あなたの年金を増やす 今からできる3つの方法公的年金をマネーハック(1)

毎年11月は厚生労働省の「ねんきん月間」ということで各種啓発活動が行われています。本連載もこれにちなんで「公的年金をマネーハック」してみたいと思います。

おそらく公的年金制度といえば不信や不安の対象だと思いますが、ちょっと発想の転換をしてみれば、国の年金もそう悪くないものと思えるようになるはずです。

年金額を決めるのは自分自身

国の年金制度は自分自身がどうこうできるものではなく、常に改悪され続けていくものだと多くの人が考えていると思います。しかし、そういう受け身の発想をしてしまうときこそ、マネーハックを効かせるべき局面です。

最初の週に考えてみたいのは、「年金額を決める要素」です。

実は、年金額を増やすことができるかどうかは、自分自身の年金制度とのかかわり方で決まります。

他人事として考えてしまうのが年金に対する誤解の要因となっています。受け身ではなく、自分のかかわり方によって主体的に年金額を変えていくことができるはずです。

将来の年金額を増やす方法

公的年金のもらえる金額を増やしたいと思う人は、3つのアプローチを考えてみるといいでしょう。キーワードは「厚生年金制度に加入すること」「加入する期間は長いほどいいこと」「保険料は多く納めること」の3点です。

(1)厚生年金制度に加入すること

働き方によって加入する公的年金制度は異なります。このとき、国民年金に入るか厚生年金に入るかは将来の年金額をまったく違うものとします。

国民年金のみに加入している場合、満額受給できたとしても月7万円になりません。これでは年金だけで老後をやりくりすることは不可能です。しかし厚生年金に加入している場合、月16万~17万円くらいが標準的な年金額となっており、老後の生活はまったく違ってきます。

厚生年金に入るのは正社員として働く会社員、公務員、正社員に近い勤務条件で働いているパート等です。また派遣社員や契約社員の場合もフルタイムに近い仕事をしている場合、対象となります。

一方、厚生年金の対象とならないのは、アルバイトやパート、自営業者やフリーランスなどです。厚生年金に加入するような働き方は、賃金も高くなる可能性があると同時に、将来の年金も多くなる働き方なのです。

(2)加入期間は長いほどいいこと

公的年金の年金額は自分の加入状況によって異なります。特に加入する「期間」が年金額を大きく左右します。

現在、公的年金の支給要件を「最低10年の加入」に引き下げる法案が検討されていますが、これは10年だけ入ればいい、という意味ではありません。

年金額を決定する計算式には、保険料を納めていた月数が含まれており、10年しか加入していない場合には10年分の年金しかもらえません。

あなたが20歳から60歳まで40年加入していた場合と比べれば、基本的に年金額が4倍変わってきます(他の条件は同一であったとする)。これは国民年金も厚生年金も同じです。

また、60歳以降も年金制度に加入する働き方をすることで年金額はもっと増えることになります(厚生年金の場合)。40年ではなく45年働いた場合、他の条件が同じなら12.5%年金額が増える計算です。

できるだけ長く、1カ月でも多く年金保険料を納めることは、年金額を増やす近道なのです。

(3)保険料は多く納めること

厚生年金保険料の金額は大きな負担で、人によっては所得税や住民税の納税額を上回ることもあります。実は同額を会社も負担していることを考えればさらに大きな負担です。

しかし、多くの保険料を納めた人は、将来多くの年金額を得る権利を手にします。厚生年金の計算式の中で年金額に大きなインパクトを与える要素が「保険料納付期間中の平均賃金」だからです(平均標準報酬額といい、実際の計算ではボーナスも含める)。

同じ年齢の人で、加入期間が同じなら、平均賃金が高く保険料を多く納めた人のほうが年金額が多くなります(一定の上限あり)。もし20万円と30万円という違いがあったとすれば、厚生年金額は50%も違ってくるわけです。

高い給料をもらう働き方は、目の前の賃金を増やすだけでなく、将来の年金額も増やすことになるのです(もちろんその分多く保険料負担をするわけですが)。

所得に比例する厚生年金制度の力

年金制度に対して、多くの人は「所得の再分配」を思い浮かべます。現役世代から保険料を引いて、それを所得のない高齢者に分け合う、というイメージです。

しかし、個人ベースで考えたとき、所得の再分配に近いのは国民年金(老齢基礎年金)の部分だけで、厚生年金制度(老齢厚生年金)は所得に比例する要素のほうが強くなっています。

社会全体を考え年金制度のあり方を議論するのは専門家や国会議員、役人の大事な仕事です。その情報をチェックするのは国民の役目です。しかし、普通の個人が公的年金についてまず考えるときは、「個人にとっての制度とのかかわり」と、そこでより多く年金をもらう方法を最初に考えるべきだと思います。

こういうマネーハック的発想転換を行い、自分がもっと多くの年金をもらう方法はないのか考えてみるところから、年金についての理解をスタートしてみてはどうでしょうか。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはITスキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。所属は日本年金学会、東京スリバチ学会。近著に『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(明日香出版社)『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)などがある。趣味はマンガ読みとまちあるき(看板建築マニアでもある)。Twitterアカウントは@yam_syun。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

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