初めての投資、一気買いは「アレルギー」のもとファイナンシャルプランナー 風呂内 亜矢

2016/11/11

美味しいお金の話

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私はフルーツ大国、岡山県の出身なのですが、実はアレルギーが出るためいくつか食べることができない果物があります。アレルギー体質の人には初めて口にする食材は、まず少量だけ食べて身体の反応がないか確認し、その後に本格的に食べるという人も多いのではないでしょうか。一見、お金と関係なさそうなこちらの話も、実はお金の話と似たところがあります。

集中投資は禁物

以前、2000万円の貯蓄を一度に投資信託の購入に充てたという人にお目にかかったことがあります。今では評価額が800万円まで下がってしまったと落ち込んでいて、もう投資は懲り懲りだと話していました。

この方は40代の男性でしたが、定年退職したばかりの方が退職金を使って初めて投資にチャレンジし、同じような事態に陥ってしまう話もよく耳にします。

まとまったお金が手元にできると、預貯金だけにしていることがもったいないように感じてしまう方が多いのでしょうか。しかし、まとまった大金をいっぺんにひとつの金融商品に投じると、大きな損を抱えやすくなります。

投資を行う際は少額ずつ、時期や商品を分けて試してみて、合いそうなものについて金額を増やしていくという方法がお勧めです。食べ物でいうと自分にアレルギー反応をもたらすものでないか、まず一口食べて、大丈夫そうであれば少しずつ食べる量を増やすことに似ています。

コツコツ買いで損失軽減

仮に「日経平均」という銘柄があったとすると、2007年7月31日の日経平均株価の終値は1万7248円でしたので、約2000万円あれば1160口(2000万円÷1万7248円)程度購入できます。09年2月末の日経平均の終値は7568円なので、購入した1160口をそのまま持っていた場合、評価額は約880万円(7568円×1160口)まで下がります。私がお話を聞いた方は、もしかしたらこの時期に購入されたのかもしれません。

では、一気に2000万円を投じるのではなく、同じ期間に毎月100万円ずつ分割して購入していたとしたらどうなるでしょうか。毎月同額を購入する場合、株価が高いときはたくさんの口数が買えず、株価が低い時には購入できる口数が増えます(グラフ)。

例えば、100万円分購入すると決めるなら、株価が1万円であれば100口、株価が5000円だと200口を購入することになります。

07年7月末日から09年2月末日だとちょうど20カ月なので、毎月100万円分購入した場合の投資額は2000万円になります。毎月月末に日経平均を終値で購入したと仮定すると、取得できる株数は約1654口。09年2月の終値で計算すると評価額は約1250万円となります。

日経平均は右肩下がりだったため、運用としては辛い時期でしたが、一括購入に比べると損失を約370万円(約1250万円-約880万円)軽減することができました。

このように一定額を買い続けて平均取得単価を調整する方法を「ドル・コスト平均法」といいます。一定額をコツコツ買い進めていくことで、割高なときには少ない株数を、割安なときには多い株数を自動的に取得することができます。大きく損をする可能性を軽減できるため、初めて投資をする人や、長期間じっくりと資産形成をしたい人に向いた投資方法といわれています。

2000万円が800万円になってしまった男性も、一度にまとまった金額を投じるのではなく、少しずつ様子を見ながら買い足していったとしたら、ダメージを軽減できたかもしれません。

そもそも、少しずつ買い足す投資手法をとっていれば、株価が下がり続けている状況に不安を感じたときは、一時的に毎月の購入を中断することもできます。初めて取り組む金融商品に対して一気に勝負をしてしまうと、こうした調整ができません。

ちなみに今回のケースでみた「日経平均」を16年9月末まで保有し続けて売却したとします。1160口を一気に取得したケースでは評価額が約1900万円、20カ月間コツコツと買い進んだケースでは約2700万円になります。一括で購入したケースではまだ約100万円の損失が残っていますが、少しずつ買い足したケースは約700万円の利益が出るのです。

自分にとって新しい金融商品を試す場合は少しずつ小分けにし、さじ加減がわかってきてから増額する。自分を守るコツといえるので、ぜひ心に留めておきましょう。

(※文中の金額は手数料・税金などを省略した概算です)

風呂内 亜矢(ふろうち・あや) 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士。26歳でマンションを購入したことをきっかけにお金の勉強を始める。2013年ファイナンシャルプランナーとして独立。著書に『その節約はキケンです―お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか―(祥伝社)』『デキる女は「抜け目」ない(あさ出版)』などがある。管理栄養士の資格も持つ。公式サイトhttp://www.furouchi.com/
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