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トヨタの誤算 なぜVWに首位を譲るのか

2016/11/9

トヨタ自動車のプリウス

 世界新車販売でトップを競うトヨタ自動車と独フォルクスワーゲン(VW)。トヨタグループ(ダイハツ工業、日野自動車を含む)の2016年1~9月期の世界販売台数は前年同期比0.4%増の752万9000台。対してVWは同2.4%増の760万9400台でわずかの差で首位に立っている。しかもトヨタは8日、16年4~9月期の決算発表で16年度の世界販売台数を下方修正した。なぜ世界最強のトヨタが排ガス不正問題に揺れたVWの後じんを拝しているのか。

■変調する北米市場

 「原油安で北米市場が変調している。ライトトラックやSUV(多目的スポーツ車)の比重が60%を超え、乗用車が伸び悩んでいる」。トヨタの伊地知隆彦副社長は8日の記者会見で、冷静な口調でこう話した。

 トヨタにとって最大のマーケットは北米市場。16年3月期は283万台を販売したが、主力車種は「カムリ」「カローラ」そしてハイブリッド車(HV)の「プリウス」など乗用車。プリウスを筆頭に燃費性能の高い車種をそろえるが、原油価格が低迷するなか、異常な勢いで売れるのが米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーターが得意とするピックアップトラックなどの「ライトトラック」だ。いってみればガソリンがぶ飲みの高価格帯の『バブルカー』だ。トヨタもライトトラックを販売しているが、すでに工場の供給が追いつかない状況だ。伊地知副社長は「今年の米新車市場は1740万台程度と前年並みで好調だが、60万台分が乗用車からライトトラックにシフトしている」と説明する。

トヨタ自動車の伊地知隆彦副社長

 このため、トヨタは17年3月期の北米での販売見通しを当初の288万台から282万台に引き下げた。北米ではすでに昨年から、ガソリン安と低金利ローンを追い風に、高価格帯のライトトラック人気が高まっていたが、トヨタの予想以上に拡大したわけだ。16年10月のトヨタの米国でのシェアは13.6%でGM、フォードを下回った。

■中国で販売伸ばすVW

 一方のVW。昨年、米国発の排ガス不正問題に揺れた。しかし、発火点となった米国市場のVWのシェアは1.8%(16年10月)と、もともと低い。トヨタの主力市場は北米、日本、東南アジアの3国・地域だが、VWは中国、欧州、南米。ブラジルなど新興国で苦戦しているが、地元の欧州が好調を維持。さらに依存度が高い中国で、景気減速下にもかかわらず販売台数を10%超増やしている。

 トヨタの北米での誤算と、VWの中国での健闘が両社の明暗を分けた格好だ。「米国市場はバブル的な様相がある、まさかあんなガソリンがぶ飲みの高価格帯の車がこんなに売れるとは思わなかった」(トヨタ幹部)という。旗艦車種のプリウスは日本国内では絶好調で10月の新車販売でもトップに立ったが、米国や中国は当初の期待通りに伸びているとはいえない。

■フルラインアップで環境配慮を強化

 「グローバルベースでのエコカーシフトが早すぎたのでは」(自動車アナリスト)との指摘もある。しかし、伊地知副社長は「年間1兆円を投じて、ガソリン車からHV、プラグインHV、FCV(燃料電池車)、EV(電気自動車)も含めてフルラインアップで地球環境に優しいクルマを次々開発する」と強調する。

 トヨタは16年4~9月期の決算発表にあわせて、17年3月期の世界販売台数を当初の1015万台から1010万台に引き下げた。このままではVWに首位を譲る可能性が高い。しかも円高に苦悩し、業績自体も伸び悩むトヨタ。17年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比33%減の1兆5500億円になる見通しだ。しかし、世界的に環境規制の厳しさが増すだけに、「エコカー強化」という方向性が揺らぐことはなさそうだ。

(代慶達也)

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