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幅わずか1.3mm 美麗「レーステープ」の秘密

日経トレンディネット

2016/11/22

独自の技術でレース上のテープを実現。レースの線幅はわずか1.3mm
日経トレンディネット

 多種多様な色柄が楽しめ、粘着力がありながら一度貼ってもきれいにはがせる。そんなテープが文具雑貨店やDIYショップで女性から人気を集めている。雑貨やインテリアの装飾、ラッピング、ペーパークラフトなどさまざまな用途で手軽に使えるのがウケる理由だ。

 貼ってもきれいにはがせるテープといえばマスキングテープがよく知られるが、独自の型抜き技術を駆使した美しさで話題になっているのが、フォーワテック・ジャパン(新潟県三条市)が展開する「pavilio」(パビリオ)ブランドのレーステープだ。

フォーワテック・ジャパンのオリジナルブランド「pavilio」(パビリオ)で展開するレーステープの一例。写真の商品はいずれも1000円

 よくよく目を凝らしてほしい。影が付いていることからも分かる通り、繊細な模様を織りなす線は印刷ではないのだ。

レーステープの代表的商品「ホワイト」。裏面に粘着剤が付いた細い線だけでできている

 上の写真は、パビリオのレーステープに特徴的なカッティング技術がよく分かる代表的商品。「レーステープ」の呼称を体現するように、レースのような細い線だけでできている。もちろん、裏面には粘着剤が付いているからペタッと貼れる。

 これは一体どうやって作っているのか。門外不出とされるその製造プロセスは、ほかの印刷業者にとっても興味津々らしい。

■高い技術力と企画力で勝負

 フォーワテック・ジャパンは、おもに食品や化粧品など工業製品のパッケージラベルや販促用ラベルを中心に製造する中堅クラスのシール印刷会社。創業40周年を迎えた2015年、初のオリジナルブランドとしてパビリオを立ち上げた。

 「どんなに独自性のある機械や優れた技術を持っていても、下請け仕事ではそれが小売店や消費者まで届かない。私たちの持つ企画発想力と技術を生かした製品の力で、一般市場の評価を得たい。そして下請け企業からメーカーへの転換を図りたい。これをテーマに、一般消費者向け製品の開発をスタートさせた」。同社企画営業部長の小林尚之氏は狙いをこう語る。

 パビリオというブランド名の由来は「パビリオン」。万博などの展示館を指す単語だ。人種、国境、性別、世代を超え、みながそこに集って共感するイメージを重ね、「多くの人々がさまざまな用途で使えるテープであってほしいとの願いを込めた」(小林氏)という。

パビリオのレーステープは現在、テーマ別に9つのシリーズを展開。色柄は100種類を超える
使い道を想像するだけでもワクワクする。写真はすべてパビリオブランドのレーステープだ。ポリプロピレンというプラスチック素材のため、通常のマスキングテープより発色がよく、水にも強い

■「貼ってもきれいにはがせる」が当たり前になった

 ここで「シール」と「テープ」という言葉の一般的な使い分けを確認しておこう。小林氏によると、「シールは裏面に粘着剤を付けた紙やプラスチックなどの総称で、その中にテープというアイテムがある。テープは用途上、留める機能を持つのが原則で、製品はロール状が基本」とのこと。テープといえば、セロハンテープやガムテープのように「ピッタリくっついてはがれない」が従来のコンセプトだった。

 ところが今は違う。10年ほど前、工業用テープから雑貨の仲間入りを果たしたマスキングテープ[注1]の流行が「貼る」の概念を大きく変えた。「シールは貼ってきれいにはがせるのが当たり前になり、はがしたあと粘着剤が残りにくいシールが定番化した」と小林氏は指摘する。

[注1]女性向け雑貨としてのマスキングテープは、工業用テープメーカーのカモ井加工紙が女性ユーザーの声に応え、一般消費者向けに商品化した「mt」ブランド(2007年発売)が始まり

 もともと建築や車両製造で塗料を塗り分ける際に養生テープとして使われたマスキングテープだが、貼ってもさっとはがせる、上から描ける、自在に手でちぎれるといった特性に目を付けた女性ユーザーが、「貼って飾る」という用途を見い出した。いうなればオトコの現場で使われた養生テープが、かわいい装飾用に変身したわけだ。

 メーカーが予想もしなかった使い方を女性たちが開拓し、新しい需要を創出したことで、市場に多種多様な色柄が生まれた。マスキングテープは手軽にかわいく飾れる便利なアイテムとして、今や100円ショップでも定番商品になっている。

 パビリオのレーステープはマスキングテープの一種だと誤解されがちだが、「まったく別モノ」と小林氏は語る。まず材質はポリプロピレン(略称はPP)というプラスチック素材なので、手では切れない。なにより、レーステープはカッティング技術の限界に挑戦し、「市場にない商品を作る」(フォーワテック・ジャパンの田中義晶社長)ために開発したというのだ。

