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人口49人 瀬戸内海「アートの島」を行く

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NIKKEI STYLE

700を超える島々がうかび、ゆるやかな時間が流れる瀬戸内海。今月6日まで開催された「瀬戸内国際芸術祭2016」で拠点となった島のひとつに、本州側から10分の「犬島」(岡山市)がある。芸術祭をきっかけに瀬戸内海の島々の魅力にはまり、その後も繰り返し訪れては島の人々と交流を深める人たちも多い。自然とアートが融合した島の魅力をみてみよう。

歩いて一周できる

犬島は本土の岡山市の宝伝港から定期船で10分ほどの場所に浮かぶ小さな島だ。犬島の周りには、犬ノ島、地竹の子島などの小さな島々があり、あわせて犬島諸島と呼ばれている。唯一の有人島である犬島も、周囲約4キロ、面積0.54平方キロと歩いて一周できてしまうほどの大きさだ。

船が島に近づくにつれ、赤茶色の巨大な煙突が見えてくる。明治時代に建てられた銅製錬所の遺構だ。もともと石切り場として栄えていた犬島は、製錬所ができたこともあり、一時は5000人から6000人が集まるにぎやかなエリアとなった。しかし、1919年に精錬所は閉鎖され、人口は激減。昭和に入り資源大手の日本硫黄が工場を建てたものの、会社の解散とともに工場も閉鎖された。その後、香料大手の曽田香料(東京・中央)も工場を建設するが、現在では撤退している。

企業の撤退とともに人々も立ち去り、現在の人口はわずか49人(2016年9月末時点)。小学校と中学校をかねていた「犬島学園」も1991年に廃校となった。子育て世代は島を去り、65歳以上の人口が7割を超えて、島に残る人たちは時折、「文字通りの限界集落です」とつぶやく。

製錬所跡地が美術館に

「そして、アートだけが残りました」。島のある人の言葉だ。壊す費用もなく残されていた製錬所の跡地が、福武財団により「犬島精錬所美術館」として生まれ変わったのは2008年。青い空にそびえる高さ30メートル以上の煙突、城塞を思わせる赤いレンガ造りの壁と、足元の緑のコントラストは映画の世界に迷い込んだ気分になる。この美術館は、瀬戸内出身の建築家である三分一(さんぶいち)博志氏が、製錬所の遺構を生かして設計した。現代美術作家の柳幸典氏による、三島由紀夫をモチーフにした作品を楽しむことができる。

犬島精錬所美術館に続き、もう一つ、かつての産業の跡地が芸術作品として生まれ変わりつつある。フラワーデザイナーの木咲豊氏、ガーデンプランナーの橋詰敦夫氏の2人組ユニット「明るい部屋」と、建築家の妹島和世氏がプロデュースする「犬島くらしの植物園」だ。長く使われていなかったガラスハウスを中心に、4500平方メートルの土地を再生させるこのプロジェクトは、今年10月8日にオープンした。

ここでは寄せ植え作りなどのワークショップ開催や、野生生物の生息するビオトープ作りを始めている。もともと東京を拠点に活動していた「明るい部屋」の2人は、16年に犬島に拠点を移し移住した。橋詰氏は「1年、2年といわず毎年訪れて自分たちの小さな庭を作る気持ちで訪れてほしい」という。瀬戸内に浮かぶ小さな島に、秘密の庭が育っていく楽しみが生まれつつある。

犬島には犬島「家プロジェクト」といった美術施設を含め、再生した古民家がたくさんある。「明るい部屋」の2人に限らず、この島の魅力にひかれ、移住した若い世代も出てきた。UkiCafe(ウキカフェ)を営む乙倉慧さんも移住組の一人だ。カフェの縁側に座り、広い庭を眺めていると時がたつのを忘れそうになる。

若者が戻ってきた豊島

犬島からフェリーで40分ほどで行ける豊島(てしま)もおすすめだ。西沢立衛氏と内藤礼氏による「豊島美術館」(香川県土庄町)は一見の価値がある。

船着き場からバスで30分ほどの場所にある「豊島美術館」は、水滴のような形をした建物。海を臨む丘の周りには、耕作放棄地だった棚田が再生された「豊島唐櫃 棚田プロジェクト」が進んでいる。海をのぞむ緑の田畑を眺めたり、港のそばで自転車を借り海風に吹かれながら坂道をこいだりするのも爽快だ。

豊島も「アート」によって違う顔を見せ始めた島だろう。美術館をはじめ観光業がさかんになるにつれ、若者が少しずつ戻ってきたからだ。芸術祭の時期は国内観光客も多いが、ふだんは「8割言葉がわからない」と感じるほど、外国人観光客が多い。豊島出身の川崎奨太さんは、日ごろ高松市で仕事をしながら、芸術祭の時期になると島に戻ってくる一人だ。

「もともと頑固でよそ者を受け入れない風土があった。少しずつ町は変わってきていると思う。特に芸術祭の時期は、島で育った仲間とどんちゃん騒ぎ。これまでは考えられなかったのでうれしい」(川崎さん)

「瀬戸内時間」に癒やされる

犬島でのんびり過ごす場合はもちろん、豊島経由で戻っても東京から新幹線で1泊2日の旅程だ。米コンデナスト・トラベラーに「次に見るべき世界の7カ所」で紹介され、世界的に有名になった「ベネッセハウス」を擁する直島(香川県直島町)へも、犬島から船で1時間ほど。ゆっくりとした時間、というニュアンスで「瀬戸内時間」という言葉が生まれるほどおだやかな時間の流れるアートの島々。女性が一人訪れても、いつまでもいられるカフェも増え始めた。少し都会に疲れたとき、週末に少し遠出してみてはいかがだろうか。一時は人々が立ち去った島々。しかし、今ふたたび自然と産業とアートが溶け合い、新たな顔を見せ始めている。

◆犬島精錬所美術館
岡山県岡山市東区犬島327-4
開館時間:10:00 ~ 16:30
休館日:火曜日(3月1日~11月30日)
    火曜日から木曜日(12月1日~2月末日)
鑑賞料金:2,060円
※犬島「家プロジェクト」、シーサイド犬島ギャラリーと共通
※15歳以下無料

◆UkiCafe(ウキカフェ)
岡山県岡山市東区犬島293
営業時間 10:00~17:00
火曜定休

◆豊島美術館
香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607
10:00 ~ 17:00(3月1日 ~ 9月30日)
10:00 ~ 16:00(10月1日 ~ 2月末日)
休館日:火曜日(3月1日~11月30日)
    火曜日から木曜日(12月1日~2月末日)
鑑賞料金:1,540円
※15歳以下無料

(松本千恵)

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