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人口49人 瀬戸内海「アートの島」を行く

2016/11/14

■製錬所跡地が美術館に

跡地の周辺では、歴史の世界に迷い込んだような錯覚を覚える

「そして、アートだけが残りました」。島のある人の言葉だ。壊す費用もなく残されていた製錬所の跡地が、福武財団により「犬島精錬所美術館」として生まれ変わったのは2008年。青い空にそびえる高さ30メートル以上の煙突、城塞を思わせる赤いレンガ造りの壁と、足元の緑のコントラストは映画の世界に迷い込んだ気分になる。この美術館は、瀬戸内出身の建築家である三分一(さんぶいち)博志氏が、製錬所の遺構を生かして設計した。現代美術作家の柳幸典氏による、三島由紀夫をモチーフにした作品を楽しむことができる。

新たなアートスポットを目指す「犬島くらしの植物園」

犬島精錬所美術館に続き、もう一つ、かつての産業の跡地が芸術作品として生まれ変わりつつある。フラワーデザイナーの木咲豊氏、ガーデンプランナーの橋詰敦夫氏の2人組ユニット「明るい部屋」と、建築家の妹島和世氏がプロデュースする「犬島くらしの植物園」だ。長く使われていなかったガラスハウスを中心に、4500平方メートルの土地を再生させるこのプロジェクトは、今年10月8日にオープンした。

ここでは寄せ植え作りなどのワークショップ開催や、野生生物の生息するビオトープ作りを始めている。もともと東京を拠点に活動していた「明るい部屋」の2人は、16年に犬島に拠点を移し移住した。橋詰氏は「1年、2年といわず毎年訪れて自分たちの小さな庭を作る気持ちで訪れてほしい」という。瀬戸内に浮かぶ小さな島に、秘密の庭が育っていく楽しみが生まれつつある。

「犬島くらしの植物園」を運営する木咲豊さん

犬島には犬島「家プロジェクト」といった美術施設を含め、再生した古民家がたくさんある。「明るい部屋」の2人に限らず、この島の魅力にひかれ、移住した若い世代も出てきた。UkiCafe(ウキカフェ)を営む乙倉慧さんも移住組の一人だ。カフェの縁側に座り、広い庭を眺めていると時がたつのを忘れそうになる。

■若者が戻ってきた豊島

犬島からフェリーで40分ほどで行ける豊島(てしま)もおすすめだ。西沢立衛氏と内藤礼氏による「豊島美術館」(香川県土庄町)は一見の価値がある。

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