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ももクロと伝統工芸 共通項は「応援してくれる人」

ももクロVS伝統工芸/高城れに、「江戸切子」に挑戦(3)

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NIKKEI STYLE

ライブに来てくださる人たちの顔を思い浮かべると「ここであきらめちゃダメだな」って思います――江戸切子について教えてくれた根本幹大さんとお互いの仕事について語り合った、ももクロの高城れにさん。アイドルとしてのライブへの情熱、職人としてのグラス作りへのこだわり、共通するのは「応援してくれる人」の存在でした。【前回はコチラ】

おばあちゃんの家にあったお皿って江戸切子?

江戸切子の工程の中で、デザインを決定づける「三番掛け」を体験した高城さん(第1回第2回参照)。曲線を削ったり、伝統の柄を彫ったり、時には叫び声をあげたりしながらも、「まばたきを忘れるほど」初めての江戸切子作りを楽しく作業しました。

江戸切子の体験が終わった後、工房の隣にある根本硝子工芸のオフィスにやってきて、窓に面したショーケースに並ぶ江戸切子をじっくりと見る高城さん。実際に作業を体験した後に見ると、その模様の細かさに驚くばかりです。

そもそも高城さんはこれまでに江戸切子を見たことがあるのでしょうか?

高城れにさん きょう、ここにお邪魔して思い出したんですけど、おばあちゃん家に透明の切子のお皿があって、昔からキレイだなって思ってたんですよ。でも、それが江戸切子かどうかはわからなくて。江戸切子って何ですか?

根本幹大さん 江戸切子は江戸時代の後期からはじまった伝統工芸の一つです。多くの人がイメージするのは赤と青のガラスにカットを施したものだと思います。以前は技術的な理由から、銅赤と瑠璃の2色だったんです。今ではどんな色のガラスも作れるようになりました。だから今回のように紫のグラスも作れるんです。

江戸切子協同組合ホームページによると、「天保5年(1834年)に江戸大伝馬町のビードロ屋加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻したのが初めて」だと伝えられているそうです。現代に伝わる江戸切子の技法が確立されたのは、明治6年(1873年)に開設された品川興業社硝子製造所が、切子(カット)指導者として英国人エマニエル・ホープトマン氏を招いて、十数名の日本人がその指導を受けた明治14年です。

幹大さん 色がついているのは表面だけなので、削ると透明な部分が出てくる。それを生かした模様やデザインを考えるんです。

高城さん なるほどー。さっき削った紫色のグラスも、削ったところは透明でしたもんね。それにしても、キラキラしてて本当にきれい。

根本硝子工芸で江戸切子を手にする高城さんの様子を動画でご覧ください。

音楽の道を目指していたけど25歳で転身を決意

ジャージーから衣装に着替えた高城さん。平成生まれで27歳になったばかりの幹大さんと、仕事に関するトークがスタートです。まずは伝統工芸の道を選んだきっかけから。

高城さん 小さい頃から江戸切子の職人になろうと思ってたんですか?

幹大さん いえ、全然(笑)。実は実家を継ごうと修行を始めたのは25歳からなんですよ。

高城さん え~(驚)、そうなんですか。じゃあ、それまでは何をしてたの?

幹大さん 高城さんと同じ、音楽の道を目指していました。大学生の時にプロになろうと決意して、父親には「学費を返すから、やらせてほしい」とお願いしたんです。

高城さん すごいびっくりです。じゃあ、どうして音楽から江戸切子の道に?

幹大さん 25歳を前に「このままでいいのか」って考えるようになって……。ちょうどその頃、祖父が他界したんです。葬儀にはすごく大勢の方が参列してくださった。いろいろな方からお声をかけていただいて、祖父の偉大さや家業のすごさを知ったんです。それでこの道に進もうと考えました。

高城さん 音楽への未練は?

