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ロボアドバイザーで分散投資 データ期間で異なる配分

2016/11/5

 投資リスクを抑えつつ期待リターンを高めるには、世界の株式や債券などに分散投資するのが基本だ。ただどんな資産にどのくらい投資すればいいかの見極めは難しい。インターネットを通じていくつかの質問に答えると、コンピューターが自動的に最適な資産配分を示す「ロボ・アドバイザー」を手がかりに分散投資の考え方を理解しておこう。

 不惑を迎えて老後資金が気になってきた。65歳で2000万円を目標に投資したい。とりあえず初期投資は500万円、さらに月3万円をコツコツと積み立てよう――。こんな投資家を想定し、いずれも無料で利用できる三菱UFJ信託銀行のロボアド「かんたん資産運用シミュレーション」とマネックス・セゾン・バンガード投資顧問の「MSV LIFE」体験版を試してみた。示された資産配分がグラフAだ。同じ条件なのに資産配分の中身は大きく違う。どうしてだろうか。

 最適な資産配分をはじき出す理論は米国の経済学者ハリー・マーコビッツ氏が1952年に唱え、現在の多くの理論がこれを基にしている。日本株式、外国債券といった資産ごとの期待リターン、資産価格がどれくらい変動する可能性があるかを示すリスク、2つの資産の値動きがどのくらい連動するかを表す相関係数が決まれば、同じリスクのもとで期待リターンを最大にする資産配分が計算できるというものだ。

 相関係数がプラス1なら2つの資産の値動きはまったく同じであることを示し、分散投資の効果はない。一定のリターンを目指しつつできるだけリスクを抑えるには相関係数がゼロに近かったり、ややマイナスになったりする資産の組み合わせにお金を配分すればいいとされている。

■万能ではない理論

 ところが相関係数は相場をどれくらいさかのぼって計算するかで数値がぶれやすい。三菱UFJ信託銀行によると、過去20年のデータで計算すると「日本株と外国債券」の相関係数は0.26だが(表B)、各時点の過去3年分でみると08年のリーマン・ショック前後に相関係数は大きく上昇し、その後は高止まりしている(グラフC)。

 リーマン・ショック後の円高局面で日本株が売られるとともに外国債券も円換算で下落し、その後の円安局面では日本株と円換算の外国債券ともに値上がりしたためだ。これを一時的な動きとみるか、長期的な傾向の変化とみるかで最適な資産配分は変わる。マーコビッツ理論は万能ではないことを知っておこう。

 さらに三菱UFJとマネックスのロボアドの助言から資産配分でのリスクの取り方を考えてみる。資産全体のリスクはいずれも約15%だが、マネックスのMSVは通貨別にみると外貨建ての比率が76%と高く、海外投資のリスクを多く取っている。ただし資産別でみると株式は国内外合計で50%と、値動きが安定している債券の40%と大きくは変わらない。一方、三菱UFJは外貨と円建ての比率はほぼ半々だが、資産別では株式が国内外合計で60%と、債券の9%を大幅に上回る。

 最適な資産配分は投資家の年齢によって変わるという考え方もある。みずほ銀行のロボアド「スマートフォリオ」は働いて得られる将来の収入を「人的資本」ととらえ、これを安定したリターンが期待できる債券に近い資産とみなす。退職までの期間が長い若い投資家ほど人的資本は大きく、その分だけリスク許容度が大きいとみるわけだ。

■質問に答えるだけ

 こうした理論が難しければ、欧米の個人投資家に勧められることの多い資産配分が手がかりになる。一つは、100から自分の年齢を引いた割合(%)だけ株式などリスク資産に振り向ける方法だ。これは人的資本を債券に近いとみなす考え方に通じる。安定収入のある40歳なら株式が6割という具合だ。

 では残りの4割はどうすればいいだろうか。ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸・主席研究員は「欧米では伝統的に株式60%、債券40%のシックスティ・フォーティが目安とされる」と話す。もちろん債券も価格が下がるリスクはあるが、個人投資家が満期まで保有するつもりで買った債券なら、保有期間中の含み損を過度に気にする必要はないと話す専門家は多い。

 リスク許容度や資産運用の目標に関する質問に答えるだけで、具体的な資産配分を助言してくれるロボアドの利便性は高い。運用を一任できるサービスも増えてきた。

 ただし家族構成や運用するお金の将来の使途、不動産などを含む資産全体に占める金融商品の割合などによっても最適な資産配分は変わる。まとまったお金を資産配分するならマーコビッツ理論の期待リターン、リスク、相関係数の関係を頭に入れたうえで「ロボアドはあくまで目安として考えよう」と資産運用アドバイザーの尾藤峰男氏は助言している。(表悟志)

■マーコビッツ理論 値上がりも「リスク」
 マーコビッツ理論では株式、債券などが値上がりすることもリスクとして計算する。例えば日本株の期待リターンが年率6%、リスクが18%であれば、ある年の運用成績はおおむねプラス24%からマイナス12%の間に収まる。期待リターンからの上下を問わず、どれだけぶれるかを表す統計学の標準偏差をリスク値として用いるからだ。
 しかし投資家にとって期待リターンを上回る値上がりはうれしい誤算でもある。現在は期待リターンからのぶれが上下どちらかに偏ることも想定し、より複雑な計算で「ダウンサイド(下方)・リスク」を抑える投資理論が発展。日本でも年金運用などで実践している。

[日本経済新聞朝刊2016年11月2日付]

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