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スマホを断つ! 鎌倉で脱デジタル依存の旅

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NIKKEI STYLE

フェイスブックなど交流サイト(SNS)やメールでやりとりするかたわら、ニュースをこまめにチェック。地図アプリで場所を確かめ、気になることがあればすぐ検索。寝相を監視しベストタイミングで起こしてくれる目覚ましアプリまで使っている筆者は、今や24時間365日、スマートフォン(スマホ)と"一心同体"状態だ。確かに便利だが、用がなくてもつい画面を開いてしまうなど、一抹のむなしさや疲れを感じることもある。半日スマホを持たずに鎌倉を散策する「デジタルデトックス(解毒)ツアー」があると聞き、参加してみた。

デジタル機器をすべて預ける

雨上がりの日差しがまぶしい10月下旬。朝9時半に集合場所の鎌倉駅東口に向かうと、ガイド役の宇治香さんと、ツアーを主宰する株式会社Ridilover(リディラバ)の武村佳奈さんが出迎えてくれた。鎌倉で生まれ育った宇治さんは、市民の創意と工夫で持続可能なまちづくりに取り組む「トランジション・タウン鎌倉」も主宰する、地元の生き字引のような人。デジタルデトックスツアーも、「よりよい地域と暮らし」を見つめ直す手法の一つとして考えられたようだ。

7人の参加者が集まると、さっそくスタート地点となる本覚寺へ移動。ここで宇治さんがプログラムのあらましを説明する。

この日の参加者はたまたま筆者以外の全員が20~30代の女性。「スマホべったりの姿を子供に見られてる」ことに不安を感じるという都内在住の女性は、「スマホ依存がひどい。会議中もずっといじっている」という会社の後輩を誘い、有給休暇をとって参加した。2人ともにこにこ笑っているけれど、1日デジタルから離れてリフレッシュしたいという気持ちの真剣さは伝わってくる。関西の大学生や、中国地方から首都圏観光に来た人など、遠方からの参加者も。誰もがありきたりの観光ではない「経験」を求めている。

自己紹介が終わったところで、重大な儀式がある。参加者全員のスマホをはじめとするデジタル機器をすべて主宰者のバッグに預け、解散まではお返ししませんという宣告が下される。「写真を撮りたくなったら心のシャッターを押し、心のフィルムに焼き付けましょう」

検索して確かめたくなるけれど

「源頼朝"先輩"が鎌倉に幕府をつくった理由は……」「なぜ相模湾は海藻の種類が豊富かというと……」「鎌倉には日本初のナショナルトラスト運動と、古都保存法発祥の地があって……」。宇治さんの話は本覚寺の縁起、植物の名前の由来、鎌倉の歴史や生態系、コミュニティーの環境への取り組みなど、とどまることがない。

山門を出て一行が歩くのは、鶴岡八幡宮の参道の東。参拝客や観光客がいっぱいの参道とは打って変わって、昔ながらの風情がところどころに残る、静かな住宅街の道だ。川を通りかかると、鎌倉に数多くの川が流れていて、そのいくつかに蛍が戻ってきた経緯を、背の高い立派な生け垣のある住宅の前で立ち止まっては、そのサンゴ樹が防火の役割も果たしてきたことなどを、ユーモアやクイズを交えて説明してくれる。

こんな面白い話を聞いていると、ついスマホで検索して確かめたくなるのが、いつもの自分。もしそれをしていたら、宇治さんの話は半分も聞けていなかっただろう。なるほど、傾聴というのはこういうものだったと、宇治さんの話をかみしめる。

道行く地元の人とあいさつを交わし、コケや地衣類と共生する古木を見上げながら角を曲がり、ふと気づくと山が迫る狭間に立つ妙本寺の本堂へと続く階段にさしかかっていた。後ろから「ここは鎌倉駅からまっすぐ来れば5分くらいのところです」と宇治さんの声が聞こえる。

この寺では、本堂の横の回廊に腰を下ろして、揺れる木漏れ日を前に、10分ほど瞑想(めいそう)タイム。目は開けても閉じてもいい。スマホの画面ではなく自分と向き合い、この場の雰囲気を五感で感じてみる。「音は意識しないと聞こえてきません」という宇治さんの言葉どおり、耳を澄ますと小鳥のさえずりや周囲の参拝客の会話、かすかな葉擦れの音が聞こえてくる。