幹大さん 決めたからにはなかったです。ただ僕が抜けた後、仲間はデビューしたんですよ(笑)。

高城さん え~、コメントしにくいなあ(笑)。けど、誰かに言われたわけじゃなく、自分で決めたことですもんね。

幹大さん そう。おやじはむしろ「30歳までは好きなことをやっていていい」といってくれていたんです。でも、30歳、40歳になった自分を考えた時、ここで決めるべきだなって。

高城さん 私は「何歳までに」って考えたことはないけど、今思うとマネジャーさんから「20歳までにある程度のところへいかなければダメだ」といわれていて、その言葉があったから、20歳まではがんばろうって思ってやっていました。

「いやだな。きょうは行きたくない」って思う日もあったけど

ちなみに高城さんの生徒ぶりはいかがでした?

幹大さん 目の前にいるから言うわけじゃなくて、お世辞抜きにセンスがいいなと思いました。普通、初めからあんなに彫れないです。江戸切子体験で彫るのは平らで透明な皿で、グラスよりずっと彫りやすいんですよ。それに色が濃いほど先が見えなくなる。紫は難易度の高い色なんです。

高城さん 褒められると気分がいいですね(笑)。いつも私は自分に自信がなくて……。

たしかに体験する前も「粉々になるかも」と不安そうでした。

高城さん 幹大さんはこの道に入ってから壁にぶつかったことはありますか?

幹大さん それが、今のところ、あまり感じたことがないんですよ。

高城さん いいなあ。私の場合はこれまで決して順風満帆じゃなかったから「いやだな。きょうは行きたくない」って思うこともありました。でも、やらなきゃ何も始まらない。絶対に一日は終わるし、「終わってからイヤだったことを考え直して、解決方法を見つければいいや」って思って現場に行くんです。そうすると、ちょっと良いことがあったりして、いやだと思っていたことも全部チャラになっちゃう。単純なのかな(笑)。色々と経験するうちにメンタルもずいぶん強くなりました(笑)。

幹大さん 年下だけど、その姿勢がすごいなって思いますね。

高城さん いやあ、そういわれると……(と照れる)。

応援してくれる人を思い浮かべるとがんばれる

ももクロメンバーで最年長の高城さん。所属する事務所(スターダストプロモーション)にはほかにアイドルグループがなかったため、仕事は試行錯誤の連続でした。

高城さん 私ってももクロでは一番年上なので、お手本がいなくて分からないことだらけだったんです。たとえば高校に入学してももクロと並行して学生生活を送るのも私が初めて。だから、どういう割合で仕事と学業を両立すればいいのか、どちらを優先すべきか、全然分からなかった。しかも、すぐにブレイクしたわけじゃないから。でも、ライブに来てくださる人たちの顔を思い浮かべると「ここであきらめちゃダメだな」って思うんです。自分の一存でやめたら、がっかりする人がいる、迷惑をかける人がいると思うとがんばれました。

幹大さん 応援してくださる人の立場になって考えるって大事ですよね。実演販売をすることがあるんですが、そこでいろいろなことが見えてくるんです。自分が一生懸命に作ったものを気に入ってくださるお客様がいて、その対価を払ってくださる。それがモノづくりの原点なのかなと。僕はきれいごとで片付けるのはいやだから、江戸切子を商売としても成立させなきゃいけないと思っているんですが、この仕事をやればやるほど、自分が作ったものをいいねと言ってもらうことが基本になければダメなんだと分かってきました。

高城さん ライブも同じ。誠意を持って精いっぱいやることが大事だなってすごく思います。そもそも手を抜くってどういうことか、よくわからない(笑)。

2016年3月に名古屋で開かれたソロコンサートでは、ライブ終演後、2000人の観客をハイタッチで送り出しました。

高城さん でもそれってすごいことなのかな? よくわからない。少しでも誠意が伝わるならやりたい。やりたいからやっているんです。幹大さんがやりたくて始めたことってありますか。

新しいデザインはいつも考えています

幹大さん 新しいデザインはいつも考えています。(一つのグラスを取り上げ)これも僕がデザインした「竹」です。実演販売でも評判が良かったんですよ。

高城さん わあ、これを考えたんですね。体験させてもらったお父様がデザインした「しずく」や、おじいさまの「飛翔」もすてきだったけど、幹大さんの江戸切子は若さが出ている感じがする。例えるなら……国立競技場みたい。古い方も新しい方もどっちもかっこいい、みたいな。言っていること、わかります?(笑)。

幹大さん すごいものに例えてもらって恐縮です。

高城さん このグラスを作るのにこだわったポイントは?

