選手とファンの「絆」サイト 寄付で海外遠征費を支援

文部科学省の「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」官民ワークショップでアスリートとファンの絆について語り合った(10月21日、東京・港)
文部科学省の「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」官民ワークショップでアスリートとファンの絆について語り合った(10月21日、東京・港)

スマートフォン(スマホ)用コンテンツを開発するサイバードの創業者、堀主知ロバート氏がサイトを活用したアスリートの支援活動に着手した。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、アスリートとファンを強い絆で結びつけながら、応援する仕組みづくりを呼びかける。その具体策として、年内にアスリートの応援サイトを通じて寄付を募るための協議会を発足させる。

応援サイトは2017年4月に開設予定。応援プロジェクトの立ち上げに先立ち、堀氏は今夏に新会社、オーシャンズ(東京・渋谷)を設立し、年内には同社を中心に約150社が参加する「KIZUNAプラットフォーム協議会」を発足させるという。協議会を母体にして、応援サイトを通じファンから寄付金を集めるプロジェクトを推進する。

応援サイトは約5000人のアスリートを集めるのが目標。サイトに登録したアスリートは写真や短文などでファンに近況報告をする。応援したいアスリートを見つけたファンはサイトの課金サービスを利用。ここからの収入が寄付金の原資になり、多くのファンを獲得できれば海外遠征費用などに充てることができる。

堀氏(写真右)の記者会見には、スポーツ庁の鈴木大地長官(写真中央)も同席した

堀氏は10月21日に協議会発足について記者会見し、「2020年までに日本を世界一、アスリートとファンの絆が深い国にする」と意欲をみせた。会見にはスポーツ庁の鈴木大地長官も同席し、「民間企業からのアイデアを参考にして、スポーツ庁も一緒に(スポーツ振興に)取り組みたい」とエールを送った。

「多くのファンと密度の高い絆や関係を築くことができているかどうかが、企業サイドから見た場合のアスリートの価値基準になる。大切にして、つながってほしい」。堀氏は記者会見に先立ち、文部科学省などが開いたワークショップで、アスリートとファンの関係や企業支援について、こう語った。

ワークショップのテーマは「企業は、アスリートと国民の絆を結べるか?」。埼玉工業大学の小寺昇二教授はIT(情報技術)を活用した支援方法を提案。パルコなどが運営するクラウドファンディングサイトを活用して、ラグビー7人制女子のチームを運営するNPO法人のアルカス熊谷(埼玉県熊谷市)が海外遠征の費用を調達した事例を紹介しながら、「資金のサポートをしていくことも重要」と指摘した。

ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手を支援しているエイブル&パートナーズの佐藤茂会長兼社長は「世界で活躍している選手を応援したい」と述べ、企業としてのサポートでは、国際大会での実績を重視する考えを示した。

ワークショップのモデレーターを務めた堀氏は、競技者としてのキャリアアップと引退後も含めた人生設計を両立させる「デュアルキャリア」もテーマとして取り上げた。そこでも企業によるアスリート支援のあり方が焦点になった。

太田雄貴氏は企業でのインターンシップ(就業体験)や研修の必要性を主張した

北京、ロンドンの五輪2大会連続でフェンシング男子フルーレの銀メダルに輝き、リオデジャネイロ五輪を最後に現役引退した太田雄貴氏も討論に参加し、「(引退後の)次のことも考えながら、競技をして、さらにメダルという結果も求められるのは苦しい」と訴えた。そのうえで「メダルをとったら報奨金を贈るよりも、引退後に2年ほど海外に留学する権利や入りたい企業でのインターンシップ(就業体験)や研修を受けられる機会を与えた方がいい」と提案。

スポーツ庁の高橋道和次長は「現役時代からデュアルキャリアを考えてもらう必要がある」と強調。そのうえで政府のデュアルキャリア形成の支援策に関して「企業での就業体験や研修を促進したい」と述べた。日本バスケットボール協会の三屋裕子会長は「アスリートはチームビルディングの能力、モチベーションを高めるセルフコントロールの能力を持っている」と語り、アスリートを採用した企業は有用なそうした人材を確保できるメリットを強調した。

堀氏が準備中の協議会には、アスリートの支援に積極的な企業が参加する見通し。多くのファンを獲得し、世界を舞台に活躍した後に現役引退した際、協議会の加盟企業が企業内で活躍の場を提供するといったサポートができれば、協議会の役割は重みを増すことになりそうだ。

(ライター 三山彩音)

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