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旅行大手、エイチ・アイ・エス(HIS)の創業者で会長の沢田秀雄氏(65)が11月1日付で社長を兼務する。2004年に会長に就任して以来、12年ぶりの復帰だ。

沢田氏は社長復帰の理由について「ハウステンボスの経営に入って、大きく流れが変わった」と語る。ハウステンボスは長崎県佐世保市にあるテーマパーク。開業以来、赤字が続いていたが、HISが10年に子会社化して沢田氏が経営に参画すると、初年度に黒字転換。いまでは連結営業利益の約半分を稼ぎ出す存在となった。本業の旅行業が伸び悩むなか、ハウステンボスの経営再建で、経営への意欲が再燃したようだ。

社長に復帰するエイチ・アイ・エスの沢田秀雄会長(左)(28日午後、東京都新宿区)

社長に復帰するエイチ・アイ・エスの沢田秀雄会長(左)(28日午後、東京都新宿区)

かつて、ソフトバンクグループの孫正義社長、パソナグループの南部靖之代表と並んで「ベンチャー三銃士」と称された沢田氏。自らの半生を語った日経産業新聞の連載「仕事人秘録 旅から生まれた挑戦者」で、同氏のビジネスの軌跡を振り返る。

沢田氏の「起業家」としての原点は、西独留学時代にさかのぼる。ドイツを拠点に世界各地を旅行。その際、日本製の時計やカメラを携行し、いざという時に換金できるように備えたという。それらが予想外の高値で売れたうえ、旅先で値切って買った民芸品が、ドイツののみの市で数倍の高値で売れた。「ドイツでビジネスの醍醐味に目覚めました」と振り返る。 =旅から生まれた挑戦者(3)世界歩き商売に目覚め

帰国後の1976年、留学中の副業で稼いだ約1000万円を元手にして、毛皮製品の輸入販売などを手掛ける「秀(ひで)インターナショナルサービス」を起業。「内外価格差」に注目した着眼点はよかったものの、ワシントン条約で輸入は難しくなり、仕方なく始めた航空券の販売が「HIS」へと大きく育つ。 =旅から生まれた挑戦者(6)「内外価格差」に商機

96年には格安航空会社(LCC)の先駆けとなったスカイマークエアラインズ(現スカイマーク)を設立。人材集めや運輸省(現国土交通省)の事業認可などに苦しみ、一時は「自分の考えが甘すぎた。もうやめよう」と撤退も考えたが、「『寡占状態の航空業界に新風を吹かせたい』というチャレンジ精神は消えませんでした」という。 =旅から生まれた挑戦者(10)初飛行へ綱渡りの連続

10年には開業以来赤字続きだったハウステンボスの社長に就任した。閉園の瀬戸際にあるテーマパークの支援とあって、社内からも、ベンチャー企業の仲間からも「わざわざ火中の栗を拾わなくてもいい」に猛反対にあったが、「誰もが経営再建は不可能だと思いました。私はだからこそ挑戦したいという気持ちになっていました。持ち前のチャレンジ精神に火がついたのです」という。 =旅から生まれた挑戦者(13)火中の栗 あえて拾う

経営再建にあたっては、イルミネーションのイベントや花をテーマにしたイベントを相次ぎ投入。入場者数は順調に増え続け、2011年9月期には開業以来、初めてとなる営業黒字を達成した。さらに「健康と美の王国」など新施設も導入し、入場者は300万人の大台を超えた。 =旅から生まれた挑戦者(17)「王国」でイベント競う

沢田氏は「これまでに起業した旅行会社や航空会社では、規制や不合理な商慣習に挑戦してきました。ハウステンボスの挑戦は、世の中を変える試みです」とする。「ひとつの旅が終われば、新しい旅が始まるように、挑戦に終わりはありません」。沢田氏は連載をこう締めくくっている。 =旅から生まれた挑戦者(最終回)絶えず変化し世界へ

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