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純資産増えると割引 投信の信託報酬に新潮流 投信の保有コスト(上)

2016/11/15

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 老後のために低コストの投資信託で資産形成したいと考えています。運用している間ずっとかかる信託報酬の一部を投資家に還元するファンドがあると聞きましたが、どんな仕組みなのですか。

 ファンド評価会社のモーニングスターによると、国内の株式投信の信託報酬は平均で年率1.42%。指数に連動するよう運用するインデックス型に限定すると0.64%だが、それでもマイナス金利下で投資家の負担は小さくない。

 このため、投信会社はここ数年、コスト意識の高いインターネット取引の顧客らを意識して、信託報酬を安く抑えたファンドを相次ぎ新規設定してきた。

 さらに、ここにきて純資産の大きさに応じて信託報酬を割引して投資家に還元するファンドが増えている。三井住友アセットマネジメントが9月に設定した「三井住友・DC日本リートインデックスファンド」など2本は、純資産が200億円、500億円、1千億円を超えると、それぞれ超えた分について信託報酬が0.01%ずつ下がる。

 三菱UFJ国際投信も10月までに「eMAXIS」シリーズのインデックス型投信31本のうち20本について、純資産が500億円、1千億円を超えると、超えた分について信託報酬を0.02%ずつ下げる仕組みを導入した。残る11本も「年明け以降、目論見書の更新タイミングに合わせて順次、同じ仕組みに変更する予定」(同社)という。

 投信会社のビジネスは、ファンドマネジャーの人件費やシステムの維持管理コストなど固定費が占める割合が大きい。このため、ファンド純資産が大きくなって損益分岐点さえ超えれば、その後は収益がぐっと大きくなる。その分を信託報酬の割引で投資家に還元するわけだ。

 こうした低コストのインデックス投信には、少額投資非課税制度(NISA)や確定拠出年金(DC)などを通じて安定的な資金流入が期待されている。純資産が200億円、500億円といった規模に膨らみ、信託報酬の割引が適用される可能性はありそうだ。

 アクティブ型の投信にも信託報酬の一部を投資家に還元するファンドがある。例えばレオス・キャピタルワークスの「ひふみプラス」は純資産が500億円、1千億円を超えると、超えた分の信託報酬が0.1%ずつ下がる。この割引原資は同社だけでなく、販売会社も折半で負担している。純資産は昨年8月に初めて500億円を超え、現在は1千億円に近づいている。

 マイナス金利下で資産運用の期待リターンが下がる中、毎月少額ずつ積み立て投資するような長期投資家はコスト意識をますます強めている。しかし、投信会社にとって単純な信託報酬の引き下げ競争は経営上のリスクになりかねない。

 三井住友アセットマネジメントの伊木恒人・執行役員は「ファンド純資産に応じて割引をする方式なら投資家と『ウィンウィン』の関係を構築できる。これから主流になるのではないか」とみている。

[日本経済新聞朝刊2016年11月9日付]

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