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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。これまでは大手町や八重洲とは一味違った本が上位に並ぶ同店だが、今回はここでも『住友銀行秘史』や『LIFE SHIFT』が売れており、強い本が立地の違いを乗り越えて売れる傾向を示す。その中で1冊、人気弁護士によるコミュニケーションスキルの本がランキング上位に顔を出し、汐留らしいベストセラーになっている。

質問で人間関係を導く

その本は谷原誠『「いい質問」が人を動かす』(文響社)。著者の谷原氏はみらい総合法律事務所代表パートナーを務める弁護士で、テレビにも法律関係のコメンテーターとしてたびたび登場する。仕事の局面からプライベートまで、すべての人間関係に役立つ究極の質問術を伝授するという触れ込みの本だ。

冒頭で著者は駆け出しの頃、質問をしなかったことで依頼人の本当のニーズを把握できず、一人よがりの裁判をしてしまった苦い体験を語る。隣人同士の争いだったため、裁判には勝ったもののその後も紛争が続いたというのだ。自分は何をすべきだったか。そこから本を読みあさり、一つの結論にたどり着いたという。「人を動かすには、命令してはいけません。質問することです。人をその気にさせるには質問することです」。そして20年あまり弁護士としての業務を通じて自らの質問術を磨き上げていく。その質問術を惜しむことなくわかりやすく説いたのが本書だ。

「知りたい情報を楽々獲得する6つのテクニック」に始まり、「聞くだけで人に好かれる『いい質問』」「その気にさせる『いい質問』」など、質問を発すべき様々なシチュエーションごとに章を立てて、細かく質問テクニックを伝授していく構成。章ごとに論点をまとめたチェックシートがついていたり、強調したい箇所には黄色いマーカーがかぶせて印刷してあったり、ちょっとした参考書感覚で読める編集だ。

カーネギーの名著に波及効果も

「2週ほど前にJRの車内広告に掲載されて本が動いた。普通なら広告掲載が終わると売れなくなるが、先週もそのままの売れ行きが続いている」と店長の大城優樹さん。文響社はこれまでも巧みな車内広告でベストセラーを作り出しているが、本書もその戦略がうまくはまった感じだ。

本書には、質問術を模索する中で影響を受けた本としてデール・カーネギー『人を動かす』(創元社)やR・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)などが紹介されている、「そうした関連図書も少しずつ売れている」と言い、旧刊への波及効果も出ているようだ。

『住友銀行秘史』『LIFE SHIFT』 汐留でも勢い

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)住友銀行秘史国重敦史著(講談社)
(2)「いい質問」が人を動かす谷原誠著(文響社)
(3)世界のエリートがやっている最高の休息法久賀谷亮著(ダイヤモンド社)
(3)LIFE SHIFTリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)
(5)やり抜く力アンジェラ・ダックワース著(ダイヤモンド社)

(リブロ汐留シオサイト店、2016年10月31日~11月6日)

『「いい質問」が人を動かす』は2位に食い込んでいる。1位が『住友銀行秘史』、3位が『世界のエリートがやっている最高の休息法』と『LIFE SHIFT』で、このところの強い本に伍して健闘しているといっていいだろう。5位の『やり抜く力』はここでも好調な販売が持続している。

(水柿武志)

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