練習と仕事両立へ企業と交渉 障害者競技者の就職支援ゼネラルパートナーズ、2018年まで100人めざす

山路さんは出勤前に1時間ほど練習で汗を流す
山路さんは出勤前に1時間ほど練習で汗を流す

人材紹介サービスのゼネラルパートナーズ(東京・中央)は障害を持つ競技者の転職や就職を支援するサービスを始めた。平日も練習したいといった障害者の要望と、企業の就業条件を擦り合わせる。2020年開催の東京パラリンピックを目指す選手も多く、18年までに計100人の就職や転職を目指す。

10月21日金曜日の午前9時。都内の陸上競技場に視覚障害がある山路喬哉さん(25)が現れた。視覚障害クラスの走り幅跳びと100メートル走で国内上位の記録を持ち、世界大会出場を目指して練習している。

山路さんは練習後、午後7時まで働く

走り込みなどの練習メニューをこなし、シャワーを浴びた後、午前11時からの就業時刻に間に合うように電車に乗り込んだ。

山路さんが出社したのはMS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下で、東京・大久保にある保険関連システム開発のMS&ADシステムズの本社。同社は福利厚生の一環として、デスクワークが中心のシステムエンジニアら開発者の体をマッサージする「ヘルスキーパー」を採用しており、山路さんは10月に転職してきた。

それまで、山路さんは中部地方の病院で患者にマッサージする仕事に就いていた。勤務は朝から始まり、夕方以降の残業も多かった。一方で、陸上競技ができる練習場が開いている時間は短く、移動も路線バスを使って時間がかかるため、平日に練習時間を確保するのは難しかった。

「短時間で構わないので、平日も練習したい」という思いを募らせていた山路さんは今夏、ゼネラルパートナーズを通じて転職先を探した。山路さんの要望を受け入れたのがMS&ADシステムズだった。

勤務時間を他の従業員より1時間遅い、午前11時~午後7時に変更することを提案。都内には23時まで使える練習場もあるため、朝だけでなく退社後も練習できるようになった。

勤務時間の変更はMS&ADシステムズにとっても都合がよかった。マッサージを受けたい従業員は遅い時間ほど増えるからだ。勤務時間を1時間遅くするだけで、山路さんのニーズを満たすことができた。

MS&ADシステムズ人事グループの上原雅司グループ長は「アスリートというと練習が中心で、勤務時間は短くなるのだろうという先入観があった。山路さんの提案は意外だった」と話す。

仲介したゼネラルパートナーズは03年に日本で初めての障害者専門の人材紹介会社として創業。障害者アスリート向けサービスを新規事業として開始した真砂宏樹リーダーは「企業は就業条件を少し緩和するだけで、20年の東京パラリンピックを目指すような選手を支援できることを知ってほしい」と話す。

同社は障害者一人ひとりの悩みに合わせて支援する体制を整えてきた。今回競技者という新たな枠組みを加え「あらゆる障害者のサポートを目指す」

障害者雇用促進法は従業員50人以上の企業が従業員数の2%は身体・知的障害者を雇うことを義務付けている。MS&ADシステムズは法定雇用率の2%を達成しているが、2%に満たない場合は不足人数に応じて納付金を支払う必要がある。

中途採用支援サイトのエン・ジャパンが6~7月に233社を対象に実施した調査では、2%を達成している企業は全体の31%だった。昨年調査より1ポイント減少し、全く雇用していない企業は38%を占めた。

雇用が広がりにくい理由として、障害者に適した仕事がなかったり、設備や施設など安全面の配慮が負担になったりするようだ。ゼネラルパートナーズによると、障害者の要望と合わず、早期に離職してしまうケースも多いという。障害者雇用に対する社内の意識改革や障害者の成長促進、キャリアパスなど、きめ細かなサポートで長く勤められる環境をつくり出すことが欠かせない。(河合基伸)

[日経産業新聞2016年11月1日付]

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