スーツに合う上品なサイドゴアブーツが売れている
この冬に買いたい最新ブーツ選び(1)
朝晩の冷え込みが厳しくなってきたきょうこのごろ。本格アウターの用意も必要だが、もうひとつ冬のファッションに欠かせないのがブーツではないだろうか。ブーツを履くと足元にボリュームが出るため、アウターを着用した際に見た目のバランスがよくなるのだ。もちろん寒さ対策としても効果的。そこで今回は、3回に分けて、タイプ別に注目すべきブーツを紹介する。第1回はビジネススタイルに対応するサイドゴアブーツにフォーカスした。
脱ぎ履きしやすくコーディネートしやすい
ここ数年、トレンドセッターたちが秋冬にこぞって愛用しているのがサイドゴアブーツだ。ハリウッド女優などセレブの間で流行し、女性たちから絶大な支持を得ている。今年はこのブームがメンズファッションシーンにも波及。ショップでの取り扱いも増え、各ファッション誌などでも大きく取り上げられている。
サイドゴアブーツとは、履き口の側面にゴア(ゴム糸を織った生地)が付いているブーツのこと。ゴアは伸縮性があるため脱ぎ履きしやすいのが魅力。靴ひもがないものが多く、ブーツといえどもスマートな印象を与える。チェルシーブーツとも呼ばれ、ビートルズが履いていたことでも有名だ。
今年注目されている理由として、「実用性とファッション性を兼ね備えているからではないか」と、ジョセフ チーニーなど英国ブランドの商品を輸入する渡辺産業のプレス・坂本竜氏は話す。
「サイドゴアブーツは着脱しやすくカットが高いのが特徴で、アッパーがシームレスなデザインのものを雨用の実用靴として使う方もいます。そしてクラシック回帰がうたわれている男性のスーツスタイルとも相性がよく、また個性もしっかり演出できます」(坂本氏)
スーツで個性が演出できるポイントに、パンツの丈や裾幅、裾の仕上げ(シングル、ダブルなど)がある。サイドゴアブーツはどんなパンツにも合わせやすく、また合わせ方によって主張を抑えることもスタイリングの中心に据えることもできる。このように、さまざまなバリエーションのスタイルを構築できる汎用性と、脱ぎ履きしやすく雨靴としても使える機能性の高さが、サイドゴアブーツの人気の理由なのだろう。
人気を裏付けるように、ジョセフ チーニーのサイドゴアブーツは、今季も含め近年だけでもビームス、ユナイテッドアローズ、ジャーナルスタンダード、バーニーズニューヨークといった有名セレクトショップで別注モデルが展開されている。
そこで今回は、サイドゴアブーツのなかでもスーツにも合うドレス顔の注目モデルをピックアップした。いずれも革靴ブランドとして名高いメーカーだけに上品かつ高機能。これらの細部を見ていくことで、サイドゴアブーツの魅力がわかるはずだ。
ジョセフ チーニー/オン・オフ兼用できる万能デザイン
靴作りの街として知られる英ノーサンプトン州を拠点とし、設立から130年の歴史を持つジョセフ チーニー。設立年を名に冠し、2015年春夏シーズンにデビューした"1886コレクション"にも2015年秋冬からサイドゴアブーツが加わった。
このブーツはオン・オフ問わず履ける万能デザインが魅力。プレーントゥでシンプルな顔つきのため、カジュアルスタイルからキレイめなコーディネート、そしてビジネスシーンにまで対応する。
アッパーにはウェインハイマー社のボックスカーフを使用。キメが細かく上品なため、スーツにも難なく合わせられる。アウトソールは360度出し縫いのダイナイトソールで、丈夫で滑りにくい。またダブルソール(二重構造)なので底周りにボリュームがあり、カジュアルなパンツとも相性がいい。これらアッパーやライニング(裏張り)、そしてアウトソールまですべてブラックで統一して汎用性を高めている。
また、このコレクションに使用しているラスト(木型)は、長すぎず短すぎない絶妙なノーズと、英国の伝統的な丸みのあるラウンドトゥが特徴。幅が広い日本人の足にもなじみやすい形状なのも見逃せない。
「サイドゴアブーツは寒くなるにつれて需要が増え、売れ行きは好調になります。特にこのモデルは仕事でも休日でも幅広く使える点で支持を得ています」(渡辺産業 プレス 坂本竜氏)
