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筑駒・東大の「神童」起業家 アップルに迫れるか 英単語アプリ「mikan」 宇佐美峻氏

2016/10/30

mikanのCEO、宇佐美峻氏

 日本有数の進学校、筑波大学付属駒場中学・高校(筑駒)から東京大学に進んだ宇佐美峻氏(23)が起業したmikan(ミカン、東京・渋谷)。同社が手がけるスマートフォン(スマホ)向け英単語学習アプリ「mikan」は高校生中心に支持を集め、ダウンロードは100万件に迫る勢いだ。東大を飛び出した宇佐美氏。夢の米アップルに迫る会社をつくれるのか。

 「東大ですか、いや戻る気はないですね」。東京・渋谷の少し古びたマンションの一室がミカンのオフィスだ。宇佐美氏は東大工学部の機械情報工学科に進んだが、現在は休学中。最先端のロボット工学を学ぶ人気学科だが、「今ひとつ打ち込めなかった。このまま大学院とか、就職するのも」。そんなとき、インターネットで個人に仕事を発注するクラウドソーシング大手、クラウドワークスでのインターンシップ(就業体験)で、IT(情報技術)のおもしろさに目覚めた。米スタンフォード大学に留学しようとプログラムの勉強を始めた。

 そこで試しにつくったのが英単語アプリ。速く単語を習得するための独自の仕掛けを作った。利用者はスマホの画面上で、覚えた単語を右に指で払ってフリック、間違えた単語は左にフリックして流す。覚えていない単語は何度も登場してくる仕組みだ。

ベンチャーキャピタリストが起業の背中を押す

 口コミで評判を呼び、1人のベンチャーキャピタリストの目に留まった。独立系ベンチャーキャピタル(VC)、スカイランドベンチャーズ(東京・渋谷)最高経営責任者(CEO)の木下慶彦氏だ。生鮮食材の電子商取引(EC)事業を展開する八面六臂(はちめんろっぴ、東京・中央)や、スマホ向けゲームアプリのトランスリミット(東京・渋谷)など有力ベンチャー企業を見いだした30歳の若手投資家として知られている。

共同創業者の高岡和正氏

 「このアプリはいいね」と木下氏らが起業を後押しした。父親に相談すると、「もうかりそうもないな」の一言しか出てこない。「せっかく東大に入ったのに、起業より卒業して就職しろ」と諭す親が多いだろう。しかし、実は父親も20歳代で起業している。宇佐美氏は親から独立しようと決意し、起業に踏み切った。

■東大の仲間ら4人で起業

 2014年6月、宇佐美氏は東大の仲間ら4人で起業した。CEOには宇佐美氏が就いた。木下氏と手を組む独立系VC、イーストベンチャーズ(東京・港)の松山大河氏らが投資。木下氏は「宇佐美さんはクラウドワークスの吉田浩一郎社長の背中を追いかけてきた。成長する企業や人を見た人はとても可能性がある」という。起業には大きなリスクがつきものだが、宇佐美氏は「父も起業家だし、それほどリスクは感じなかった」と話す。

 宇佐美氏と一緒に創業したのは東大で同じ学科の高岡和正氏や建築学科の清水宏師氏らだ。フィリピンやカンボジアなど海外旅行で知り合った他大学の学生とも合流、会社としての形が徐々に整っていった。

■普及めざし「全国高校英単語選手権」

 英単語アプリはアップルやグーグルからも推奨され、スマホ上で急速に利用が拡大した。ダウンロードは現在は90万件で、その半数は高校生だ。さらなる普及をめざして「全国高校英単語選手権」を今年から開催している。学校対抗戦で第1回は5~7月は4万人、2回目の今秋は10万人の高校生が参加。11月1日からの決勝戦の優勝校には賞金100万円が贈られる。「英単語アプリのミカン」のブランドは高校生中心に浸透し始めている。

共同創業者の清水宏師氏

  しかし、問題は収益モデルの確立だ。アプリは無料。広告モデルでもなく、出版社と連携した一部コンテンツに課金している。「売り上げはまだまだです。現在の英単語アプリは主に生徒が対象ですから、マネタイズ化がなかなか難しい」(宇佐美氏)という。

 新規事業として英語のスピーキングに対応したアプリの開発などを構想中だ。グローバル化が進むなか、「ビジネスパーソンがスピーキングを鍛えたいというニーズは強い。いいアプリを開発する自信はある」という。顧客対象をビジネスパーソンに拡大すれば、マネタイズ化の道は広がる。

■ミカンはリンゴを超えられるか

 起業して2年余り。「今は想定した成果の1%ぐらい。甘くないですね」と宇佐美氏は話す。この間に仲間の2人はともに東大卒業を決めた。このままミカンで続けるか、就職するか迷うメンバーもいるが、宇佐美氏は「僕はとにかく今の仕事に全力を注ぐ。打ち込むものができたから、やりがいがある」と東大という学歴に頓着しない様子だ。

 宇佐美氏の母校、筑駒は「東大に一番近い」といわれる進学校。「神童」たちの集団だ。16年実績では東大合格者は102人。絶対数では開成高校に次いで2位だが、1学年の定員は開成400人に対して筑駒はわずか160人。なんと3人に2人以上が東大に合格したわけだ。宇佐美氏は「とにかく自由な学校。校則がない。でも僕は打ち込むものがなくて中途半端な学生生活だった」と振り返る。

 父親は失敗や挫折を繰り返しながら、上場を果たしている。宇佐美氏は「遠い道のりですが、目標はITの世界トップ企業」という。米マイクロソフトを創業したビル・ゲイツ、米フェイスブック創業者のザッカーバーグ両氏ともハーバード大学中退だ。米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏も大学を飛び出した。ミカンという社名にはアップルに迫り、超えたいという俊氏の野望も見え隠れする。筑駒の出身者は、研究者など学者や官僚になる人が多く、起業家になるのは珍しい。神童の野望は実現するのだろうか。

(代慶達也)

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