幹大さん デザインの良さはもちろんですが、作品ではなく商品なので、手間や時間をかけすぎてもいけない。そのバランスが難しいですね。

高城さん とはいえ、この曲線のところとか、めっちゃ手間が掛かっていますよね? やったから分かります。全部でどれくらい時間がかかるんですか?

幹大さん 1ダース作るとしたら、最後の工程まで入れて、1週間くらいですね。

高城さん 手間をかけすぎないと言っても、それだけ時間がかかるんだ……。私が削ったグラスも、薬品に浸して光沢を出す工程(酸磨き)があるんでしたよね。仕上がりが今から楽しみです!

江戸切子をもっと広げるにはどうすればいいか

高城さん 幹大さんがこれから挑戦したいことは?

幹大さん すごく現実的な話なんですが、江戸切子をもっと広げていくために、販売方法やルートを開拓していきたいと思っています。昔ながらの、受注して言われたものを作って納品するだけでは、江戸切子の世界は広がらないと思うんです。百貨店などでの実演販売も江戸切子の良さを直接見ていただけるいい機会だと思うので、積極的にやっていきたい。あと、これはまだ実現できていないんですが……。

高城さん どんなアイデアですか?

幹大さん いろいろ多角的な展開ができればいいなと。飲食店を出して、そこで使う食器をすべて江戸切子にするとか。

高城さん 先々のことまで考えているんですね。すごいなあ。すてきなお店ができたら教えてください。いっぱい食べますから!(笑)。

◇ ◇ ◇

次回はお互いの悩み(主に高城さん)、これからの目標などを語り合います。そして紫の江戸切子もいよいよ完成。最終回をお楽しみに。

【今回のおまけ】

前回の最後に出した問題、覚えています? 「この花器、ツボはいくらでしょう?」という問題でした。

「点々を水玉模様みたいに残して削ったすごく手の込んだ作品なんです。そのお値段はというと……ジャーン! 120万円でした」

これは黄綬褒章を受章した先代・幸雄氏が手がけた作品。前述の菊籠目文を全面に彫りあげた芸術的価値も高いものです。過去には同様の模様を施したガラス鉢に200万円ほどの値がついたこともあるとか。

スタッフに持ってみてと言われても、頑として拒否する高城さん。「持ったら絶対に落としちゃうから!嫌です。ダメですってば!」

【いよいよ高城さんが完成品と対面する最終回はコチラ】

ももいろクローバーZ
百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏で構成されるアイドルグループ。2008年5月に結成(当時のグループ名は「ももいろクローバー」)。観客数十人の路上ライブからスタートし、わずか6年で国立競技場ライブを実現。大会場のコンサートと並行して、小さな会場でのライブやユニークなイベントなども積極的に企画、ファンを驚かせ、楽しませている。
高城れに
1993年6月21日生まれ。神奈川県出身。2007年、中学2年生のときにスカウトされ、スターダストプロモーション入り。07年、ももいろクローバーの立ち上げ時から参加するグループ最年長。イメージカラーはパープル。愛称は「れにちゃん」。
ももいろトラディショナル
デビュー当時のコンセプトが実は「和をモチーフにしたアイドル」だった彼女たちが、日本の伝統工芸を学ぶ連載。メンバーが伝統工芸の仕事現場を訪れ、作る過程を勉強し、実際にもの作りを体験。さらにその道で頑張っている同世代の若者と夢や目標を語り合うという詰め込みすぎな企画です。

(文 橘川有子/写真 佐藤久/ヘアメイク なかじぃ=kind/企画協力 佐々木健二=ジェイクランプ)

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