マーケティングライターで「超」がつくほどのホテルフリークである牛窪恵さんは、静かに大人のリゾートを満喫したいなら、客室数が少ないホテルを選ぶのが良い、と説く。牛窪さんが心から感動した小規模リゾートホテルを教えてもらった。
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私がこれまでに深く感動した国内の小規模リゾートホテルは、3つあります。
1つ目は、香川県の小島・直島にある、ベネッセハウス。美術館とホテルが一体になった施設で、とにかく立地が素晴らしい。お部屋はビーチサイド、パークサイドと「ミュージアム」「オーバル」に分かれ、後者は5歳以下のお子さまは泊まれません。
専用モノレールで丘の上へ
私はビーチサイドとオーバルに泊まりましたが、とくにミュージアム棟から専用モノレールで丘の上に上がるオーバルは、客室わずか6室。水に囲まれ、静寂に包まれた建物の眼下に広がるのは、雄大な瀬戸内海です。なによりお天気がいい日は、燃えるように真っ赤な夕陽を目の当たりにできます。地元のかたがたもホテルのスタッフも気さくで思いやりに溢れ、本当に温かい。直島の旅は、一生忘れ得ぬ思い出になりました。
2つ目は、露天風呂も味わい深い、栃木県那須の二期倶楽部(41室)。リゾートホテルの大きな愉しみは、泊まった翌朝の「朝食」にもあります。二期倶楽部のそれは五感を震わす、感動の食卓。「そよ風(ラ・ブリーズ)」という名のメインダイニング(本館)には緑豊かなテラス席があり、まさに高原リゾートで過ごす極上のひとときを味わえます。私も柔らかな日差しと小鳥のさえずりに包まれた瞬間、「ああ、ずっとここにいたい」と心から感じました。
メニューも秀逸で、自家菜園のとれたて無農薬野菜や新鮮なフレッシュジュースの数々、そしてなんといってもオリジナル滋養卵を使った卵料理の絶品ぶりに、思わず目と舌を見張ったほど。私がこれまで食した卵料理で、間違いなく最高ランクです。
ちなみにあまり知られていないのですが、二期倶楽部は「森のコンシェルジュ(ガイド)」が四季折々の草花などをガイドしてくれる森のウォーキングツアーのほか、近隣での乗馬体験や、隣接施設でのオリジナルガラス・陶芸体験も実施しています。いわゆる大人の洗練とは少し違いますが、ガイドや講師のかたがたがとても素朴で温かく、会話の一つひとつに真心がこもっていました。
このときマニュアルとは違う「自分の言葉」で伝える意義と魅力に、改めて感銘を受けました。以来、私も極力、「みずからの言葉で何かを伝えよう」と意識しています。つい専門用語や効率を追ってしまう都会の生活では、気づけなかった視点でした。