トリッカーズ/人気のカントリーブーツをサイドゴア仕様に
トリッカーズのサイドゴアブーツは、同ブランドの代表ともいえるカントリーブーツのデザインを踏襲している。トリッカーズは編み上げブーツがあまりにも有名なため、それ以外のモデルを見る機会が少ない。そこで何か違ったものを、ということで作られたのが、つま先は定番ブーツにそっくりな当モデルだという。"編み上げは脱ぎ履きが面倒"と思っている人にぴったりだ。
1829年創業の同社は、現存するノーサンプトン最古のグッドイヤーウェルテッド工場としても有名。ロンドンの直営店舗には、英国王室チャールズ皇太子御用達の紋章が掲げられ、その高い品質が証明されている。
シューレースがなく甲部分がすっきりとしたシャープな印象のため、ジャケット+パンツといったカジュアルなビジネススタイルにも合わせられる。また、単にレースアップからサイドゴアにしただけでなく、編み上げブーツとは違うラストを使用。幅にゆとりのある木型を使用し、編み上げブーツが窮屈に感じる人にも履きやすい設計になっている。
「トリッカーズは人気ブランドなので、革靴好きにとどまらず多くの人に注目されています。20代の若い層や、既にトリッカーズの定番モデルを所有する40~50代の購入が目立ちます」(トレーディングポスト青山本店 スタッフ 藤井丈晴氏)
定番ブーツ同様のタフさに、脱ぎ履きしやすさがプラスされたサイドゴアブーツは大好評。9月からの下期3カ月で、すでに上期の売り上げを超えているそうだ。ボリュームのあるデザインなので、寒くなるにつれてさらに売り上げ増を見込んでいるという。
クロケット&ジョーンズ/パーティーシーンに履きたいエレガントな1足
独特なショート丈と、V字型のゴア形状。クロケット&ジョーンズのサイドゴアブーツは、個性豊かでラグジュアリーだ。このブーツは、他ブランドでは見られないようなオリジナルモデルを打ち出すことで、従来の定番モデルばかりが流通していた日本市場で差別化を図ることを目的に作られたという。その狙い通り、かなり目立つ。
クロケット&ジョーンズは1879年創業。世界で最も多くの種類の木型を有する靴メーカーで、数々の有名映画に商品を提供するなど、世界中のファッションブランド&セレクトショップから支持されている。同メーカーのファンは多く、幅広い世代に愛用されている。
このサイドゴアブーツには、日本人向けにボールジョイント(親指のつけ根の足が左右に一番広い部分)にゆとりを持たせつつ、踏まずとかかとのフィット感を非常に強くしたラストを採用。見た目はかなりシャープだが、意外と窮屈に感じることはない。
フォルムもさることながら、黒スエードのアッパーとボルドーのゴアというカラーリングもエレガントさを際立たせている。女性の間で流行したブーティのような印象で、ドレススタイル向きの1足といえるだろう。ちなみにスムースレザーモデルもあり、この黒スエードモデルはトレーディングポスト青山本店の別注品だ。
「下期に入ってからの約3カ月で、上期の倍以上も売れています。若干マニアックなデザインなので、ファッション感度の高いビジネスパーソンや、靴を数多く所有している方に支持されています」(トレーディングポスト青山本店 スタッフ 藤井丈晴氏)
ドレス顔のモデルは幅広いコーディネートに対応
以上、注目のサイドゴアブーツを3つ紹介した。いずれも老舗の靴メーカーが手がけているだけあって高品質・高デザイン。つま先のフォルムさえ気を付ければ、ブーツといえどビジネススタイルにも対応することがわかったはず。ドレスシューズのデザインにのっとったモデルなら、スーツにだって合わせられる。サイドゴアブーツは靴ひもがないため脱ぎ履きしやすく、すっきりとしたルックスで幅広いコーディネートに使える万能ブーツなのだ。
女性ファッションシーンから波及したサイドゴアブーツ人気。今年、女性の間ではショート丈モデルが注目されているとか。今後は男性ファッションにおいても、クロケット&ジョーンズのようなショート丈サイドゴアブーツが流行するかもしれない。
(ライター 津田昌宏)
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