そのコンビニ昼食ならこれ足して パターン別栄養テク
バランスのいい食事って何?
「食事はバランスよく」とはよく言われるが、そもそも具体的にはどんなことを指すのかご存じだろうか。
栄養素はたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5つにグループ分けすることができる。これを五大栄養素というが、このうち、たんぱく質、脂質、炭水化物は体の構成物質で、エネルギー源になる。そのため、三大栄養素と呼ばれる。
「バランスのいい食事とは、五大栄養素を過不足なくとることで、特に、主要な栄養素である三大栄養素のバランスはとても重要です」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)
三大栄養素のバランスを「PFCバランス」という。これは、1日の三大栄養素の摂取エネルギー(カロリー)の総量を100%とした場合の、P(たんぱく質、protein)、F(脂質、fat)、C(炭水化物、carbohydrate)、それぞれの比率を表すもので、グラフの数字は「何をどれだけ食べたらいいか」の基準を厚生労働省が示した「日本人の食事摂取基準2015年版」によるものだ。
かつて、日本人のPFCバランスは「P:F:C=15:25:60」が目安といわれてきたが、国が明確な基準として示していたわけではなかった。厚生労働省が5年ごとに発表する「日本人の食事摂取基準」の2015年版で初めてPFCバランスに言及され、さらに、それぞれの数値に幅が持たされた点に注目したい。
低炭水化物食ブームで危惧される栄養バランスの偏り
「これは、近年の低炭水化物食ブームで、日本人のPFCバランスが変わってきたためです。低炭水化物食が体重低下や糖尿病の管理に有効であるという報告も一部ありますが、長期間続けた時の効果や安全性はまだよく分かっていません。健康な人が減量、生活習慣病予防を目的に炭水化物の摂取を控えたいと考えた場合、少なくとも総エネルギー(カロリー)の50%は炭水化物でとるのが目安です」(上西氏)
PFCバランスはあくまでもバランスだ。どれかを減らしても総エネルギー(カロリー)は一定に維持したい場合は、その分、どれかを増やさなければならない。炭水化物の幅の50~65%を最小数値の50%とするなら、たんぱく質、脂質の割合を、示された数値の幅の中で増やす必要がある。
そこでこの記事では、たんぱく質20%、脂質30%、炭水化物を50%として、一般的なコンビニ食のメニューのPFCバランスを検証してみた。仕事の合間にコンビニ食を利用する機会が多い人は、自分の選ぶメニューがPFCバランスの点で問題ないかどうかを意識し、できるところから改善してほしい。
なお、1日に必要なエネルギー(カロリー)は年齢、性別、活動量などによって異なるが、30~49歳男性で身体活動レベルの低い人の場合、1日2300kcal、1食当たり767kcalが目安となる。いくらPFCバランスが取れていても、大幅にカロリーオーバーしては生活習慣病予防にはならないので、そこは気を付けたい。
◆幕の内弁当
魚や野菜など様々なおかずが入っており、比較的バランスはいいが、炭水化物の量に比してたんぱく質が不足気味のものも多い。
⇒【改善案】牛乳、豆乳やヨーグルトをプラス!
◆牛丼
肉の質や量によっては思いのほかたんぱく質が少なく、脂質はオーバーになりがち。
⇒【改善案】温泉卵をプラス!
◆そば
具材の少ないものだと、炭水化物に偏り、たんぱく質、脂質が不足しがち。
⇒【改善案】えびの天ぷらをプラス!
◆ミートソース
PFCという意味ではまあまあバランスはいいメニューだが、ひき肉の量などによってはたんぱく質が不足しがち。
⇒【改善案】ツナサラダやヨーグルトをプラス!
◆助六(いなり寿司と巻き寿司の詰め合わせ)
炭水化物に偏っている。油揚げのせいか意外に脂質も多い。
⇒【改善案】同じ寿司系なら、ネギトロ巻きや納豆巻き、握り寿司などたんぱく質が豊富なものに。
◆おにぎり(梅)
鮭、たらこ、ツナマヨなどは若干たんぱく質が多くなるが、おにぎりはほとんどが炭水化物。
⇒【改善案】肉、魚、卵などのおかずも食べたいところ。
◆ミックスサンド
コンビニのサンドイッチはバターなどが多く使われているものが多いため、意外に脂質が多い。内容によっては、パンの量に比してたんぱく質が不足気味。
⇒【改善案】牛乳、豆乳やヨーグルトをプラス!
◇ ◇ ◇
ビジネスパーソンがよく利用するコンビニ食のPFCバランスの傾向と、その対策をまとめると、以下の通りだ。
たんぱく質はほとんどのもので足りない
→ 牛乳、ヨーグルト、ゆで卵、チーズなどをサブとしてプラスする。
→ 肉、魚は小さく刻まれたものよりも、できるだけ素材がそのまま見えるものを選ぶ。
炭水化物はほとんどのものでオーバー
→ 弁当などは、ご飯が少なめなものを選ぶか、少し残す。
カロリーが低くても、脂質が意外と多いものがある
→ パンはバターが多く使われているものを避ける。
→ 肉は脂の少ない部位を使ったメニューを選んだり、揚げものが少ないものを選ぶ。
ここでは、三大栄養素のバランスのみで検証したが、本来は、ミネラルやビタミンも考慮すべきであり、前述した通りエネルギーの多少も考慮しなければならない。また、商品によって違いがあるので、あくまでも傾向として見ていただき、メニュー選びの参考にしてほしい。
(ライター 村山真由美 イラスト Akiko Takagi)
この人に聞きました
女子栄養大学栄養生理学研究室教授。徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを勤める。
[日経Gooday 2016年9月9日付記事を再構成]
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