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女性リーダー、どう育てる 男女平等ランク日本111位 政治・経済、順位の低さ際立つ

2016/11/19

赤松良子元文相(写真左)と内永ゆか子J-Win理事長

世界経済フォーラムによる2016年男女平等ランキング(ジェンダー・ギャップ指数)で、日本は144カ国中111位と、昨年より順位を10下げた。特に政治と経済の順位の低さが際立つ。国の基盤ともいえる両分野で女性が活躍するために必要な施策とは。女性の活躍をけん引してきたリーダー2人に聞いた。

■元文部大臣 赤松良子さん

あかまつ・りょうこ 東京大学卒業後、1953年労働省(現厚生労働省)入省、82年同省婦人少年局長。86年駐ウルグアイ大使。93~94年文部大臣。2008年日本ユニセフ協会会長(現職)。労働省時代に男女雇用機会均等法の制定に携わる。87歳

――男女平等度で日本は政治と経済の両分野で遅れが際立っています。打つ手はないのでしょうか。

「111位という結果に、がっくりきている。特に政治分野は国会議員の女性比率の低さが長年の懸案だ。日本は今年で女性が参政権を行使して70年。これだけ歳月を重ねてもいまだに衆議院議員の9割を男性が占めているとは嘆かわしい。男女の議員比率を一定数義務付けるクオータ制の導入しか、是正の手立てはない。北欧などクオータ制を導入した国は女性議員比率が高くなっている」

「私は1999年に女性議員を増やすためのネットワーク『WINWIN』を立ち上げた。所属政党によらず女性候補者が当選するように選挙資金を援助した。その後、活動を見直し、今は資金援助をやめて会員がボランティアとして女性候補者の選挙活動を応援している。でもこの間も女性議員比率はわずかに増えた程度。男女半々は程遠い」

女性議員、3割義務に

「クオータ制は男性への逆差別だとして反対意見が根強い。だが国民は男女ほぼ半々なのに、男女比9対1の議員構成がそもそもいびつすぎる。まずは議員の3割を女性に割り当てるなど思い切った手を打たないと状況はいつまでも変わらない。政策立案に女性がもっと関わるようにならないと国のために良いアイデアは浮かばない」

――米大統領選でヒラリー・クリントン候補が敗れました。女性登用を阻む「ガラスの天井」は政治分野でまだ厚いのでしょうか。

「米国で女性大統領が誕生すれば『私たちも政治の分野で活躍できる』と世界中の女性を勇気づけられたはず。それだけに結果は残念だ。彼女は一流大学出身で弁護士。夫が大統領を務めるなど、誰もがうらやむキャリアを歩んできた。それが逆に女性の嫉妬を買い、女性票が思うように伸びなかったようだ」

「世界を見渡せば英国やドイツに女性首相がいるし、アジアでも韓国や台湾では女性が政治のトップを務めている。ガラスの天井は厚いが破れない障壁ではない。日本も遅れてはいけない。政治分野で女性がこれだけ軽んじられているのに日本人女性はおとなしすぎる。もっと怒りの声を上げて現状を変えていこう」

■J-Win理事長 内永ゆか子さん

うちなが・ゆかこ 東京大学卒業後、1971年日本IBM入社。00年常務取締役、04年取締役専務執行役員などを歴任。07年、企業の女性活躍推進を支援するNPO法人「J-Win」を設立し理事長に就任。イオンなどの社外取締役も務める。70歳

――今年の男女平等ランキングで経済は118位。収入の比較方法が変更され、所得格差で大きく順位を下げました。

「順位の低さには驚いたが、所得の男女格差の大きさが顕在化した結果だ。他の国に比べ、組織の上位のポジションに女性が少ないことが影響している」

――その原因は。

「一つは女性自身の意識の問題だ。管理職になりたくない、自信がないという意識はとても根強い。マインドを変えることから始めるべきだ。それには少し上の立場の女性からキャリアアップやマネジメントの面白さを伝えてもらうことが有効だ」

――日本企業の女性の育成手法をどうみますか。

企業幹部、選抜して教育

「課長クラスは育っているが、部長、役員へと上げていくスキームがない。米国では上にいくポテンシャルのある人を職位ごとに一定割合選び、重要な仕事を経験させたり、メンターやスポンサーをつけたりして徹底的にトレーニングする。自然に上がってくるのを待つのではなく、選抜して育てる仕組みが必要だ」

――仕事と育児の両立への不安から、昇進をためらう女性もいます。

「ワークライフバランスの問題も大きい。働き方を変える必要がある。ノー残業デーや有休取得の促進で労働時間を減らすことが働き方改革と捉えられがちだが、それは本質ではない。場所と時間から自由になる働き方を実現すべきだ」

――どうすれば実現できますか。

「IT(情報技術)を徹底的に活用すること。さらに労働時間ではなく成果で評価する仕組みや、個々の責任範囲や達成目標の明確化が必要となる。業務プロセスを見直して無駄な仕事をなくし、生産性をあげていかなくてはならない」

――今後の課題は。

「地方に女性活躍の取り組みを広げること。身近に頑張っている女性がいないケースも多い。好事例やロールモデルを共有するつながりが必要だ」

「この10年で企業のトップの意識は大きく変わった。今はチャンスがたくさんある。長い人生の中でどう世の中に貢献し、自分のプレゼンス(存在感)をどう高めていくか、女性たちにはぜひ考えてほしい」

■国会進出、世界に後れ

日本の国会議員に占める女性比率は世界的に見ても低い。衆議院議員に占める女性の割合はわずか9.3%。列国議会同盟の調べでは世界193カ国中156位(11月1日現在)で、世界平均(23.0%)を大きく下回る。参議院では7月の選挙で女性当選者が過去最多となり女性比率は2割に達したが、上院の世界平均(22.4%)には及ばない。

女性議員の少なさは1995年の世界女性会議で世界的な課題と認識された。「先進国の多くは民主主義の深刻な問題ととらえ選挙制度改革を通じて女性議員を増やしてきたが、日本は危機感が薄く何の対応もしてこなかった」と上智大学法学部の三浦まり教授は指摘する。89年の社会党の「マドンナブーム」や2009年衆院選での民主党の勝利など、野党の躍進で女性議員が増えたことはあったものの、「日本は政権交代自体が少なく、海外のように女性候補者の擁立が選挙で勝つには重要だという認識が共有されづらかった」ことも背景にある。

女性議員を増やすために約120カ国が実施するのが、候補者や議席の一定数を割り当てる「クオータ制」だ。日本では、超党派の国会議員連盟が国政選挙や地方選挙の立候補者が男女均等になるよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法案」の策定に着手。早期成立に向け与野党で調整を進めている。「成立すれば、各党が女性議員増加に向けて具体的な行動を起こす大きなはずみになる」と三浦教授は期待を寄せる。

後援会など地元での活動が強く求められる小選挙区制やワークライフバランスの確保が困難な議員の働き方が、女性の政界進出のハードルになっているとの指摘もある。「女性議員が少ない原因を分析し、女性が入って来やすいよう制度や仕組みを変えていく必要がある」

(編集委員・石塚由紀夫、女性面編集長・佐藤珠希)

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