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鈴木愛理はバイオリニスト ドイツ留学で世界に飛躍

夢は「一流オーケストラへの入団」

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NIKKEI STYLE

海外留学者数が減り続けるなか、バイオリニストの鈴木愛理は2010年にドイツへ渡って以来、ハノーバーを本拠に活躍の場を広げてきた。「日本だけで勉強していた時代より、世界が確実に広がった」という留学後の成果を11月24日、東京・代々木公園のHakuju(白寿)ホールのリサイタル(ピアノは佐藤卓史)で問う。アイドル歌手の鈴木愛理とは同姓同名だが5歳年長、27歳の新鋭だ。

文部科学省がOECD(経済協力開発機構)などの統計に基づき集計した13年の「日本人の海外留学者数」は5万5350人。04年ピーク時の約3分の2にとどまり、20年前の水準まで逆戻りした。内訳をみても米国が全体の35%、中国が30%を占め、英語圏とアジアを除く留学先では筆頭(6位)のドイツはわずか3%、しかも前年比15%減と振るわない。

日本政府が明治維新の文明開化で西洋音楽を本格導入した当時、教師を主にドイツ語圏から招いた影響もあって、音楽家の留学先では長くドイツが主流だった。第2次世界大戦後は米国への音楽留学も盛んになったが、最近では海外に関心を持つ音楽学生自体が激減している。日本社会全体の「内向き」現象が、本来グローバルであるべき音楽の世界にも及んできた結果だろう。

鈴木は趨勢に逆らうかのように、早くから「ドイツのトップクラスのオーケストラに入りたい」との意思を固め、特待生として入学した桐朋学園大学音楽学部3年生の秋、ニーダーザクセン州立ハノーバー音楽演劇大学ソリスト課程に転じた。

4歳でバイオリンを始めたが、家族に音楽家はいない。父が子どものころ習っていた小さいサイズのバイオリンが家にあり、両親は「女の子だから、楽器を習わせたらいい」くらいの動機で与えたという。ところが、めきめき才能を開花させ、高校入学(06年)と同時に初リサイタルを開催、同じ年にヴィエニアフスキ国際バイオリンコンクールに2位入賞を果たした。同コンクールはピアノのショパン国際と並び、ポーランドが国を挙げて後押しする5年に1度の催しだ。12年には現在の地元、ハノーバーの国際バイオリンコンクールにも入賞し、ドイツやオランダでの演奏活動を本格化させた。

今もハノーバーで勉強を続け「できるだけ長くドイツにいて、とにかく前に進みたい」と思う理由は何なのか? 「日本では先生に言われたことをまじめに繰り返すだけだった。ドイツに来た当初は、周囲の学生の主張の強さに驚いた。ドイツ語を覚えながら自分も強さを身につけて気付いたのは、アーティキュレーション(音の分節法)やフレージング(旋律の歌わせ方)にも確かな論理があって、これを理解すれば一段と自然な音楽になるという事実だった」と鈴木は日独の音楽に対する見方、構築法の違いを指摘する。

今年6月には初めて、ドイツのプロオーケストラの一員として演奏した。ハンブルクのNDR(北ドイツ放送)エルプフィルハーモニー管弦楽団(16年2月に北ドイツ放送交響楽団から改称)で日系米国人マエストロ、ケント・ナガノが指揮したシェーンベルク作曲の大作「グレの歌」。大編成の管弦楽と合唱を必要とし、エルプフィルの正団員だけではまかなえないため、同じNDRのサービスエリア内のハノーバーからも学生がエキストラ奏者に呼ばれた。

最初は「一人一人の奏者が出す音の大きさに、びっくりした」という。日本では「合わせる」ことに全員の関心が向かい、音量も出過ぎないよう気を使う。さらに小節や和声ごとの「縦の線」を正確に整えようと、練習を繰り返す。「ドイツのオーケストラの中にいたら、誰も合わせようとして弾いていなかった。縦が多少そろわなくても、横の流れの中で自然に合っていけばいいと割り切っているのが新鮮で、音楽的でもあった」と、さらなる異文化体験を語る。

「ドイツのオーケストラに所属しながら、日本での演奏活動を続ける」との夢は一歩ずつ、現実へと近づいているようだ。

東京での久しぶりのリサイタルには、「いい曲なのにあまり演奏されない」というメンデルスゾーンのソナタ(ヘ長調)、大作曲家の「若書き」(若い時期の作曲)が新鮮なR・シュトラウスのソナタ、シュトラウスに影響を受けたユダヤ人作曲家ブロッホの「ニーグン」と弾きこんだ3曲に、初めて挑むストラビンスキーの「ディベルティメント」を組み合わせた。

ストラビンスキーの原曲はバレエ音楽。実は、留学してからバレエを始めた。ドイツでは一定の年齢に達すると「タンツシューレ(バレエスクール)」に通い、社交に必要なダンスの基本を学ぶ。鈴木がある日、「私はワルツを踊れない」と何気なく話したら、ドイツの友人に「踊れないのに、どうやってバレエ音楽を弾くの?」と突っ込まれた。「小さいころから興味はあった」ので習いに行くと「バレエ音楽のリズムに対する理解が深まったのはもちろん、からだ全体を使って表現する手法が、意外なほどバイオリンともつながっていて、非常に役立つことがわかった」。「ディベルティメント」からは、ドイツで開眼した「肉体の響き」も聴こえるはずだ。

鈴木の進境は、留学が自分の可能性を改めて発見し、新たな世界を切り開く上で、今も有効な手段であることを鮮やかに立証する。

(池田卓夫)

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