「古い」が「新しい」 2016年ヒット商品を振り返る
写ルンです、きょろちゃん……若者熱中
人に見せたい インスタ栄え
スター・ウォーズ、ゴジラ、おそ松くん……大人が青春をともにした盟友が、相次いで帰ってきた。喜んだのは昔を懐かしむ大人ばかりではない。純粋にひかれるコンテンツとして若者が飛び付き、全く新しい文脈でその魅力を称賛する言葉が交流サイト(SNS)にあふれた。
古いものが新しい。2016年の最も大きな商品トレンドはこの言葉に集約されるだろう。そんな感覚は日用品や食品にも浸透した。空前のかき氷ブームのなか各社が高性能のかき氷マシンを開発したが、なぜか若者が買い求めたのは1970年代の商品を昭和レトロのイメージで復刻したかき氷器の「きょろちゃん」(タイガー魔法瓶)。目玉が左右に動くのが愛らしいと話題になり、またたく間に完売。入手困難なプレミアム商品と化した。
スマホで簡単に写真が撮れる時代に、役割を終えたかのように思えるレンズ付きフィルムの「写ルンです」(富士フイルム)も人気再燃。発売30周年記念で売り出した5万本の数量限定キットが完売し、再発売することに。「何が撮れたかわからないのがすごい」という若者の反応に、大人は驚くばかりだ。
このほか、14年に復活したオーディオブランド「テクニクス」で、名機のターンテーブルを限定復刻させたモデルも、30分で予約受け付けが終了した。その後、定番商品も出した。若者が「新しい」と感じて買うという。
こうしたヒット商品に共通するのは、写真をシェアできるSNSのインスタグラムなどで「何これ! すごい」と感じて人に見せたくなる、"インスタ栄(ば)え"だ。完璧に美しいものより、あえて隙(すき)をつくり、くすっと笑わせ、投稿を促す微妙なさじ加減を制覇したツワモノが、今年のヒットという栄光を手にした。
低価格品より ちょい高注目
このほかに16年を特徴づけた商品トレンドを、キーワードで振り返ってみよう。
ストレスフリーマン 昨年末から企業では従業員を対象にして「ストレスチェック」が義務づけられ、ストレス回避はますます重要になっている。スーツに合い、パソコンもスマートに収納できるリュックや大人向けの上質なランドセルがヒットし、街には両手を開放した男性が次々と出現。また、ストレッチ素材を使い、体への負担を軽くした「ストレス対策スーツ」も好調に売れている。
ティーンつながり中毒 自撮り画像をユニークに加工して共有する「SNOW」、共有画像や動画が10秒以内に消える「Snapchat」など10代のスマートフォンを席巻(せっけん)するアプリが注目された。幅広い友達とつながりっぱなしの中学・高校生が親友の証しに使うのが、制汗剤「シーブリーズ」の色違いのキャップを交換すること。これが影響し前年比145%の売上高を達成した。
高かろう良かろう 低価格がセールスポイントの商品の「ちょい高」版が売れる動きが目立った。「グランドビッグマック」(日本マクドナルド)は、通常の1.3倍のパティを使い、単品で税込み520円と高額。予想外にヒットし、販売制限も行った。税込み250円前後と高めで、フカヒレやスッポンの味をうたう「カップヌードル リッチ」(日清食品)も好調。温かい裏地の付いたスリムパンツの「裏地あったかパンツ」(しまむら)は、1000円値上げでもヒットした。
妥協なきせっかち 化粧品メーカー、スタイリングライフ・ホールディングス(東京・新宿)が出した「時短」コスメの「サボリーノ目ざまシート」は、朝の洗顔から下地までをシートマスクで完了できるスグレモノ。半年足らずで50万個を出荷した。「お肉やわらかの素」(味の素)は肉に5分付けるだけで軟らかい食感に調理できる。速乾性があり、左利きの人やイラスト描きに向く水性ペン「サラサドライ」(ゼブラ)も話題に。解熱鎮痛薬「ロキソニンSプレミアム」(第一三共ヘルスケア)はシリーズ最高のスピード感で効き、消費者をとらえている。
(「日経トレンディ」12月号から抜粋・再構成、文・三谷弘美)
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