見えるもの、聞こえるもの……身の回りにあるものを再発見

妙本寺の背後に迫る山の尾根道はハイキングコースになっていて、ツアーは山歩きに突入していく。登り口付近で鎌倉の隠れた文化遺産である「やぐら」と呼ばれる武士や僧侶の墓の説明に聞き入っていると、見知らぬ女性が「宇治さん!」と声をかけてきた。にっこり応えてひとしきり世間話をして女性を見送った宇治さん。参加者を振り返って、「彼女はこれから歩くハイキングコースを通勤路にしています」という。

通勤に使うくらいなら、きっと簡単に歩ける道だろう。参加申込時に受けた「歩きやすい靴で」という注意は、「念のため」の話に違いない。そう思いながら向かった山道で、この予断は覆される。

道は細く、急斜面。むき出しになった木の根が足場になって助けてくれるものの、基本的には未舗装どころか土そのもの。おまけに昨夜までは雨。ボルダリングほどではないにせよ、よくよく考えて足を運び、つかまることができる木を探しながら進まなければ、草木の茂る斜面に転げ落ちてしまうかもしれない。

こんな道を歩くのは泥んこまみれで遊んだ子供時代以来。女性はこういうところは苦手だろうと思いきや、いやいやみなさん黙々と、しかし力強く登っていらっしゃる。尾根まで登り切ると、さすがに笑顔はあまりないけれど、表情に達成感はみなぎっている。

尾根道の少し広場になった辺りで宇治さんの言う「あるもの探し」を開始。自分の周りの目に見えるもの、聞こえるもの、匂うもの、「これ何だろう」というものに意識を向けて、よく観察したり触れてみたりするのが「あるもの探し」。変わったものを見つけると、また宇治さんが解説してくれる。

さらに尾根道を進んでいくと小高くなった場所に「展望台」の札。そこに立つと景色を隠していた木々より目線が高くなって、由比ヶ浜と稲村ヶ崎を一望できる。その日は雲がかかっていたけれど、日によっては富士山がくっきり見えるという。

いや、富士山は見えなくてよかったかもしれない。その分、鎌倉市街に目がいったから。

人に尋ねながら目的地を探す

山道を下りると、そこは八雲神社という神社の本殿の脇だった。あえて打ち明けると、境内に抜け出た瞬間、なぜか自分が鎌倉の山にすむオバケか何かになって、「バァ!」と下界に飛び出した気分になった。もう、気持ちはすっかり子供である。

ここで宇治さんから、この日のクライマックス、最後のミッションが伝えられる。ツアーの最初に配られた宇治さんの手描きの地図を見ながら、地元のおいしいおにぎりやパンを探して買い求めて、「○○会館」という建物に集合する、という。

この地図に、おすすめのお店はいくつか記してある。が、肝心の「○○会館」は描かれていない。いつもならまずスマホの地図アプリを起動するところ。だがきょうは「地域の人に尋ねて教えてもらってくださいね」とほほ笑む宇治さん。

そこで改めて思った。スマホがなければ、私たちはもっと五感を働かせる。それがこの八雲神社に来るまでの行程でしっかり実感できた。さらに、スマホがなければ、私たちはもっと、目の前にいる人と話しができる。コミュニケーションができるのだ。

最後の「探検」は2人1組で。このチームでも言葉を交わす。「こっちへ行ってみましょうか」「あの店もチェックしてみたいですね」。そして、買い物をしたお店で、「ところで、『○○会館』に行くには……」とおそるおそる聞いてみる。反応はさまざま。言葉に加えて、店先に出て身ぶり手ぶりを交えて説明してくれる人。地図上を指でなぞって見せてくれる人も。

その指先を見ながら、そうそう、私たちは生きている人の横で生きていたんだ。そんな実感がじんわりこみ上げてくる。ありがとうございますと頭を下げながら、そのあいさつは、きょうたくさんのことを教えてくれた鎌倉の街や自然にも。たどり着いた「○○会館」で買って来た鎌倉の味をほおばり、その日の印象を全員で一枚の布に描きながら、その気持ちを確かめる。

「スマホがないと気が狂いそうになるんじゃないかと心配したけど、なくても大丈夫なんだと分かって安心した」「スマホに限らず、何かに夢中になりすぎると、大切なものを見過ごしたり、おろそかにしてしまったりすることがあるのではないかと思った」。誰もがスマホとの付き合い方や日々の生活を見直す必要性を感じたようだ。

解散は午後3時すぎ。約6時間のプログラムとは思えないほど、たっぷりの見聞とたっぷりの頭の体操をして鎌倉駅を後にした。

(ライター 斎藤訓之)

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