乳がんの乳房再建 主流は「左右バランスを調整」に
万一に備えて、乳がんの正しい治療法も知っておこう。治療はがんの性質や進行度に応じて局所治療(手術・放射線)と全身療法(化学・ホルモン療法)から選択し、組み合わせて行う。手術でがんを取り切ったと思っても、どこかに散らばっていることがあるため必ず全身療法も併用する。
抗がん剤の使用では「本当にこの薬を使うことで効果が得られるのかを見極めるために、遺伝子レベルでがんのタイプを解析する。これをプレシジョンメディスンという。一昔前と比べて格段に治療成果が上がっている」(昭和大学医学部乳腺外科の中村清吾教授)。
乳房の再建は、一部の人工乳房を使う場合には健康保険が適用される。「少し前までは、乳房を温存しようという考えが主流だった。今は温存しても左右のバランスが崩れるなら、全摘をして形の良い乳房を再建したほうがいいという流れになっている」(中村教授)。再建は、体の負担を軽くするために摘出手術と同時に行うことが多い。
セカンドオピニオンは「治療のメリットデメリットを他の医師に聞くことで理解する場として活用するといい」(中村教授)。聖路加国際病院乳腺外科の山内英子部長は、「乳がんになっても、社会で活躍する人は多い。社会からはみ出してしまった、というように思わないで。自分がどう生きたいか、何を大切にしていきたいかを主治医に伝えることが大切だ」と話す。
この人たちに聞きました
昭和大学医学部乳腺外科教授。日本乳癌学会理事長、同乳腺専門医。M.D.アンダーソンがんセンターなどを経て、2005年、聖路加国際病院ブレストセンター長、10年昭和大学病院ブレストセンター長に就任。同年より現職。日本の乳がん治療の第一人者
聖路加国際病院乳腺外科部長。聖路加国際病院外科レジデント、ハーバード大学ダナファーバー癌研究所、ジョージタウン大学ロンバーディ癌研究所、南フロリダ大学などを経て、2010年、聖路加国際病院乳腺外科部長・ブレストセンター長に就任
(ライター 渡邊由希、構成:日経ヘルス 羽田光)
[日経ヘルス2016年12月号の記事を再構成]
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