AAA、ハロプロ…ファンクラブ限定特典で人気が加速
ネット社会が成熟し、あらゆる情報が簡単に手に入る時代。その便利さが評価される一方で、今、エンタテインメント界では、ネット上にないコンテンツの価値が相対的に上がっている。それを積極的に送り出しているのがファンクラブだ。
もちろんファンクラブ自体は昔からあった。しかし今は楽曲データや写真、ムービーなど、公式・非公式のコンテンツがネットで流通し、誰でも簡単に鑑賞することができる。そこで、ファンは「さらに人と違う新しい体験がしたい」と、ネットでは手に入らないレアなコンテンツを求める。そんな中でアーティスト本人を見られるコンサート、限定数しか存在しないグッズ、限られた人たちしか参加できないイベントなど、選ばれた人だけが得られるレアな機会や商品を与えてくれる機能を持つのが、現代のファンクラブだ。
特典が進化 イベント充実
最近のファンクラブに共通する特徴はどこにあるだろうか。入会特典は主に3つ。(1)コンサートのチケット(ファンクラブ枠)の先行購入申し込み権、(2)限定グッズの購入権、(3)会員だけが参加できるイベントの申し込み権だ。
会費については入会金が1000円程度、年会費が5000円程度というのが相場。決して安い金額ではないが特典が得られるのに加え、ファンクラブサイトで会員ID、パスワードを入れることで限定コンテンツが見られたり、独自編集の冊子が送られてきたりする。月当たりで換算すると500円程度であり、スマホの月額制コンテンツサービスとあまり変わらない料金設定ともいえるだろう。
(1)のチケット先行販売は今、どの人気者のファンクラブでも共通して提供されているサービスであり、会員を獲得する上で、欠かすことのできない特典といえるだろう。そして(2)の限定グッズについても、CDジャケットの「通常盤」や「豪華盤」だけでなく、ファンクラブでしか買えない「FC(ファンクラブ)盤」を出す例が、ここ数年増えている。
9月に11周年を迎えた男女7人組アーティストのAAA。11月には初の東京ドーム公演も決まり、ファンクラブの「AAA Party」から発売されるファンクラブ枠チケットは、募集開始と同時に予想を上回る応募を記録した。10代が中心の若いファンに向け、6月に発売したニューシングル「NEW」のファンクラブ限定盤にはオリジナルのシャワーサンダルも付いていて完売した。
AAAはチケットや商品の単体企画のほか、ライブのチケットと商品が連動した企画も展開し、成功している。メンバーのNissy(西島隆弘)は9~10月に初の単独ライブを実施。そのチケット(限定数抽選)を最速で買う権利を得たのは、3月に発売したファーストアルバム「HOCUS POCUS」Nissy盤の購入者だ。
一方、限定イベントに積極的なのはハロー!プロジェクトの公式ファンクラブ。所属する7ユニットのメンバー約50人のそれぞれと、団体ツアーを組んで旅行に行くなどの限定イベントを毎週のように実施している。
企画を連携 楽しく宝探し
ファンは情報提供を受けるだけでなく、リアルなイベントやグッズを手にすることができる「アナログのサービス」(ハロプロの担当者)を求めている。こうとらえて工夫を凝らす。
レアな経験や商品を単発的に提供するだけでなく、いかに企画を連携させて、「宝探し」のような楽しさを提供できるか。ファンクラブは今後、点から線、面へとつながる企画を武器に、会員獲得合戦を繰り広げていきそうだ。
(「日経エンタテインメント!」10月号の記事を抜粋・再構成。文・白倉資大=編集部、安保有希子)
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