2016/11/8

大人を磨くホテル術

甲乙つけがたい沖縄のリゾート

リゾートならではのスタッフの気配りが光るジ・アッタテラス クラブタワーズ(写真提供:ザ・テラスホテルズ)

心から感動した小規模リゾートホテル、3つ目は……、あぁ、本当に迷います。

3つと言っておきながら、最後に複数あげて恐縮ですが、いずれも甲乙付けがたい沖縄の極上リゾート。ジ・アッタテラス クラブタワーズと百名伽藍、そして石垣島から高速フェリーで10分ほど行った竹富島にある、星のや竹富島です。

まず沖縄本島は、言わずと知れたリゾートホテル激戦区。2012年、あのリッツ・カールトンが前身の「喜瀬別邸ホテル&スパ」をリブランドする形でザ・リッツ・カールトン沖縄を開業、16年にはシェラトン沖縄サンマリーナリゾート(旧サンマリーナホテル)やヒルトングループのダブルツリーby ヒルトン那覇首里城など、外資も続々と進出しています。私は沖縄の外資系ホテルでは、まだリッツ沖縄しか利用経験がありません。西の客室から眺める夕陽や「水」を活かした造り、そして何より広々とした開放的なライブラリーとそこに続く屋外プール(プールバー)の導線は本当に素晴らしいのですが……。

それでもやはり、リゾートホテルの大きな強み、「地元ならではの魅力」を感じるホテルとして、あえてリッツ沖縄以外の3つを挙げました。

クスッと笑顔になれる

ジ・アッタテラス クラブタワーズは全室スイートクラス(同)

まずジ・アッタテラスは、沖縄の友人から「騙されたと思って、泊まってみて」と薦められたホテル。それまで、同じ系列のザ・ブセナテラスのメゾネットタイプの部屋が大好きだったのですが、ジ・アッタテラスは客室数80室弱、おもな施設の利用を16歳以上の宿泊者に限定するなど、まさに大人の空間と言えます。ホスピタリティの基本は、痒いところに手が届くバトラーサービスです。

亜熱帯の森や海岸を活かし、プライベート感覚のビーチや、オープンスタイルの「ライブラリーラウンジ&バー」も用意されています。朝7時から夜12時までの営業で、一日じゅうここでボーッと森の風と遊ぶもよし。日頃の雑念は、潮風がふわっと運び去ってくれます。宿泊のお部屋も、全室スイートクラスで快適でしたが、何より感動したのは、「大人の遊び心」をくすぐろうとする、リゾートならではのスタッフの気配り。

たとえば夜、レストランでのお食事で、パンをホテルスタッフが落としてしまったことがありました。都心のラグジュアリーホテルなら、間違いなく「すぐ替わりのものをお持ちします」「大変申し訳ございません」と深々と頭を下げるでしょう。

ところがジ・アッタテラスのスタッフは、笑顔でこう言ったのです。「あらあら、素敵な夜なので、パンも心躍ってお皿から飛び出してしまったようですね」。ほかにも、おもてなし全般にわたり、こうしたユーモアがちりばめられていました。

これがビジネスモードのときなら、お客さまも「おいおい」と感じるかもしれない。パンを落とすこと自体は落ち度ですし、たとえば京都・MKタクシーの「わざわざ回り込んでドアを開けてくれる」といった接客も、お忙しいビジネスマンの中には「煩わしい」「早くして」と焦れるかたもいらっしゃるようです。

でも、ジ・アッタテラスのようなリゾートホテルに泊まるお客さまは、ほとんどが「ゆったり過ごす」ためにやって来る。だとすれば、堅苦しい応対より大人がクスッと笑顔になれるやりとりに、「おいおい」でなく「なるほど、そう来ましたか」とあえて「のって」みる。そうしたほうが、はるかに心や思い出に残る、感性も磨かれる、そう思いませんか?

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琉球瓦と三線