変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

30代半ば以降のビジネスパーソンが転職しようとすると、やはり「マネジメント」の経験を問われるケースが大半です。しかし、一口に「マネジメント」といっても、対象とする層や手法はさまざま。求められるマネジメントスタイルは、時代に応じて変化しています。昨今、求められているのは、どんなスタイルのマネジャーなのでしょうか。

今、求人市場で求められている「マネジャー」はどんなタイプか?

マネジメント人材に求められる要素は、もちろん会社の経営戦略、組織の状況、社風などによって多様です。しかしながら、最近、マネジメントクラスの人材募集を行っている企業からの要望をお聞きしていると、ある傾向が見てとれます。「キーワード」としてよく挙がってくるのは次のようなものです。

●「サーバント型」のマネジメント

しばらく前までは「俺の背中を見て、黙ってついて来い!」「俺のやり方を見て盗め!」といったタイプのマネジャーが多く見られました。しかし、現在では、その手法が通用しづらくなっているようです。

イマドキの若手のマネジメント手法として有効と目されるのが「サーバントリーダーシップ」。これは、米国のロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱した概念で、「奉仕こそがリーダーシップの本質である」という考え方です。

リーダーはビジョンや目標を示し、メンバーは自分ならではの考えや強みを生かしてその実現に取り組む。そんなメンバーに対し、リーダーは「奉仕」し、目標達成を支援する――それがサーバント型のマネジメントスタイルです。

若手がモチベーションを上げ、主体性を持って仕事に取り組めるようにするには、こうしたマネジメントスタイルが有効であるという考え方が浸透しつつあります。そこで、マネジャーを募集する際、このキーワードを挙げる企業が増えているのです。

この先、マネジメントポジションでの転職を考えている方は、今のうちからこのスタイルを意識的に取り入れて、「成功体験」をつくっておいてはいかがでしょうか。転職活動を始めた際、志望する企業が求めているのが「サーバント型マネジャー」だった場合、プラス評価を得られる可能性があります。

では、サーバント型マネジメントを実践するには、まずどうすればいいのでしょうか。それはごくシンプルです。一人ひとりのメンバーと「じっくり話し合う」ということです。対話によって、そのメンバーの「モチベーションの源」「仕事や人生において大切にしている価値観」「描いているキャリアビジョン(将来どんな自分になりたいか)」といったことを引き出します。

あとは、それを尊重し、それを実現できるような仕事を任せます。もちろん、実行のプロセスで壁にぶつかることがあるでしょうから、そのときに助け舟を出し、目標達成を「サポート」してあげる。それによってメンバーが業績を挙げたり成長を遂げたりすれば、「サーバント型マネジャー」としての実績となるでしょう。

●チームビルディング

営業部門などは特に、一人ひとりのメンバーが「個人プレー」で業績を挙げているような組織もあります。そうした組織をマネジメントしていた人よりも、「チームワーク力」を高めるようなマネジメントで実績を上げてきた人のほうが、高く評価される傾向が見られます。つまり、チームワークを重視する企業が増えてきているということです。

その背景にあるのは、ビジネスモデルやプロジェクトの利害関係の複雑化。近年は、社内の複数の部署が連携して、あるいは他社と提携して推進するプロジェクトが増えています。つまり、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと目線を合わせ、目標やビジョンを共有して取り組まなければならない場面が頻繁にあります。

そうした局面では、さまざまな人に協力してもらう「巻き込み力」が必要。チームビルディングを行い、関わるメンバー全員のモチベーションを高めながらプロジェクトマネジメントができる人が求められているというわけです。

●女性のマネジメント

政府が掲げる「女性活躍推進」の施策を受け、多くの企業が女性の活躍度アップ、管理職率のアップに取り組んでいます。そこで、これまで以上に女性のマネジメントにたけた人材が求められるようになってきました。しかも、従来ありがちだった「気配り」「優しさ」といった接し方ではなく、女性メンバーのキャリア意識を高め、能力を引き出し、次のステージに引き上げるような導きができるマネジメントが重要になっています。

そのように女性のキャリア構築をサポートできるマネジャーは、今後ますますニーズが高まりそうです。女性のマネジメントのスキルや実績を身に付けておけば、今後の転職活動で大きな武器になるでしょう。

●変化対応力

近年の転職市場においては、特定の部署で「スペシャリスト」として長く在籍したマネジャーよりも、「ゼネラリスト」としてさまざまな職場でのマネジメントを経験してきたマネジャーのほうが、高く評価されています。

これはマネジャーに限ったことではありませんが、部門異動や子会社出向、海外駐在、あるいは転職など、「大きな環境変化」という苦難を乗り越えてきたビジネスパーソンは、メンタル面が鍛えられていて、変化に対して柔軟に対応できると考えられているからです。

ビジネス環境の変化のスピードが速く、経営戦略が短期スパンで見直される時代。組織体制の変更、新規事業分野への進出、他社との提携、M&A(合併・買収)など、状況が大きく変化する頻度が高まっているといえます。そうした中で、マネジメント人材に対しても、「変わるのは当たり前のこと」と捉え、新たなチャレンジに意欲的に取り組む姿勢が求められているのです。

これまで1つの組織のマネジメントしか経験してこなかった方であれば、あえて手を挙げて、上記のような環境変化の異動を経験しておくのも有効です。いずれ転職に臨む際、人材としての「市場価値」が高まっているはずです。

以上、ご自身に足りていないと感じるものがあれば、意識して経験を積むようにしてみてはいかがでしょうか。今の会社ではできない場合、社外での社会活動――例えば団体の委員や理事、NPO法人の支援、社会人サークルの運営といった場で実践してみるのも有効です。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は11月25日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長
森本千賀子(もりもと・ちかこ)
リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント
1970年生まれ。独協大学外国語学部英語学科卒業後、93年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、つねに高い業績を上げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。
 2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNo.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』(大和書房)、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣』(日本実業出版社)、『後悔しない社会人1年目の働き方』(西東社)など著書多数。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック