」は原則、月曜日に掲載します。

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