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フラット35、全期間固定型では民間有利な場合も

2016/11/12

 住宅金融支援機構が手掛ける全期間固定型住宅ローン「フラット35」に関心が高まっている。いま契約すれば完済まで超低金利の恩恵を生かせるうえ、より低い金利が売り物だった民間の変動型との金利差が大幅に縮小しているためだ。ただ条件によっては民間の全期間固定型が有利な場合もある。自分に向くローンを慎重に選ぼう。

 都内で新居購入を検討中の主婦Aさん(40)。会社員の夫と頻繁に話し合うのが住宅ローンの金利タイプだ。以前は半年ごとに金利を見直すのが一般的な変動型を考えていたが、フラット35の金利低下をみて「全期間固定型に2人とも傾き始めた」と話す。

 フラット35に関心を持つ人が増えている。融資実績の伸びは2月のマイナス金利導入をきっかけに弾みが付き、7~9月は前年同期比58.5%増の約9001億円に達した(グラフA)。

 急増している背景には変動型との金利差が縮小していることがある。住宅ローンは通常、期間が長いほど将来の返済リスクなどが見通しにくくなるため、固定型の金利は変動型を上回る。しかし両者の諸費用を含めた実質的な金利差は、今年に入って急速に縮小。8月には0.5%を一時下回り、過去最低を更新した(グラフB)。住宅ローンのコンサルタント会社、ホームローンドクター(東京・中央)の淡河範明代表は「将来の金利上昇リスクのある変動型を選ぶ意味は大幅に低下した」と話す。

 一方、民間銀行が独自に手掛ける全期間固定型の金利も低下している。例えば三菱UFJ信託銀行は10月、最優遇金利を年1.02%とフラット35の主力の最低金利を下回る水準に下げ、11月も据え置いた。金利上昇リスクを避けて借りたい人にとっては選択肢が豊富になっている。

■原則年払い負担

 フラット35と民間銀行の独自ローンを比べる際は、金利以外の諸費用に注意する必要がある。ファイナンシャルプランナー(FP)の久谷真理子氏は「少なくとも事務(融資)手数料、保証料、団体信用生命保険(団信)の3つに注目しよう」と助言する。

 民間銀行の独自ローンは一般的に手数料と保証料がかかる一方、団信の「保険料」に当たる費用はない。フラット35では保証料は不要だが、融資手数料は取扱金融機関ごとに差があり、さらに団信の費用は返済額とは別に原則年払いで負担する。諸費用の総額は意外に大きい。

 例えばフラット35(借入期間21~35年、融資率9割以下)と三菱UFJ信託銀行の35年固定を比べてみよう。フラット35の金利は年1.03%と三菱UFJ信託銀を0.01ポイント上回るだけだが、諸費用を含めた総支払額は200万円あまり多い(図C)。「信託銀などの融資審査は通常厳しく、最優遇金利で借りられる人は限られる」(淡河氏)が、条件に合う人なら選択肢になりそうだ。

 ただしフラット35でもより低い金利で借りられる商品が登場している。5月に日本住宅ローン、10月にアルヒが「保証型」と呼ぶ独自のフラット35を相次ぎ投入したからだ。両社とも住宅購入価格の80%までの融資(自己資金20%以上)を条件に低い金利を適用する。

 11月の適用金利はアルヒが通常のフラット35より0.1%低い年0.93%。日本住宅ローンは積水ハウス、大和ハウス工業など提携企業からの住宅購入・建設時のみ使えるローンだが、金利は同0.17%低い年0.86%(手数料先払方式)だ。いずれも団信加入時は0.3%の金利を上乗せする必要があるが、通常のフラット35の団信より負担額を小さくしているため、両社とも諸費用込みの総支払額は少なくなる仕組みだ。

■性能向上で適用

 保証型は一定の性能基準を満たす住宅に使える「フラット35S」や中古住宅に性能向上リフォームをすると適用になる「フラット35リノベ」という金利優遇制度とも併用できる。10月に始まったリノベは最長10年、年0.6%も金利が低くなる。アルヒの「保証型」でリノベを併用すると最大10年間は年0.33%、団信込みでも0.63%と大手銀行の変動型並みの低金利になる。日本住宅ローンは対象の提携先住宅メーカーが新築を主力としているため中古専用のリノベは併用しにくいが「Sを併用する例は非常に多い」(同社)という。

 ただ保証型にも注意点がある。例えば頭金は購入価格の20%以上という条件。自己資金を手厚く用意し、融資額を抑えるのは堅実なようにみえるが、淡河氏は「頭金20%を捻出すると預金がほぼゼロになるような人は、利用を避けた方がいい」と話す。

 借り入れ直後に重い病気や失業などで収入が大幅に減ると、家計が行き詰まりかねないからだ。住宅ローンを選ぶ際は貯蓄と住宅購入の総費用のバランスをよく考えることが欠かせない。(堀大介)

■フラット35保証型 柔軟な商品設計
 フラット35は現在、買い取り型と呼ばれるタイプが主流。住宅金融支援機構が民間金融機関の住宅ローンを買い取り、証券化して機関投資家に販売する。ローンの中身がバラバラでは証券化商品にできないので、金利や融資手数料以外の商品性は、どの金融機関でも同じになる。
 一方、保証型は各金融機関が証券化し、機構は万が一の返済不能に備えた保険を引き受ける。基本的な商品設計は各金融機関がするため、工夫する余地が大きい。保証型はリーマン・ショックの余波などで2014年から扱いが停止していたが、超低金利を背景に保証型が増え、商品内容も多彩になる可能性がありそうだ。

[日本経済新聞朝刊2016年11月9日付]

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