自動運転がけん引、AI革命相場(藤田勉)日本戦略総合研究所社長

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「AI革命の主戦場は自動運転、ロボット、フィンテックの3分野だが、何といっても最大の市場は自動運転だ」

日本株相場は、本格的な上昇局面に突入した可能性がある。筆者は2020年に向けて、日経平均株価は3万円が視野に入ると予想している。12月9日に日経平均は一時1万9000円を超えた。ほんの2カ月前までは日経平均が3万円といわれると、疑問を持つ人が多かったかもしれないが、今となっては4年後に3万円というシナリオは真実味を帯びつつある。

大相場には大きなテーマがつきものだが、そのテーマは人工知能(AI)革命になるだろう。現在の株価上昇はトランプ米次期大統領の誕生をはやした相場に見えるが、筆者が繰り返し述べているように、その本質はAI革命相場である(詳細は8月22日付「AI革命で日本株は復活する」を参照)。AI革命関連株の本命の一つであるソフトバンクの最近の株価急上昇が、その象徴的な事象である。

AI革命の主戦場は、自動運転、ロボット、そして情報技術(IT)と金融の融合であるフィンテックの3分野だが、何といっても最大の市場は自動運転になろう。世界の自動車(四輪車)保有台数は約12億台であり、年間生産台数は9000万台である(14年)。20年代にこれらの多くは自動運転車に切り替わっていくと考えられる。

日本企業に大いに勝機

一般に自動運転では「世界最高水準のAI技術を持つグーグル(アルファベット)が勝つ」との見方が多い。しかし、筆者は自動運転車の製造においては、トヨタ自動車を中心とする日本企業にも大いに勝機があると予想する。

その理由は、ITと自動車製造では設計概念がまったく違うことだ。ITでは、バグ(コンピュータのプログラム上のエラー)やフリーズ(コンピューターが動かなくなる状態)があることが前提となる。つまり、最善を尽くすものの、多少の故障や停止は仕方がないという考えである。たいへん柔軟であり、これを「ベストエフォート・ベース」と呼ぶ。

これに対する概念が、「ギャランティー・ベース」である。これは正確で信頼性が高いのが長所だ。一般に日本人は、几帳面で、正確さを重視する傾向にあるため、電機、機械、自動車など精緻な製造技術が必要な業種に強い。

これが、日本の強みなのだが、同時に弱みになることもある。融通がきかず、コストが高くなる傾向があるからだ。そして、時に必要以上に高いスペックを求める。

たとえば、東京から博多までの新幹線は1000キロメートル以上走っても、1分と遅れることはほとんどない。ただし、5時間以上かけて1000キロメートル以上走って、時刻表通りに着くことに、どれほどの意味があるのかは定かではない。電車が2分以上も遅れようものなら、「電車が遅れてたいへん申し訳ございません」と駅や電車内でアナウンスがある。しかし、3分くらいに1本の間隔で到着する電車が2分遅れても、現実問題としてあまり問題はないかもしれない。

従来の弱みが強みに

ベストエフォート・ベースのITでは、こうしたことが日本企業の弱みにもなった。しかし、AI革命においては、ギャランティ・ベースに強い日本の特長が発揮されるだろう。とりわけ、命に関わる自動運転においては、ギャランティ・ベースに基づく基本設計は不可欠だ。

自動車は事故が起きれば生命に関わる。「バグがあったので、アクセルが作動しなかった」とか、「ブレーキがフリーズしてしまった」というわけにはいかない。筆者は、いくら自動運転技術が優れていても、バグやフリーズがある車には乗りたくない。

グーグルは、スマートフォンの基本ソフト(OS)であるアンドロイドで高いシェアを得ている。おそらく、自動運転車の製造でトヨタ自動車が勝つにせよ、自動走行の頭脳であるOSにおいては、グーグルが世界の覇権を握ることが考えられる。

つまり、自動運転車の開発・生産競争において、頭脳であるAIはグーグルがリードするが、自動車自体の製造はトヨタ自動車がリードするというのが最も考えられるシナリオだ。こうして、両社が競争する一方、補完し合いながら、自動運転ビジネスが拡大するのではないか。

日本における自動運転車開発の歴史は長い。1996年から政府が主導して民間とともに、自動運転技術を含む高度道路交通システム(ITS)を共同研究してきた。

自動車は日本最大の産業であり、かつ、すそ野が広い。自動運転に関連して、自動車、自動車部品、電子制御装置、センサー、AI、通信技術など幅広い技術が必要となる。こうした技術のうち、AIは米国が先行するものの、他の多くの分野においては、日本企業が高い競争力を持つ。

自動運転の中核技術は、自動車の位置と障害物などを把握するセンサーと、それをAIに伝える高速移動体通信である。これらは、いずれも日本が世界的に最高水準の技術力を持つ。

日本では、NTTドコモを中心に2020年ごろに世界に先駆けて第5世代移動体通信システム(5G)を実用化する計画だ。トヨタ自動車は1984年に通信事業に進出し、現在は世界最高水準の高速移動体通信技術を持つKDDIの大株主である。2016年には、シリコンバレーにAI研究所を設置した。日産自動車、ホンダもシリコンバレーなどに研究拠点を置き、自動運転の実用化研究ではひけをとらない。

幅広い業種に恩恵

自動運転車ではまた、電子制御装置、センサー、通信用部品などのデバイスが不可欠だ。これらの分野でデンソー、アイシン精機、パナソニック、日本電産、村田製作所、京セラ、TDKなどは世界でもトップクラスの技術力を持つ。ソフトバンクグループも英国の半導体設計会社アームホールディングスを買収し、IoT(すべてのモノをインターネットにつなぐ)事業に本格参入した。

このように、AI革命は、日本最強の産業である自動車を中心として産業界全体に大きな恩恵をもたらすことだろう。自動運転技術は、自動車のみならず、通信、自動車部品、電子部品、通信機器などを含む幅広い業種に関連する。しかも、トヨタ自動車、NTTドコモ、ソフトバンクなど関連銘柄の時価総額は大きいため、これらが日経平均などの株価指数を大きく押し上げるだろう。

IT革命は米国の圧勝だったが、AI革命では自動車やロボットなど日本のものづくりの強さが生きる。結論として20年に向けて、自動運転を中心とするAI革命を大きな相場のテーマとして、日本株が復活する可能性が高まりつつある。

藤田勉(ふじた・つとむ) 山一証券、メリルリンチを経て、現シティグループ証券顧問。2016年に日本戦略総合研究所社長。10年まで日経ヴェリタス人気アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。慶應義塾大学「グローバル金融制度論」講師。SBI大学院大学教授。内閣官房経済部市場動向研究会委員、経済産業省企業価値研究会委員などを歴任。一橋大学大学院修了、経営法博士。1960年生まれ。
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