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次世代リーダーの転職学

転職するなら覚えておきたい「正しい会社の辞め方」 エグゼクティブ専門の転職エージェント 森本千賀子

2017/1/6

「転職成功」とは、希望通りの企業に入社して活躍することだけではありません。前の会社を円満に退職できること、また、これまで築いてきた人脈を維持・活用できてこそ「成功」といえるのではないでしょうか。今回は、退職する際のトラブルを防ぎ、むしろ去り際に周囲からの評価が高まるような「辞め方」のコツをご紹介します。

「スケジュールは狂うもの」と心得ておく

まずは、好ましくない辞め方になってしまうケースをご紹介しましょう。会社や同僚との関係が悪化していたわけでもないのに「跡を濁す」状態になる理由の多くは、スケジューリングのミスです。

「内定を得てから退職まで時間がない!」となると、引き継ぎがしっかりできていない、お世話になった社内外の人にろくにあいさつができていない……という状態で去ることになってしまいます。あるいは、ちょうど忙しいタイミングで穴をあけ、同僚に負担をかけてしまうこともありがちです。

転職活動を始める時点で、退職のタイミングにある程度のめどをつけておくこと、そして転職活動と並行してスムーズに引き継ぐための準備を進めておくことが大切です。

しかし、スケジュールを立てたつもりでも大幅に狂うこともあります。「退職」をするのに、予想以上に時間がかかるケースも多いからです。理由は大きく分けると2種類。

(1)後任者の選定が進まない、採用がうまくいかないなどで、業務の引き継ぎができない

(2)会社や上司から引き留められ、すんなりと退職願を受領してもらえない

この2つはいずれも、事前に対策をとることができます。

自分の担当業務を任せられる後輩を育てておく、あるいは、自分が辞めた後に入ってきた人でもすぐに業務ができるようなマニュアルや資料を作成しておくなど。すると(1)のハードルは越えられますし、(2)についても「そこまで綿密に準備するほど意志が固いなら」と受け入れてもらえる可能性があります。

(2)については、前々から上司に「自分が目指したいこと」などを話して共感や理解を得ておくと、快く送り出してもらいやすくなるかもしれません。

競合他社への転職は、辞め方にも「戦略」が必要

退職時にトラブルが発生しやすいのが「競合他社への転職」です。競合への転職が当たり前の業界では気にされないことも多いのですが、そうではない場合、強く警戒・反発される覚悟が必要です。競合他社に転職することが知られるやいなや、「今すぐこの会議室から出て行け」と言われ、それから退職日まで出社を許されなかった人もいます。

上司や同僚にどのタイミングで、どういう表現で伝えるかが非常に重要です。「辞めてどこに行くんだ?」と聞かれても、できれば退職直前まで社名を明かさないのが得策です。すでに内定を得ていたとしても、「転職活動を進めていて、退職の意志と時期は決めている。転職先はいくつかの選択肢を検討している途中」といった伝え方にとどめておくといいでしょう。

ただし、信頼関係が築けている人、今後もお付き合いを続けていきたい人には、食事に誘うなどして時間を取り、「なぜ転職するのか」「なぜその会社に行きたいのか」という思いをちゃんと伝えておいてください。

後任者に感謝されるような「引き継ぎ」を

引き継ぎがしっかりできれば、上司や同僚から快く送り出してもらえるものです。土壇場で慌てないよう、転職活動と並行して準備を進めておくことをお勧めします。業務フローや注意点を文書化する、顧客や関係者の連絡先をまとめておく、業務に使う資料を整理してファイリングするなど、早めにやっておけることは済ませておきましょう。

スケジュールに余裕ができれば、休暇を取って気持ちを切り替えたり、新しい会社で活躍するために必要な情報収集などに時間を活用することができます。

現在の同僚とは、この先もビジネスでつながることがあるかもしれません。「見事な引き継ぎ」によって、むしろ評価を上げるくらいのつもりで臨むことをお勧めします。単に業務フローと関連資料を渡すだけでなく、「さまざまなケースでの対処法」「過去のトラブル例と発生経緯」「取引先担当者のキャラクター、コミュニケーション上の注意点」といったこともしっかり伝えておくと、後任者は助かるでしょう。

また、顧客や取引先にあいさつに行く際は、なるべく後任者と一緒に訪問します。そして、後任者を紹介する際に、その人の優れた部分を相手に伝え、褒めるのです。後任者の経験が自分より乏しい場合などは「少し時間がかかることもあるかもしれませんが、責任感が強いので安心して任せていただけます」などとフォローしておくのも手。取引先と後任者がよい関係を築けるようなつなぎ方をしておけば、後任者は感謝するでしょう。

人間関係を「メンテナンス」するチャンスでもある

ビジネスパーソンにとって「人脈」は財産。これまで築いた人脈を退職によってリセットしてしまうのはもったいないことです。むしろ退職をよいチャンスとして、人間関係を「メンテナンス」しておくとよいでしょう。

引き継ぎに集中しがちですが、退職のあいさつには手を抜かないでください。特に、これからも付き合っていきたい人に対しては、1~2週間前には連絡をとり、感謝の気持ちと今後の抱負を伝えておきたいものです。そして、転職後しばらくしてから近況報告をすることで、関係をつないでおきやすくなります。

ていねいにあいさつすれば、相手もていねいに、あなた対する気持ちを返してくれるものです。そのとき「自分のことをこんなふうに思っていてくれたのか」と意外な気付きがあることも。退職は、それぞれの人との関係に改めて向き合い、再構築する絶好のチャンスでもあります。ぜひそのチャンスを活用してください。

次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は1月13日の予定です。
連載は3人が交代で担当します。
*黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
*森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
*波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長
森本千賀子(もりもと・ちかこ)
リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント
1970年生まれ。独協大学外国語学部英語学科卒業後、93年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、つねに高い業績を上げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。
2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNo.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』(大和書房)、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣』(日本実業出版社)、『後悔しない社会人1年目の働き方』(西東社)など著書多数。

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