使い方はお好み次第。ラッピングはギフトの楽しさの入り口(画像提供:フォーワテック・ジャパン)
特別感を演出するレーステープ。中身の味わいまで変わるよう(画像提供:フォーワテック・ジャパン)

■「線の幅」の限界に挑戦

 開発は限界への挑戦だった。レースの線の幅を細くすれば、巻き取る際に不具合を生じやすい。レーステープを作るにあたっては、幅広で何百メートルもあるようなシール状の素材に模様を印刷し、型抜きした部分だけを紙の芯に少量ずつ巻き取って最終製品にする。

 引っ張りながら巻き取るのだが、細い線を強く引っ張れば伸びてしまい、細いほど切れやすくなる。かといって柔らかく巻けばゆるゆるになる、といった具合に「レーステープは芯に均等に巻き取る作業が難しい」とパビリオ製造管理課長の北村 陽氏。わずか0.1mmズレるだけで斜めに巻いていってしまうそうだ。

「レーステープ」のホワイト。テープ幅は5cmと7.5cmがある
テープを箱から取り出したところ。エッジがキリっとそろい、たわむことなく巻かれている

 レーステープの線の幅について、同社は経験的に「2mmが限界」と感じていた。しかし、共同開発でタッグを組んだデザイナーは「線の幅を1.3mmにすることがクオリティーを上げる要」と譲らなかった。「感覚的にムリ」と断っても、「もっと細く」と食い下がってきた。レースのような繊細さを極めるためだ。そんな葛藤のなか、「歯をくいしばって製造部門がついてきてくれた」(小林氏)結果、2mmの壁をついに乗り越え、理想とする1.3mm幅を実現する新しい技術を身に付けたのだという。

1.3mm幅の繊細な線で構成するレーステープ。試行錯誤を重ねるうちに新しい技術を身に付け、ついに実現した幅である

 レーステープはデザインを印刷したシール状の素材に刃型で切れ目を入れ、不要な部分を取り除いたうえで、美しくデザインされた線の部分だけを残したものを芯に巻き取る。このとき、切れ目に囲まれた内側の不要な部分を何らかの方法で取り除きながら芯に巻くプロセスが、同社にとって最も大事な生命線ともいうべき技術なのだそうだ。

 「1つひとつ人間の手で取り除いてもできないことはないが、きわめて非効率。生産性を上げ、安価に作れるところに独自の技術がある」と小林氏。「どうやって中抜き[注2]してるの?と、展示会でもほかの印刷業者から不思議がられますが、これだけは明かせません」とのこと。

[注2]刃型による切れ目に囲まれた内側の部分を取り除くこと。
これがシールなの!?と目を見張る。材質はポリプロピレン。手では切れないが、切れ目が入ると裂けやすいという弱点はある
こちらが裏面。テープの厚みは80マイクロメートル。セロハンテープよりはずいぶん厚い
レーステープは「強粘」(強い粘着力)、「再剥離」(貼ってもきれいにはがせる)をうたう。はがしたあとに粘着剤が残りにくい

■イマイチならやり直せるのも魅力

 パビリオは月間生産量が当初から格段に増え、販売も順調のようだ。女性からは、スクラップブッキングやギフトの包装ほか、家電製品をデコレーションしたり、壁や鏡、ガラスに貼ったりと自分好みの創意工夫を楽しむ声が寄せられるという。結婚式のご祝儀袋をレーステープで飾りつける人もいるそうで、さぞや印象に残るだろう。

 海外マーケットへの進出、新しいプロジェクトの発足も念頭に、小林部長は抱負をこう語った。「『日常を元気に明るく』をテーマに、文具雑貨だけでなく、インテリアも含め多種多様な場面で使われるような、“生活を楽しむテープ”を目指していきたい」。パビリオの公式ネットショップも12月中旬にオープンする予定だという。

 インテリアやプレゼントを美しく飾るには、どのテープをどう貼るか、それなりにセンスが試される。だが、レーステープの特徴は「強粘」(強い粘着力)と「再剥離」(一度貼ってもはがせる)。貼る相手(被着体)にもよるが、イマイチなら何度でもやり直しが利くのがありがたい。

画像提供:フォーワテック・ジャパン
画像提供:フォーワテック・ジャパン

画像提供:フォーワテック・ジャパン
貼らなくても、パッケージに入っているだけでカワイイ

赤星千春(あかぼし・ちはる)
「?」と「!」を武器に、トレンドのリアルな姿を取材するジャーナリスト

[日経トレンディネット 2016年11月11日付の記事を再構成]

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