大統領目指した麻薬王 臨場感ある実録ドラマが人気に
2016年10月 海外ドラマ月間レンタルランキング
米国の次期大統領に不動産王のドナルド・トランプ氏が決まり世界に衝撃が走ったが、海外ドラマではコロンビアの大統領を目指した麻薬王のドラマが人気作となっている。その作品『NARCOS ナルコス 大統領を目指した麻薬王』は、TSUTAYAの海外ドラマ10月度レンタルランキングで29位にランクインした。
『NARCOS ナルコス』は1980~90年代に実在したパブロ・エスコバル率いる麻薬カルテルと、コロンビア政府・アメリカ麻薬取締局捜査官たちの闘いをドラマ化。世界有数の資産家で、貧困層に慈善を施す家族思いの政治家だが、裏の顔は世界最大級の麻薬カルテルの支配者というエスコバルを主人公に、貧しさのなかからのし上がった彼の内面や葛藤、彼を追い詰めようとする麻薬取締局の捜査官たちの執念の捜査が描かれる。実際のニュース映像などを多用したドキュメンタリータッチの映像が臨場感を生んでおり、コロンビア版"仁義なき戦い"といえる作風だ。
TSUTAYA MD販促部映像ユニット レンタルチーム 海外ドラマ担当の中山知美氏によると、「『ブレイキング・バッド』などを好む35歳以上の男性層に支持され、都心店を中心に人気を集めています」。
『ブレイキング・バッド』は、がんで余命わずかと知った高校の化学教師が、家族にお金を残すためにドラッグ精製に手を染めるという破天荒なストーリー。米国では社会現象ともいえる大ヒットを記録した人気作だ。米テレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞のドラマシリーズ部門で、2013、14年と2年連続で作品賞を受賞するなど内容も高い評価を受けた。そうした見応えのあるドラマを好む大人の男性層に『NARCOS ナルコス』も人気がある。
『ブレイキング・バッド』の劇中では、主人公が精製した高品質のドラッグがカルテルを通じて南米をはじめ世界に流通する。そのカルテルの実態が実録で描かれている点も、関連作として『NARCOS ナルコス』がファンの興味をひいたようだ。
また、今年の第68回エミー賞では、アメフトの元スター選手で俳優のO・J・シンプソンが元妻殺害の容疑をかけられた事件の裁判をドラマ化した『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』がリミテッドシリーズ/テレビムービー部門で作品賞を受賞するなど、実話に基づくドラマが米テレビ界のトレンドとなりつつある。15年からネットフリックスで配信がスタートした『NARCOS ナルコス』は、その先駆けでもある。
主演のワグネル・モウラはエスコバルになりきるため、スペイン語を半年間学び、18キロ増量するなどの役作りに取り組み、今年の第73回ゴールデン・グローブ賞のテレビの部で男優賞にノミネートされた。あわせて作品賞にもノミネートされるなどクオリティーへの評価は高い。
『アメトーーク!』でのゾンビ芸人効果
ランキング全体を見ると、1位は先月に続き『ウォーキング・デッド』のシーズン6。シーズン1~5の過去シーズンもすべて30位にランクインしている。前日談にあたるスピンオフ『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』(10位)を含めると、7作が入っており圧倒的な人気だ。10月6日には人気バラエティー番組『アメトーーク!』にゾンビ芸人が登場して、ゾンビ撃退法や最強対ゾンビ武器などのトークを展開。その効果か、シーズン1は先月の13位から11位にランクアップ。番組を見て興味を持ち、初めて借りた人が増えたとみられる。
2位に入った『レジェンド・オブ・トゥモロー』はアメコミ発のアクション大作。アメコミの2大レーベルのひとつであるDCのスーパーヒーロー8人が集結してチームを組んで、過去と未来を行き来しながら巨悪と戦う。面白いのは、集められたのが正統派のヒーローばかりではなく、悪役や変わり者も含まれること。すんなりチームがまとまるわけもなく、一筋縄ではいかない面々のやりたい放題が楽しめる。異色のヒーローものだ。『プリズン・ブレイク』で主役の兄弟を演じて人気となったウェントワース・ミラーとドミニク・パーセルのコンビが、再びタッグを組んで出演しているのも話題だ。
3位の『GRIMM/グリム』シーズン4は、グリム童話をモチーフにしたダークアクション。グリム一族の末裔(まつえい)で、人間界に潜むモンスターの存在を見分ける特殊能力を持つ主人公の刑事が、モンスターが起こす犯罪事件の捜査にあたる。シーズン4では、魔女型モンスターに能力を奪われた主人公が最大のピンチに陥るのが見どころだ。
4位以下を見ると、2位の『レジェンド・オブ・トゥモロー』を含めてアメコミ作品が5作入っており、ゾンビとアメコミが海外ドラマの2大人気ジャンルとなっている。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
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