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お寺で婚活、「寺コン」が縁結び 人柄わかり安心感 座禅や写経 一緒に仏教体験

2016/10/31 日本経済新聞 夕刊

開会式で住職の話に熱心に耳を傾ける吉縁会の参加者(東京・谷中の天龍院)
 婚活といえば、結婚相手を探すために独身の男女がパーティー会場などで談笑するのが一般的だが、最近人気なのがお寺で開く婚活、通称「寺コン」だ。座禅や写経などの仏教体験を通じ、じっくりと相手の人柄を吟味できる点が人気を呼んでいる。物欲より精神的なものを求める昨今の風潮を映し出しているようだ。

 10月初旬、東京・谷中の古刹、天龍院に30~40代の男女が集まった。臨済宗妙心寺派の僧侶が運営する婚活組織「吉縁会」(浜松市)の東京支部が開いた寺コンだ。定員の60人が参加し、本堂は熱気に包まれた。

 般若心経を読経後、仏教体験へ。この日は水引作りだった。2つの集団に分かれ、男女が向かい合って座り、ひもを結び合う。結び方を教え合う光景も見られ場が和む。随時席替えをして、共同作業の顔ぶれが変わる。次のトーク時間では別の集団の異性と1人5分ずつ話をする。プロフィル票を交換し、趣味の話などで盛り上がる男女もいた。

 その後、男女別に分かれ、男性部屋に女性の封筒、女性部屋には男性の封筒が置かれ、気に入った人の封筒に自分のメールアドレスを書いた紙を入れる。何人に入れてもOK。自分の封筒に入っていなくても、たくさん紙を入れれば相手からの返信が期待できる。最後に自分の封筒を受け取って終了。開始から4時間がたっていた。

 埼玉県から来た男性(41)は「以前参加した街コンは両思いじゃないとカップルになれなかったが、ここは片思いでも連絡が取れるのがいい。水引作りも新鮮で楽しかった」と話す。

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 仏教に関心のある参加者も多い。別の寺の座禅会に参加したことがある東京都の女性(37)もその一人。「私と同じように仏教に興味のある人がいいと思い参加した。水引作りでは優しく教えてくれる人もいれば、自分のことしか考えない人もいて、人柄がわかり面白かった」と振り返る。

 都内在住の女性(45)は「出身地の奈良では小さい時からお寺は身近な存在だった。寺コンに参加する男性はまじめな人が多そうと思い参加した」と話す。

 吉縁会は龍雲寺(浜松市)の副住職、木宮行志さん(38)が同じ宗派の僧侶に呼びかけ、2010年に発足した。きっかけは結婚相談所に通う友人から費用の高さを聞き、驚いたことだった。「寺でやれば安くでき安心感も与えられる。昔は寺が仲人もした。その役割を果たそうと思った」

 参加者は増加の一途だ。当初、浜松周辺だけだったが、昨春から東京、今年2月から名古屋・岐阜、11月には大分でも開く。現在の会員は約7400人。参加費は3000円。毎回、定員を上回る応募があり、平均倍率は約4倍。参加者は抽選で決める。これまで全国で35回開き、成婚は100組を超える。

 吉縁会以外でも寺コンは広がっている。婚活事業を展開するスタイルリンク(東京・渋谷)は4年前から月1回、渋谷区の禅寺、香林院で開いている。ふだん体験できない婚活はないかと考え、企画した。担当者によると寺コンはほかの婚活より人気が高く、「毎回、キャンセル待ち」という。

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 10月の会をのぞいてみた。この日は男女12人ずつが参加。住職の説法を聞いた後、座禅や写経を体験した。座禅では瞑想(めいそう)にふけり、写経では一心に筆を動かす。静寂があたりを支配し、都心にいるのを忘れるほど。非日常体験で気持ちが高ぶったのか、その後のフリートークは大いに盛り上がった。最後は気に入った者同士でアドレスを交換し、お開きに。

 写経に興味があって参加した川崎市の男性(42)は「ほかの婚活は冷やかしの女性もいるが、寺コンはまじめな女性が多い気がする。縁があれば真剣に考えたい」と話す。

 寺コンは寺側にもメリットがある。寺に縁の薄い30~40代に目を向けてもらうきっかけになるからだ。木宮さんは「あくまでも社会貢献が目的だが、結果として寺に親しみを持ってもらえればうれしい」と語る。

 恋愛事情に詳しい評論家の牛窪恵さんは「今、和のブームがあり、精神的な充足を求める傾向が強い。婚活でも外見や肩書より内面を知りたい欲求が高まっている。その点、お寺は日本人の心のよりどころで落ち着ける場所。精神性の高い所に行けば、相手の内面をより深くわかるという期待感が湧くのだろう」と指摘する。

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■非日常空間での婚活が人気

 結婚を真剣に考える婚活者は年々増えている。全国約1200カ所の結婚相談所とネットワークを結ぶ日本結婚相談所連盟(東京・新宿)によれば、会員数は毎月2000人ずつ増えている。現在の会員数は約5万7000人。うち約6割が女性だ。

 年齢別では30代後半~40代前半のアラフォー世代が目立つ。小野雅弘事務局長は「ちょうど人生の折り返し地点にさしかかり、後半生を一緒に過ごすパートナーがほしいと考えるようになるのだろう」と話す。

 小野さんによると婚活の傾向も変わりつつある。最近、人気を集めるのが水族館やお化け屋敷などでの婚活だ。いわゆる非日常的な空間で開いたほうが盛り上がり、積極的に相手に話しかけやすくなるという。ふだん縁のない寺で開く寺コンも、まさにこの傾向にあてはまりそうだ。

(高橋敬治)

[日本経済新聞夕刊2016年10月31日付]

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