テレビ史上最も官能的な場面を演じた英国イケメン俳優
『アウトランダー』サム・ヒューアンが語るシーズン2
人気作家ダイアナ・ガバルドンによる、累計2500万部を超える世界的ベストセラー小説「アウトランダー」シリーズ。従軍看護師クレアが、第二次世界大戦直後の1945年に夫とスコットランドを旅行中に、200年前にタイムスリップ。イングランド軍と対立するスコットランドの戦士ジェイミーと出会い恋に落ちるという設定の本作は、ロマンス小説の要素が色濃いが、SFファンタジー、歴史、アドベンチャーなどさまざまなジャンルの醍醐味が盛り込まれている。
長らく映画化が望まれながらも壮大な世界観ゆえに困難とされてきたが、アメリカのケーブル局Starzにてテレビシリーズ化が実現。2014年8月より放送開始となった。放送直後から熱狂的な原作ファンも納得させる高いクオリティーに、ロマンチックで過激な性描写なども大いに話題を呼び、現在に至るまで世界各国で新規ファンを獲得し続けている。
何よりも魅力的なのは、モデル出身のカトリーナ・バルフが演じるクレアと、スコットランド出身の注目株サム・ヒューアンが演じるジェイミーの主役コンビ。原作のイメージを裏切ることなく、生き生きとした運命の恋人同士を演じて世界各国で人気を博している。2人のラブシーンは「テレビ史上最も官能的な場面」といわれるほどファンを魅了した。特にヒューアンの人気は絶大で、『アウトランダー』旋風を巻き起こす原動力となっている。
待望のシーズン2は、4月9日より全米で放送開始。シーズン1のラストでフランスに旅立ったクレアとジェイミーたちは、パリにいるチャールズ・スチュアート王子率いる反乱軍に潜入する。近い将来に起こる、イングランド軍にスコットランドの反乱軍ジャコバイトが殲滅(せんめつ)させられた、歴史上有名なカロデンの戦いを未然に防ぐためだ。だが、歴史を変えようとする2人の試みは、予想外の展開をたどることに……。
スコットランドのハイランド地方から一転して、シーズン2の前半ではパリでの華やかで都会的な生活が描かれる。妊娠しているクレアとジェイミーの、新天地での夫婦の関係性の変化や、新キャラクターの登場にも注目したい。
自分自身の要素も役に投影
18世紀に生きるスコットランドの戦士、ジェイミー・フレイザーを演じるサム・ヒューアンは、スコットランド出身の1980年生まれ。紳士的な物腰が印象的な、優しげで親しみやすい雰囲気の持ち主。シーズン1を振り返りながら、シーズン2の見どころについて話を聞いた。
――世界中で人気のある原作の、多くの女性をとりこにしているキャラクターを演じることにプレッシャーはありましたか。
最初はすごく感じましたね。よく知られている原作ありきなので、みんながよしとしてくれるようなジェイミー像を演じられるのかと。ただ、作品が成功するか否かといったことは意識しないようにしていたし、してはいけなかったとも思う。それはクレア役のカトリーナ(・バルフ)も同じですね。シーズン1の最終話の撮影にさしかかってくるあたりで、これってもうすぐオンエアされるんだよね、演じ方や方向性が間違っていたらどうしよう……という不安や心配は自分たちには確かにありました。でも、最終的には自分自身の要素も役に投影させつつ、自分が納得がいく、自分ならではのジェイミー像を作り上げることができたと思っています。
――具体的にはどういったアプローチを。
シーズン1では、まずは原作の細部の描写からジェイミーという人物をイメージしていきました。それ以外にはスコットランドの歴史や文化を意識しました。例えばジェイミーはクラン(氏族)がひとかたまりになって生活している地域に住んでいる人物で、そうしたクラン文化も重要だし、ゲール語が第一言語であること、ハイランダー地域の独特の風習のもとで育っているといった要素が、彼がどんな人物かを特色づけているのだと。そこからジェイミーの非常にポジティブな性格は、こうした育ちや文化的背景が作りだしているんじゃないかと、僕自身は解釈しました。
実はジェイミーを演じることに関しては、オーディションの時からなんとなくこう演じれば大丈夫だろうといった、何かしっくりくるものがあったんですね。ただ、実際に撮影に臨む際には、こういう状況で、こういう行動を取る人間だという決めつけはしないようにしています。ある程度の型はあるけれど、キャラクターを現場でシチュエーションに反射させようとするアプローチですね。
例えば最近撮影したシーンで、ジェイミーが誰かをぶつシーンでは、自分だったらそこで平手打ちを食らわせるようなことは絶対にしないだろうと思いながら、2度3度とテイクを繰り返していくうちに、なるほどジェイミーってこういう男だから、こういう時にはこうするんだなという合点がいった。我ながら、びっくりする経験でした。
クレアとの間に亀裂も
――シーズン1でジェイミーは大きく成長を遂げました。シーズン2の舞台は新天地パリから始まりますが、役の解釈はどう変わりましたか。
シーズン2は、シーズン1とは大分違う様相を呈しています。ジェイミーはシーズン1が始まった頃は、フランスから帰ってきたばかりで何の責任も持たず、ほうぼうでいろんな敵を作っては、それをちゃんと始末していないといった過去を抱えた男でした。ですが、クレアという女性が自分の人生に舞い込んできて、夫となり、クランの領主となり、いろんな人の面倒を見なければいけない立場になったことで成長を遂げたと思います。シーズン1の最後で肉体的にも精神的にもものすごい試練が待ち受けていましたよね。
シーズン2はジェイミーにとっては、その治癒、回復を描くシーズンだと思う。いまだトラウマを引きずっているし、手も怪我をしたままだし、はつらつとしたシーズン1の最初のジェイミーはもういない。トラウマを忘れようとして向き合おうとしないことが、夫婦の間に亀裂を生むことにもなります。もちろん、それ以外にも夫婦にはまた別の試練が待ち受けているのですが。いずれにせよ、クレアとジェイミーにとっては、非常にタフなシーズンになっていると思います。
――ゲール語に続きフランス語を話すジェイミーも素敵です。
ありがとう! あまりうまくないんだけどね(笑)。でも、新しいことに挑戦するのは、いつも楽しいことです。
――カトリーナさんとは現場でも仲が良いそうですね。
そうですね、1年近くかけて撮影を行っているのですが、現場はかなり過酷で、あまり空き時間はないのですが、よく彼女が持参する健康食の余りをいただいたりしていますよ(笑)。それはともかくシーズン2では、カトリーナとの関係性は、より強固なものになっています。しばらくは別撮りが続いており、共演者としても連絡は絶っていたのですが、また一緒に芝居をするようになって2人のリズムが出てきて、間合いが以前よりもさらによくなってきていて非常によかったと思っています。
(ライター 今祥枝)
[日経エンタテインメント! 海外ドラマSpecial 2016[夏]号の記事を再構成]
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