日産ゴーン氏 三菱自動車トップを社長にとどめたわけ

日産自動車社長 カルロス・ゴーン氏
日産自動車社長 カルロス・ゴーン氏

日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏の経営手腕が再び注目を集めている。1999年に経営危機に陥った日産に仏ルノーから派遣され、再建を成し遂げたゴーン氏。今度は資本業務提携先の三菱自動車の再生に挑む。このほど日産本社で開かれた次世代リーダーの育成講座に登壇したゴーン氏は、外部からの「アウトサイダー」として取り組んだ日産再建の軌跡を振り返りつつ、「アウトサイダーが必要になるのは、内部に人材がいない場合に限った話だ」などと、三菱自動車との提携についても語った。

「私はアウトサイダーとして日産再建にあたったが、ハイリスク・ハイリターンだった。成功率は50%しかなかった。プラス面もあるが、マイナス面もあるからだ」。10月27日、横浜市の日産本社で、ゴーン氏は集まった社内外の企業幹部候補生30人にこう語りかけた。

プラス面とは、「当該企業の過去のしがらみや慣習に縛られず、新鮮な視点で発想し、自由な意思決定ができることだ」という。一方、マイナス面とは「その企業の文化や歴史、組織、人材、技術などについて知識がほとんどないこと」。まして99年にルノーから派遣された際のゴーン氏は「全く日本語を理解できなかった。発言できないリーダーほどつらいものはない。通訳を介して話してもこちらの意志や情熱はなかなか伝わらない」と振り返った。

日産が奇跡的な再建を成し遂げられたのは「ゴーン氏がアウトサイダーだったからこそ、大幅な人員削減を伴う大改革を断行できた」という見方が一般的だ。しかし、ゴーン氏は「アウトサイダーが必要になるのは、内部に人材がいない場合に限った話だ」と強調する。10月にゴーン氏は自らが三菱自動車の会長に就任する一方、同社会長兼社長の益子修氏を社長にとどめる人事を決めた。益子氏には一連の燃費データ不正問題の責任を問う声が強かったが、ゴーン氏は益子氏を「内部の人材」とみたわけだ。

ゴーン氏は「三菱自動車との提携は必要不可欠なものだ。自動車会社は規模が必要だからだ」と強調した。

日産の経営陣からは「三菱自動車の業績を劇的に改善した益子氏の手腕は優れている」(志賀俊之副会長)と評価がもともと高かった。益子氏の出身母体である三菱商事とのパイプ役としての役割を引き続き期待する声もあった。

不祥事が続く三菱自動車との資本業務提携については、日産社内に懸念の声もあった。しかし、ゴーン氏は「日産とルノー、そして三菱自動車とのこのアライアンス(提携)は必要不可欠なものだ。自動車会社は規模が必要だからだ。自動運転やEV(電気自動車)など日進月歩で技術革新が進むなか、巨額な投資になる。我々は実に年間1兆4000億円も投資している。小さな企業でそれが可能だろうか」と語った。そして「世界トップのトヨタ自動車やフォルクスワーゲン(VW)は次々買収により拡大している。トヨタもダイハツ工業を完全子会社化した。しかし我々は提携戦略を重視している。その方が規模のメリットを享受しながら、機動性にも優れたグループとなるからだ」と強調した。

次世代リーダーの育成講座は日産傘下の公益財団法人、日産財団(横浜市)が主催した。早稲田大学ビジネススクールなどと組み、年2回開催しているもので、ゴーン氏が受講者と直接対話することから「ゴーンスクール」とも呼ばれる。

(代慶達也)

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