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お笑い芸人のソロ活躍 番組から読み解く、その事情 ニーズはツッコミ・多趣味・いじられ役

日経エンタテインメント!

2016/11/17

昔は個別での仕事を避ける傾向があったようだが、今ではコンビにこだわる芸人の方が少ない。世代別で見てもほとんど差はない(表は9月30日時点)

 MC、ガヤ、ロケ要員と、バラエティーで万能な活躍をするお笑い芸人。近年はコンビで仕事をしつつ、ソロでもレギュラー番組を持つことが普通だ。世代別で見ても、芸歴の長さにかかわらずその傾向は同じ(右表)。バラエティーは集団トーク型の番組が中心となり、コンビ芸ではなくソロの需要が増えた。事務所側の「まずはコンビで成功してから」という考えが薄まり、制作側もソロでの起用に抵抗がなくなっている。

 では、今はどのようなタイプがバラエティー番組で必要とされているのか。現在の主流である情報・雑学系では、出演者それぞれの役割が明確にあることと、それがぶつからないことを意識するそうだ。

『林先生が驚く初耳学!』 知識豊富な林修に「知らなかった」と言わせるため、VTRで次々に出題する。「林先生との対決を盛り上げるためにも、澤部さんのツッコミが不可欠です」(水野氏)。進行役の大政絢はモニター越しで登場する。(日曜22時/TBS系)

 『林先生が驚く初耳学!』(TBS系)の演出・プロデューサーである毎日放送の水野雅之氏は、「コンビ芸人さんは2人のやりとりがもちろん面白い」と前置きした上で、「視聴者の目が厳しくなっていて、豪華なメンバーをわっと集めてにぎやかにするだけでは見てもらえない時代。シンプルな構図が受け入れられやすいと感じています」と分析する。『初耳学!』に出演してもらう芸人は、絶対に外せない役割であるツッコミとMCの2人が基本。最少人数で分かりやすさを心がけたという。

■ツッコミが主役を輝かせる

 まず、番組のメーンである林修は、バラエティーの定石で考えるとボケの部類に入る。知識を問われ、知っているか知らないかを返答するなかで、「ドヤ顔をしたり、負け惜しみを言ってみたりと、“ツッコミしろ”が生まれる人なんです。ここで誰かにツッコんでもらわないとバラエティーとして成立しません。誰が適任かと考えたときに、澤部佑さん(ハライチ)が浮かびました」(水野氏)。また、『初耳学!』では分かりやすくスタジオトークを回すレギュラー出演者はいない。そこで、ゲストに混じって座っているためはた目からは分からないが、交互に出演している千原ジュニア(千原兄弟)と田村淳(ロンドンブーツ1号2号)にその役割を担ってもらっているそうだ。

 水野氏は、タレントが俳句や生け花などの実技をし、講師が才能の有無を査定する『プレバト!!』(TBS系)の演出も担当している。こちらでも、ツッコミ役の藤本敏史(FUJIWARA)が常連。「専門的になりがちな査定のどこを面白がればいいのか、視聴者を指南してもらうイメージです。また、大御所に『もしあなたが才能ナシなら大事件ですよ』などと藤本さんがツッコんでくれることでゲストにプレッシャーがかかり、番組が盛り上がります」(水野氏)。

 加えて、『あのニュースで得する人損する人』(日テレ系)なども該当するように、今はVTR映像とスタジオを絡ませて進行する番組が多い。SNSが普及し、視聴者もツッコミ目線で見ているなかで、あえてVTRに隙を作る流れになっている。「スタジオとVTRを有機的に絡ませるには、澤部さんや藤本さんのようなツッコミの芸人さんが、番組のガイド役として重要なんです」(水野氏)。逆に言うと、ボケ役は笑いに落とすために、ツッコミの“もう1声”が必要になる。さらに、本来見せたい主旋律以外のところでやり取りが生まれてしまい、見どころが不明確になる。もちろん、番組の内容によるが、シンプルな構造をと考えたときには、ボケ役は主役だけに絞ることが多いという。その点で、千原ジュニアや田村淳のように、コンビではボケ役が多くても、番組によってツッコミ型に変われるタイプは有利だと言える。

『ダウンタウンDX』 8月に放送1000回を迎えた、23年続くトーク番組。「ゲストの人数が多いので、個性が被らないことを常に考えます」(勝田氏)。(木曜22時/日テレ系)(写真:辺見真也)

 定番のトーク番組ではどうだろう。『ダウンタウンDX』(日テレ系)のプロデューサーを務める読売テレビの勝田恒次氏は、「制作側としては、ソロかコンビかということにはこだわっていません。ただ、コンビとしての姿と、ソロでの姿を分けている人が成功していそうな印象はあります」と話す。芸人には、グルメや高校野球に詳しい渡部建(アンジャッシュ)や、ボディビルに取り組む春日俊彰(オードリー)ら、自身の興味のあるところを伸ばす、セルフマネジメントが上手な人が多いとのこと。「キャスティングは、テーマを決めてからイメージにはまりそうな人を探すんです。だから、キーワードが多いほど、チャンスは増えるかもしれません」(勝田氏)。

 俳優やアイドル、モデルなど様々なゲストがいるなかで、チームワークの要として意外と重宝がられるのは、児嶋一哉(アンジャッシュ)や、井上裕介(NON STYLE)に代表される“いじられキャラ”。トークのまとまりがなくなったときなどに1人いると、場の空気を戻せるのだそうだ。

■地味キャラは若林を目指せ

『クイズ☆スター名鑑』 芸能人が題材。「これまでのテイストは維持しつつ、嫌われない程度に家族向けも意識します」(藤井氏)。(日曜18時55分/TBS系)

 芸人のソロを語るとき、ついて回るのがコンビ格差について。『クイズ☆スター名鑑』を手がけ、『水曜日のダウンタウン』で「芸人知名度格差コンビランキング」を企画したTBSの藤井健太郎氏は、「“じゃない方”も個性で、要はそこからです」と話す。アンジャッシュやスピードワゴンらも、交互に光が当たって伸びてきた。バナナマンやオードリーは、分かりやすく派手な方が先に人気を得て、後から頭脳役が実力で伸びた。「三四郎の相田周二君は頑張り時かもしれません。オードリーの若林さんを目指さないと(笑)」(藤井氏)。

 一方、ソロでの仕事が当たり前になった今、コンビでの活動の貴重さが際立つ側面もあると藤井氏は指摘する。「千原兄弟さんはテレビではほとんど別々ですが、ライブなどで2人でしゃべったときの面白さはすごいです。コンビになったときの価値が改めて分かるというプラスの面もありそうです」。4月にはホンジャマカがTBSのネタ番組で22年ぶりにコントを披露して話題になった。そちらでの鉱脈も可能性がありそうだ。

 コンビでもソロの需要があり、個性を生かせる時代。2人に戻ったときのパワーアップにつながる、実践を伴う財産として、ソロの活動はますます重視されていくだろう。

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2016年11月号の記事を再構成]

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