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まさかのトランプ勝利、慌てぬ投資戦略(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2016/11/15

「米大統領選は番狂わせだったが、英EU離脱決定より市場の混乱は少ない。大統領選はどちらが勝っても共通の政策が予想できたからだ」

米国で11月8日に大統領選挙が行われ、事前の下馬評とは違ってヒラリー・クリントンさんではなくドナルド・トランプさんが大統領に決まりました。

私もヒラリーさんが大統領になると読んでいたので、予想を外してしまいました。しかし、運用するファンドへの影響はさほどありませんでした。なぜでしょうか。

それを述べる前に、まず「確率」について話をします。難しい話ではありません。

「確率7割で成功する」と聞いたら皆さんはどう思いますか。相当な確率で成功するように思いますよね。しかしながら、これは一方で確率3割で失敗することを意味します。確率3割はプロ野球の3割バッターに対峙する投手のようなものです。7割は抑えるけれども3割は打たれるということです。

もっとわかりやすくいえば、大リーグのイチロー選手に投げるピッチャーのようなものです。結構、打たれますよね。7割の成功率といっても相当な割合で失敗するんです。

将来のイベントについて先物で取引するアイオワ大学電子市場(IEM)の「大統領選先物」は、ヒラリーさんの勝率予想が6日時点で74%、トランプさんの勝率予想は28%でした。だとすると、ヒラリーさんはまさに3割バッターと勝負をするピッチャーです。今回は3割バッタートランプという強打者にホームランを持っていかれたようなものだと考えると、そりゃそういうこともあるだろうなと思いませんか。

そんなことよりも、私たちのようなファンドマネジャーはヒラリーさんが勝ってもトランプさんが勝っても、慌てない戦略を取ることが重要です。ヒラリーさんかトランプさんかどちらかが勝つ可能性はほぼ100%だからです。

このような場合、特定の株式というより好影響を受ける業種と悪影響を受ける業種にまずは注目します。

ヒラリーさんは公約として米国のインフラに2750億ドルを投資するといっていました。道路や港湾や空港です。一方でトランプさんはヒラリーさんの倍の金額をインフラ投資するといっていました。

ならば、インフラ関連への投資はヒラリーさんになってもトランプさんになっても拡大することを意味します。米国でインフラへの投資が拡大することが変わらなければ、その業種の中で恩恵を受ける企業の株式に投資することが、少なくとも負けない戦略であるということがわかります。

実際にはインフラ関連、資本財、建設・土木関連、測量、建設機械、資源関連などが関連銘柄になります。日本株の投資であれば、米国でのこれらの売り上げ比重が高い会社が恩恵を受けるということになります。

ただし、これは事前に予想できることなので、多くの投資家が同じような行動をとります。よって自分だけ大もうけはできないかもしれません。しかし、投資においては損をしないということが大事なので、大損するリスクは減らすことができます。ヒラリーさんが勝ってもトランプさんが勝っても、共通の政策を探すことが重要なのです。

しかし、難しいのは英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票のような事象です。これは共通の政策というものではなく、結果は正反対になります。このような二者択一によってマーケットが動く場合はなかなか厄介です。

トランプさんが勝利してから、世界の株式市場は大きく変動しましたが、英国のEU離脱決定直後ほどではありませんでした。というのは、先ほど話した通り、共通の政策があり、どちらが勝っても変わらない部分があるので、その分だけ変動が小さく済んだのです。

同じように番狂わせであった英国のEU離脱の場合は、二者択一であり、市場の事前予想と違う結果になったらその影響は大きくなります。

それでは二者択一のような政治イベントなどが眼前にある場合、私たちはどのように対応すればよいのでしょうか。

1つ目は、しっかり状況を読み込み、予想に従って行動をすることです。時々外れることもありますが、真剣に努力をしていれば外す可能性よりも当てる可能性の方が高まるはずです。

2つ目は、不測の事態を避けたいなら、現金の比率を高めることです。もちろんマーケットが上昇したときはついていくことができませんが、一方で下げ相場のときに下落を抑えたり、より安くなったときに投資したりする余力が出てきます。

3つ目は、先ほどお話しした通り、どのような結果になってもそれに影響されない地味で地道な企業に投資をすることです。

このような原理原則に従って投資を行うと、短期的には成功も失敗もありますが、総じてリスクを減らしリターンを高めることができると思います。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。

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