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「トランプ相場」いつまで? 日本株相場を展望

2016/11/19

 今年2番目の下げとなった翌日、最大の上昇と、先週は株式相場が激動した。ドナルド・トランプ氏の米大統領就任は日本株にとって追い風か向かい風か。今後の大きなテーマになるが、懸念された円高進行がひとまず回避され、株式市場に安心感が広がっている。2017年にかけて堅調相場は続くのか。その条件を探る。

 日経平均株価は米国で大統領選の開票が進んでいた9日に919円下落。トランプ氏勝利を受けた翌10日には1092円上昇した。選挙前から、同氏が当選すれば日本株にプラスになると指摘していた武者陵司・武者リサーチ代表は、「トランプ氏は2018年の中間選挙をにらみリフレ政策を展開するだろう。17年は米経済成長率が加速する」とみる。

 当選前から勝利を予想していた英国の著名投資家・実業家のサイモン・マレー氏も市場へのプラス効果を期待する。「トランプ氏は大統領になった途端、暴言を慎み、共和党の分裂修復を試み、議会とも歩み寄るだろう。優秀な側近が政権を固めれば、民主党時代より政策面で優れたホワイトハウスになる」と語る。

■米選挙後に円安

 目先、市場の関心を集めそうなのが、12月に米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動くかどうかだ。野村証券金融経済研究所の海津政信シニア・リサーチ・フェローは「12月2日発表の11月の米雇用統計の数字を見た上で、FRBは利上げに踏み切るのではないか」と予想する。大統領選直後の米株高や長期金利上昇が後押しするとの見方だ。

 利上げに加え、財政出動や減税などで米国債は増発が見込まれる。米金利に上昇圧力がかかるため、「外国為替市場で1ドル=100円を突破するほど円高が進む可能性は当面低い」(海津氏)との指摘が増えている。

 足元で米長期金利は2.2%台まで上昇している。今年1月に近い水準で、当時の円相場は1ドル=118円前後だった。長期金利をゼロにくぎ付けする日本との金利差を考えると、110円台まで円安が進む可能性がある。

 その場合、安心感が出てくるのが企業業績だ。3月期企業の上半期(4~9月期)の経常利益は11月11日時点の集計で13%減。上半期としては5年ぶりの減収減益だが、四半期ごとに見てみると一転、回復基調が鮮明になる。7~9月期は減益幅が約8%と4~6月期の17%から改善。四半期ベースでは1~3月期の27%減益が大底だったとみられる。(グラフA

 10月以降、企業の想定する為替レートは平均で1ドル=102円程度。足元で円安が進んだ為替相場の水準は企業業績にプラス要因となる。10~12月期以降は経常増益に転じるとの見方が多く、通期での減益幅も、現時点での2%減の予想から改善する可能性がある。

 通期の純利益予想は現在のところ、7%程度の増益だが、企業が固めの予想を出していることを考えるとこちらも増益幅は拡大するとみていいだろう。株式相場がそれを織り込み始めるのは、10~12月期決算の発表が本格化する17年1月下旬から2月上旬ごろか。

 需給関係も悪くない。海外投資家は今年初めから日本株売りの姿勢を強め、1~9月累計の売越額は6兆円を超えた(グラフB)。10月には一転、第1週から4週続けて買い越した。11月第1週は売り越したが、米大統領選後、米国株が上昇しており、買い余力が高まっている。

 17年以降、トランプ次期大統領が財政出動や減税などを先行させ、景気浮揚効果が見込める展開になれば、米株高、ドル高が続く可能性がある。日本株はPER(株価収益率)などの投資指標面で米国株に比べて割安感があり、米国を中心に海外投資家の日本株見直し機運が高まるだろう。

■ファンド売り一巡

 11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会も注目だ。減産に向けた歩み寄りがあれば、原油価格の上昇につながる。サウジアラビアは国営石油会社アラムコの株式上場を控え、原油価格を下げたくない。原油価格が高い方がアラムコの資産価値が上がり、時価総額も高くなるためだ。

 原油価格が1月、1バレル約26ドルまで下落したことを受け、産油国のファンドによる日本株売りが急増したことがあった。こうした売りはすでに一巡しており今後、原油価格が1バレル60ドル程度で安定すれば、日本株の買い戻しも期待できる。

 日銀による年間6兆円規模の上場投資信託(ETF)買いは続くし、公的年金などの買いも、ある程度は見込める。個人投資家は7月以降、売り越しが続いているが、17年から個人型確定拠出年金の加入対象者が拡大される。対象に加わる層は約2600万人と言われ、新たに500万口座が開設されると期待する金融関係者もいる。

 死角があるとすれば、やはり海外発だろう。トランプ政権が実際に動き出し、期待通りの経済運営ができない場合、失望売りが出る懸念はある。円安が持続するかどうかも焦点だ。日銀は12月の金融政策決定会合で追加緩和を見送るとの見方が多いが、突発的に円高が進んだ場合、日銀は対応を余儀なくされるだろう。

 日経平均の今年の高値は大発会の日(1月4日)の1万8450円だ。この日は582円安だった。企業業績の改善期待や需給関係の好転などを背景に、年末の株価が今年の最高値になるかどうか注目だ。(編集委員 鈴木亮)

[日本経済新聞朝刊2016年11月16日付]

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